低い声は選挙の武器に? Wellphoto/PIXTA(ピクスタ)

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 有権者は声の低い政治家候補者を好むらしい――。米マイアミ大学政治学准教授のCasey Klofstad氏らによる、そんな研究結果が科学誌『PLOS ONE』(8月7日)に掲載された。

 研究によると、低い声は強さと有能さを伝えるという。また、低い声に惹かれるのは「原始人の本能」によるもので、人は指導力を経験と知恵ではなく、肉体的能力と結びつけて考える可能性があるという。

 Klofstad氏は、「現代の政治的指導力は、腕力よりもイデオロギーが左右する。だが、人類の歴史を少し遡ると、おそらく文字通り"力"の強い指導者を選ぶことで利益がもたらされていた」としている。

低い声に魅かれるというバイアス

 研究では、成人800人を対象に、仮想の政治家候補者を用いた調査を行い、候補者の声の録音を聞いてもらった。コンピュータソフトウェアを用いて録音の声の高低を変えたところ、低い声の候補者の得票率は60〜76%だった。また、女性候補者についても、低い声のほうが好まれることが判明した。

 Klofstad氏は、「我々は自分たちを理性的だと考えているが、今回の研究では、かすかな信号をもとに、不確かな印象でも判断を下すことが示された。直観に従えばよいときもあるが、低い声の人が実はたいした指導者でない場合、実際のリーダーシップを反映しておらず誤りとなる。選挙時の行動にこうしたバイアスが影響するという認識が高まれば、行動のコントロールに役立つ可能性がある」と述べている。

 そういえば、アメリカのニュース番組の女性キャスターの声は低いのが特徴だ。低めの声で話の内容を権威づけようとしていのかもしれない。

 声の高低は声帯の振動数で決まる。これが男女を見分ける重要な鍵になる。男女の声の高さに差が出るのは、いわゆる男子の声変わりの時期だ。一昔前は15歳くらいがピークだったが、近年では12歳前後まで年齢が下がってきている。

 この時期に、男性ホルモン分泌が盛んになって第2次性徴が明らかになる。その一端として、のどぼとけが突き出てきて、声帯が長く厚くなるため声が低くなるのだ。

声が小さくなる病気がある!

声が大きすぎるという病気はないが、声が小さくなる病気として有名なのは、パーキンソン病だ。パーキンソン病の3大症状は、振戦、固縮、無動といわれ、このうち無動という症状には、表情に乏しい、小刻み歩行、小字症などと並んで小声が含まれる。

 無治療のパーキンソン病症例では、ボソボソと抑揚に乏しい小声発声が目立つという。男性では、やや甲高い声となるのも特徴的だ。国内のパーキンソン病患者の頻度は10万人に100〜150人といわれ、神経難病のうちで最も多いといわれている。

 面白いことに、パーキンソン病のリハビリテーションには、大きな声を出させる訓練(音声治療)が有効だと報告されている。有名なのは「Lee-Silverman voice therapy(LSVT)」と呼ばれる、相当に厳密な方式に沿った訓練だ。

 簡単にいえば、大きな声を出して話をするように指導するもので、効果として声が大きくなるばかりでなく、体調全般が改善するという。おそらく、筋の固縮のために効率のよい発声調節が出来なくなっているのが、訓練によって、ある程度解消されるのだろう。

話す機会が少なくなると、大声が出なくなる?

 パーキンソン病などがなくても、高齢の男性は、退職後などに話す機会が少なくなる。声帯組織、とくに筋の萎縮が進んで、声門閉鎖不全を起こし、結果的に大きい声が出なくなったり、かすれ気味になったりする。こういう人は、できるだけ会話を増やしたり、カラオケや詩吟など、発声する機会をもつことが有効だ。

 声の高低は、持って生まれた声帯などが左右することは否めない。だが、"声を大にして"という言葉があるように、ボソボソと小声で話すより、大きな声で発言する習慣を身につけることは、社会生活においての印象上、大切なことかもしれない。
(文=編集部)