片頭痛のメカニズムは、まだ解明され尽くされてはいないshutterstock.com

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 最近、長時間にわたりスマートフォンを使用したり、夜間に使用したことが原因だと考えられる、頭痛症状を訴える患者さんが増えています。まさに「スマホ中毒」ともいえるほど片時も手放さず、生活リズムに異常をきたしている方は、注意が必要です。

 臨床の場で、そのような頭痛の患者さんの話を聞くと、夜間にメールなどの受信し、着信音が枕元でピコピコと頻繁に鳴るため、充分な睡眠が取れていない方もいます。さらに良くないのは、暗い寝室の中で、強く光る画面を見ることです。

スマホ頭痛と光による生物時計のズレ

 ほ乳類をはじめとする生物は、「概日リズム」というペースメーカー(生物時計)を体内に持っています。生物時計の障害は、さまざまな精神的、身体的な異常の原因になります。深夜に起きて活動することでも生物時計のズレが生じます。よく経験するのは、飛行機を乗った時の時差ボケでしょう。

 生物時計にズレは、強い光刺激によっても生じます。スマートフォンの強い光を夜間に浴びることで生物時計のズレを起こし、身体異常を来すと考えられています。

 さらに、光刺激や光過敏は、片頭痛の重要な誘発因子でもあります。そのため、スマートフォンの画面から発せられる波長が短く強いエネルギーを持った「ブルーライト」と呼ばれる光は、片頭痛を誘発する原因になりえるのです。

 本誌の2015年5月19日に掲載した「新たな現代病『スマホ巻き肩』かも!?」の記事からも、スマホ操作をするときに陥りがちな姿勢を長時間続けることで、頭痛をきらす可能性があります。人間の頭部は体重の約10%、50kgの体重ならば5kgもあります。この重さを支えている肩の筋肉の長時間にわたる収縮によって筋緊張型頭痛を起こし、そこから片頭痛へと発展するのです。

スマホ頭痛の対処法

 コンピュータのディスプレイを長時間にわたり見続ける作業することでも、以下の3つの症状が生じる可能性があります。

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⊆鵝腰、肩のこり、頭痛など身体症状
食欲減退、不安感、抑うつ症状など精神的症状

 これらの症状は、スマートフォンを長時間にわたり、不適応な環境で使用することで起こる症状に非常に似ています。厚生労働省は、この症状をVDT(Visual Display Terminals)症候群と称して、健康管理のガイドラインを作っています。このガイドラインを実践することで、スマホ頭痛の症状はある程度改善すると思います。思い当たる方は、以下の対処法を試してみてください。

.好泪杙藩兒の照明と採光
 スマートフォン使用時の室内の照明及び採光については、明暗の対照が著しくなく、まぶしさを生じさせない方法をとる。すなわち、スマートフォンに置き換えるとディスプレイ画面と周辺の明るさの差が大きいと眼の負担になると考えられ、太陽光の下での使用や、夜間の暗い所でのスマートフォンの使用は、極力避けることがいでしょう。

▲好泪曄Ε妊スプレイ環境の調整
 スマートフォンのディスプレイは、長時間見続けると、点滅する画面や、ディスプレイに表示される文字や図形が見にくくなったり、光の反射が起こることが光過敏となって、頭痛を引き起こすことがあります。ブルーライト除去フィルムの装着によって、効果がある人もいるでしょう。

スマホ使用時の姿勢に注意
 極端な前傾姿勢やねじれ姿勢を長時間継続しないよう注意が必要です。また前述のように、なるべく頭を上げて、頸部に負担のかからない姿勢が重要です。さらに、ゲームなどの長時間にわたる画面の注視は、自然と巻き肩姿勢になるので、避けるべきです。

 そもそも人類は夜暗くなったら「寝る」、明るくなったら「起きて活動する」という概日リズムを持って進化してきました。しかし、現在の人類の活動は、昼夜の境目がなくなりつつあります。このような生活リズムの変化は、ここ100年のことです。そこに我々の生物学的な進化は追いついていません。

 ですから、みなさんは自分自身で、概日リスム(生活スタイル)をコントロールして生活する必要があるのです。またすでに乱れて、困っている人は、専門医に相談するのもよいでしょう。

西郷和真(さいごう・かずまさ)
1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学附属病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授、近畿大学医学部附属病院神経内科。
東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、2014年より現職。
日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。