ジブリの教科書10 もののけ姫

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「金曜ロードSHOW!」と言えば、「ジブリ」を思い出す人も多いかと思います。というのも、同枠でのジブリ作品の再放送は何かと多く、『風の谷のナウシカ』の16回をはじめ、『となりのトトロ』『ルパン三世 カリオストロの城』が14回と、数多く再放送されているのです。

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(記事『【ジブリ】「ナウシカ」は再放送数最多! 宮崎駿アニメを愛する“リピーター”の特徴』参照)

現在も、「3週連続夏はジブリ」として『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』に続き、28日(金)には、巨匠・高畑勲監督がおくる、笑いと感動の冒険ファンタジー『平成たぬき合戦ぽんぽこ』が放送されます。何度も見ても楽しいジブリ作品。今回もまたしっかり楽しませてもらっています。

そんなジブリ作品ですが、この夏、文春ジブリ文庫『ジブリの教科書10 もののけ姫』が発売されました。これまで8回の再放送が行われ、いずれも高視聴率をマークした同作は、宮崎駿監督が構想16年、制作3年も費やした大作。

アニメとしては非常に高額である21億円をかけ作られた作品(『魔女の宅急便』は4億円)で、興行収入193億円を記録。今から約20年前の1997年に公開され、当時の日本映画の興行記録を次々と塗り替えました。今ではすっかり市民権を得ている「ジブリ映画を観に行く」という行為が、初めて認められた作品とも言われています。

『もののけ姫』はそれまでのジブリ作品とは一線を画した特徴があると言えます。人体の破損や多くの人間の死を描いており、暴力描写やグロテスクな表現もみられる作風は、それまでの、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『耳をすませば』とは異なるもの。

宮崎監督はこのことについて「ジブリとしては、人間の居心地の悪いエキセントリックな背景をやる時期に来ていたということですね。このままいくと居心地のいい世界を作ってくれるジブリとなってしまう。それをぶち壊したかった」と語っていたことが同書で明かされています。公開された当時、違和感がありながらも、物語の世界観に引き込まれた人も少なくないのでは。

“森の描写”へのこだわり

『もののけ姫』は、アシタカをはじめサン、エボシ御前らが登場し、自然と人間の共存について、深く切り込んだ物語となっています。

人間や自然の生き死をリアルに描いたことで注目された同作ですが、また、舞台となった森の描写についても、力を入れた作品となっています。というのも、ジブリ作品に関わる5人の美術監督が集結し、あの森を描いたのです。美術監督が5人も集まるなんて異例のこと。

それほどこだわった森の描写。この森を描くために、自然が多く残る世界遺産・屋久島を訪れたことは有名な話。サンとイノシシの乙事主が走る森は、屋久島の白谷雲水峡を参考に描かれています。

同書では、美術監督の座談会を収録。このロケハンと森の制作について語っています。

現地で多くの写真を撮るので、てっきり制作時にそれを見ながら描いていくのかと思っていたのですが、どうやら違うようです。写真は現地の雰囲気をつかむだけであって、見たままで描くことはありません。なんと。写真から絵をおこすだけでも大変なのに……。では一体、彼らは何を描いているのでしょう。

「僕らの仕事はあくまで宮崎さんの中にあるイメージを絵にすることですから」と語るのは、『海がきこえる』の田中直哉監督。どうやら忠実に絵をおこすのではなく、宮崎監督の感覚を想像し、絵に落とし込むのが彼らの仕事。

『天空の城ラピュタ』の山本二三監督が、屋久島の写真を参考に描いていると、「これはもう病んでいる森。太古の森は隙間がないんだよ」と宮崎監督から注意されたよう。想像以上に難しい仕事です。

森の他にもタタラ場は同作の舞台として重要な役割を担っていました。ここを描くために宮崎監督が出したオーダーは、「あそこは自然界の中でそこだけ人間が住みついている異物のような、腫瘍みたいなところなので、イメージ的には荒れはてた山肌という感じで」というもの。

皆さん、宮崎監督のイメージをうまく絵にすることはできますか?

こういった話を聞いていると、ジブリの制作には非常に高度なテクニックが必要ですし、それを表現しきれる優秀なスタッフが揃っていることがわかります。

美術も物語も印象に残るジブリ作品『もののけ姫』。同書を読んでいるとまた、同作品を鑑賞したくなってきました。そのときは、タタラ場をじっくり観てみたいと思います。

【参考書籍】
『ジブリの教科書10 もののけ姫』文藝春秋