■8月特集 リオ五輪まで1年、メダル候補の現在地(10)

 8月22日に開幕した、ワールドカップバレー。上位2チームはリオ五輪への出場権を獲得するこの大会は五輪に向け、チームの完成度を測るいい機会でもある。2012年のロンドン五輪で28年ぶりの銅メダルを獲得した女子バレーボールは、それ以上の成績をという期待がかかる。ロンドンでは不動のリベロとして活躍し、昨年まで全日本に招集されていた佐野優子氏に、メダルを獲得できた理由、そしてリオへの展望を聞いた。

 「(初めて出場した2008年北京五輪とは)メダルを獲るという意識、準備がまったく違っていました。北京が終わって次の全日本がスタートしたときから、ロンドン五輪では必ずメダルを獲るという目標がチームに浸透していました。それ以前も『メダルを獲りたい』という気持ちはあったのですが、大きな大会でそこまでいい成績を残せていなかったこともあって、それ以前のところに意識がいってしまっていたんですね」

 まずはチーム全員に意識付けがなされていることが大事であり、加えて、念入りな準備が必要であることを佐野氏は強調する。

 全日本女子はリオ五輪に向け、2013年にはMB1(※1)、2014年にはハイブリッド6(※2)というキャッチフレーズを掲げ、新戦術を取り入れてきたが、今大会はまたミドルブロッカーを2人入れるシステムに戻して戦っている。そのあたりに心配はないだろうか。
※1 ミドルブロッカー(MB)を通常の2人から1人にして、得点力の高いウイングスパイカー(WS)を1人増やして、攻撃力を増す戦術
※2 MB1より攻撃的で、MBを置かず、WSを4人、オポジットを1人入れる戦術

「自分自身を含め、(ロンドンは)100パーセント以上の力を出せての銅メダルだったので、同じ戦い方をしていたら次はダメだろう、新しいことをして他のチームと差をつけないと勝てない、というのは感じていました。一昨年、昨年は試行錯誤できる期間でもありますし、(MB1やハイブリッド6に)トライできたのはよかったと思います。今のシステムにしても、監督の眞鍋(政義)さんは妥協したわけではなく、このメンバーでベストの戦術が今の形なのだと思います。今年はこのやり方ですが、来年になると、またどうなるかわからない。選手にとっては簡単な要求じゃないので、最初は半信半疑な部分があるのですが、一人一人が『これは必要なんだ』と受け止めて取り組めると、まさに100パーセント以上の力が出るんです」

 さらに、リオ五輪でメダル争いするためには戦力的にも「若い新しい力」が必要という。佐野氏は"19歳のエース"に期待を寄せる。

「やはり古賀紗里那(NEC)が注目株でしょう。高校生の時からすごい選手だと見ていたんですけど、社会人になって、Vリーグの決勝でもそうでしたし、今年の全日本を見ても、世界と戦える応用力のある選手です。この大会でも大きく伸びてくれるでしょう。すごく高い目標を持っているので、それをずっと持ち続けてほしいです。
 あとは長岡望悠(みゆ/久光製薬)がコンスタントに得点できるとチームがラクになりますね。でも、まずはチームとしてまとまること。ロンドンの時とはメンバーが半分以上違いますけど、その時にはなかった良さもあると思うので、それを武器に戦ってほしい。今の全日本のメンバーの中で一番引っ張れるのがやっぱり(木村)沙織(東レ)。若い選手の面倒見もいいですし、何でも言い合える仲なんじゃないかなと思います」

 ライバル国にも目を向けてみる。このワールドカップで出場権を争うと思われるのは、昨年、世界選手権で3大大会初の優勝を遂げたアメリカ(ランキング1位)と、同大会銀メダルの中国(ランキング3位)だ。

「アメリカは速い攻撃を取り入れたり、守備もよくなったり、どんどん進化を遂げているチーム。昨年は、世界選手権にピークを持ってこられたことがすごいなと思います。ピーキングはとても大切なことですから。今大会、セルビアに負けたのが少し意外でしたが、盛り返してくるでしょう。
 中国には本当にいい選手が揃っていますよね。どんどん若い選手が出てきて、その選手が活躍して、というのが毎年繰り返される。なかなか羨ましいです」

 眞鍋監督は当然リオ五輪のことを頭に入れながら、いま戦っているだろう。ワールドカップはここまで3勝1敗できたが、アメリカ戦と中国戦が控えているので、これからも負けられない戦いが続く。前回までは3位までが五輪出場権を獲得することができたが、前大会で日本は4位に終わった。厳しさは増している。

「ここで出場権を獲得できる可能性は......五分五分でしょうか。大変ですけど、今の全日本には伸びシロがあるし、大いに期待しています」

 ワールドカップで3位以下でもリオ五輪出場が閉ざされるわけではなく、来年の最終予選で出場権を得る可能性は残る。ただ、目標が「五輪でメダル」となれば、今大会である程度の手応えをつかまないかぎり、それは視界に入ってこないだろう。ワールドカップの熱い戦いを注視したい。

【profile】
佐野優子(さの・ゆうこ)
1979年7月26日、大阪府生まれ。京都府立北嵯峨高卒業後、ユニチカに入社。2000年チームごと東レに移籍。2002年に全日本に初選出。2004年RCカンヌ(フランス)移籍後は、久光製薬、イトゥサチ(アゼルバイジャン)、ガラタサライ(トルコ)、 ボレロ・チューリヒ(スイス)、デンソーと世界各国でプレー。今年の5月現役引退を表明。国際大会では、2010年世界選手権、2012年ロンドン五輪の銅メダル獲得に貢献。また、2014年ワールドグランプリでは、リベロでMVP獲得という快挙を成し遂げている

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari