9月に行なわれるW杯アジア2次予選2試合(9月3日vsカンボジア/埼玉、9月8日vsアフガニスタン/イラン)に臨む、日本代表メンバーが発表された。

 最大のサプライズは、GK川島永嗣の落選だろう。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は川島について、「まだ自分のクラブを探すことができていない。できるだけ早く見つけてほしい」と語り、「国内でいいプレイを見せている」選手を優先して選んだことを明かした。

 海外組であろうと、従来の主力メンバーであろうと、所属クラブで出場機会を得られていないものは、選ばない。そんな方針がはっきりと見えた選考である。最近の日本代表には、海外組を無条件に優先するかのような、やや硬直化した選考が見られただけに、ようやく当たり前の"競争"が持ち込まれたことは歓迎すべきことだ。

 しかし、その一方で、今回のメンバー発表の場でハリルホジッチ監督の話を聞いていて、気になる点も多かった。

 まずひとつは、このところの4試合でアジア勢を相手に勝てていないことを受けて、早くも予防線を張るような様子がうかがえたことだ。

 ハリルホジッチ監督は、カンボジア戦では「シンガポール戦(0−0)と同じことを繰り返したくない」とし、「今回は戦術面のトレーニングしかしない。いろんなことを修正したい」と言いながら、こう語る。

「(試合までの実質)2回のトレーニングではどこまでできるかわからない」

 また、最下位に終わった東アジアカップについては、こんな具合だ。

「(Jリーグの試合から大会までに)2、3日休みがあれば、1試合目(1−2北朝鮮)は勝てた。相手は強くなかった。もし1試合目に勝っていれば、1位で終わっていた」

 これでは、まるで敗因は自分とは関係のないところにあり、すべての問題はコンディション、ひいてはJリーグの日程にあるかのようだ。もしカンボジア戦で再び苦戦するようなことがあれば、「海外組が合流して2日しかなかった。コンディションが悪かった」とでも言うのだろうか。

 とはいえ、最近の試合で勝てないことの言い訳など、些細なことでしかない。それ以上に気になったのは、この指揮官はいったいどんなサッカーを目指そうとしているのか、ということだ。

 ハリルホジッチ監督は、何度も「フィジカル的なクオリティが必要だ」と語った。確かに、日本人選手はもっと球際の勝負で厳しく戦えなければいけないし、そのためにはフィジカル的にも強くならなければならない。だが、それらは日本代表が目指すサッカーの中心にあるべきものではないはずだ。

 例えば、ハリルホジッチ監督が例に挙げた東アジアカップでの北朝鮮戦。試合終盤に長身FWのヘディングから2失点したことを引き合いに出し、「FKのときに大きな選手を前に置くと日本が弱いことを、他のアジア勢は知っている」と言い、「それに対抗するためには大きな選手が必要だ」と語った。

 しかし、あの試合に関して言えば、つなぎでミスを連発し、主導権を握れなかったことに根本的な敗因がある。あれだけ簡単にボールを失い、相手に押し込まれればDFも疲弊してくるし、失い方が悪ければ守備で後手に回り、不要なファールも多くなる。本来日本が目指すサッカーのベースとなるべき武器、すなわちボールポゼッションがうまくいかず、簡単にボールを失い続けたことで、日本の弱点ばかりが目立つ結果になったと考えるべきだ。

 もちろん、サイズのあるセンターバックやFWがいるに越したことはない。そうした人材を探す、あるいは育てる努力を止めてはいけない。だとしても、それありきで考えるのは、現状の日本では効率が悪いし、現実的ではない。

 思えば、2006年ドイツW杯で惨敗を喫し、当時の日本代表監督だったジーコは「フィジカルが足りなかった」と語った。4年もかかって得た結論がそれか、とガッカリさせられたものだが、そこから日本代表は「ないものねだりをするのではなく、いかに日本人選手の特性を生かして戦うか」を探った結果、ボールポゼッション重視へと傾いたのではなかったのか。

 それが少しずつ結果となって表れてきていたのに、ブラジルW杯で味わった一度の惨敗をきっかけに、日本代表はこれまで歩んできた道を逆行しようとしている。

 また、ハリルホジッチ監督は、自身が就任してからの7試合で「PKが一度もないのはノーマルではない」とも語った。

 なぜPKがないのか。ハリルホジッチ監督によれば、「ファールを誘うようなプレイがないからだ」。指揮官は自身FWだった現役時代を振り返り、「ボールを見ずに相手を見たりして、自分でPKを取りに行っていた」とし、「それがサッカーではインテリジェンスと言われる部分」だとも言う。

 だが、かつて日本でも盛んに「マリーシア(ポルトガル語で『ずる賢さ』の意)」という言葉が用いられ、もっと狡猾(こうかつ)になるべきと言われたことがあったが、その手の話は日本人のメンタリティには向いていない。だからこそ、最近ではあまり語られることもなくなったのだろう。もちろん、ペナルティエリア内(あるいはその付近)で仕掛けていく意識は必要だが、「ファールを誘う=インテリジェンス」と定め、それを得点が少ないことの原因に挙げるようでは、得点力不足の解消はおぼつかない。

 ハリルホジッチ監督が求めているのは、確かに日本人選手に足りないものばかりだ。それ自体は否定しないし、もっと伸ばす必要があることは理解できる。しかし、それらはあくまで日本人の特性を生かしたサッカーがベースにあったうえで、付け加えられるべきものだ。せっかくこれまでに作り上げてきたベースの部分をどこかに置き忘れてしまっては意味がない。

 白髪の指揮官は、いったい日本代表をどこに導こうとしているのか。彼に日本代表を任せて大丈夫なのか。そんな不安を感じさせられた日本代表メンバーの発表会見だった。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki