糖尿病の人は睡眠をチェック! shutterstock.com

写真拡大

 国際糖尿病連合(IDF)が発表した世界の糖尿病有病数(2014年現在)は、なんと3億8670万人に上っている。世界ランキング1位は中国で9629万人、2位がインドの6685万人、3位はアメリカの2578万人と続く。日本は10位で721万人。前年比720万人に比べれば微増している。世界に比べれば低いが、それでも驚異的な数字だ。隠れ有病者を加えれば倍増するだろう。

 糖尿病の多くは、食べ過ぎや運動不足、夜更かしなど生活習慣の乱れが原因で発症する「2型糖尿病」だ。高カロリー、高脂肪の食べ物を好み、あげくに運動もしない。結果はお腹がつき出て肥満体。悪循環の生活習慣に忍び寄る血液中のブドウ糖(血糖)の増加、やがてインスリン分泌が低下する。これが糖尿病と診断される現実だ。

糖尿病・睡眠障害・肥満の相関関係を科学的に実証

 糖尿病患者は美食家が多い、だから太った人に多い......。こうしたさまざまな俗説が流ているが、今春、大阪市立大医学研究科・代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らの研究グループが、糖尿病と睡眠、肥満の相関性を科学的に証明し、話題を呼んだ。従来、睡眠時間の短さと糖尿病との関連性は疫学調査などの結果で認められていたが、稲葉教授らは脳波計を用いて初めて科学的に解明した。

 人は眠りにつくと、睡眠直後の90〜120分間は脳を休ませる深い眠り「徐波(じょは)睡眠」に入る。続いて浅い眠り「レム睡眠」が出現する。研究の結果、血糖値が高い2型糖尿病の人ほど徐波睡眠が減少し、早い段階でレム睡眠が現れるため睡眠時間は短くなり、睡眠の質が低下していた。つまり、2型糖尿病では、血糖値が上がると睡眠の質も劣化し、そのことが糖尿病じたいを悪化させるというのだ。

 そればかりか、睡眠の質の低下で交感神経(脳を活性化、覚醒させる)が優位になり、血糖値だけではなく、夜間から明け方の血圧をも上昇させることもわかった。

 稲葉教授らの研究で、2型糖尿病患者に睡眠改善薬を投与すると睡眠指標(入眠、深い眠り、眠りの持続、快い目覚めなど)の改善が見られ、早朝高血圧や高血糖が低下した症例も確認されたという。

睡眠ホルモンが食欲までも刺激してしまう肥満への罠

 肥満に悩む50代サラリーマンAさんの場合、好物はとんかつなど肉食系で、遅い帰宅でもビール片手にたっぷり夜食を摂る。ベッドに入るのは日をまたいでからのことが多く、なかなか寝付けないのが普通だという。

 こんな状態になると、覚醒コントロールに重要な働きをしている脳内の視床下部ニューロンから産出される神経ペプチド「オレキシン」(睡眠ホルモン)が覚醒中枢に過剰に働き、同時に食欲中枢も刺激し食欲を亢進する。肥満を助長させるというのだ。

 ニワトリが先か卵が先かの話ではないが、第一の原因は乱れた生活習慣にある。教授らの研究でもそれは明らかだ。最近はオレキシン阻害薬などが登場し、不眠治療が前進しているようだ。しかし、薬に頼る前に快眠するための生活習慣の見直しが先決。夜型から朝型生活にスイッチの切り替え、質の高い睡眠を確保したい。
(文=編集部)