手倉森ジャパンの“デビュー戦”でさっそく1アシストと結果を出した19歳の鎌田。評判どおりの卓越したボールスキルと攻撃センスでチャンスを演出してみせた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 期待を、裏切らなかった。
 
 U-22代表の京都でのミニキャンプ最終日、45分×2本で実施されたJ2京都とのトレーニングマッチで、2本目の15分から途中出場。公式戦ではなかったし、大幅にメンバーを落とした京都が相手だったことを差し引いて考えるべきだが(それでもチームは試合に負けているが……)、来年のリオ五輪を目指す手倉森ジャパンで“デビュー”を飾った鎌田大地のパフォーマンスは、周囲を納得させるには十分だった。

【U-22日本代表PHOTO】練習試合 対 京都サンガF.C.
 
 与えられたポジションは4-2-3-1のトップ下。プレー自体はどこか淡々としていて、動きは一見スローだが、その振る舞いには独特のリズムがある。だからこそ、相手のマークを剥がす急激なテンポアップは効果的だ。ピッチに立って5分後、前田直輝からパスを引き出した一瞬の動き出しに、相手DFはまるでついていけていなかった。
 
 下がってもらいに行くより、前向きで受けられるようなポジショニングを見せていた鎌田に、最初のほうは頻繁にボールが集まった。しかしながら、時間の経過とともに「ここに」と手で指し示しながら半身になってスタンバイしても、それが空振りに終わることが多くなっていった。
 
「僕から見たら出せるんじゃないかなというシーンがけっこう多かったんですけど、それは出し手によって見え方も変わると思うし、要求をしていきながら、向こうの意見をしっかり聞いていきたい。(手倉森ジャパンでのプレーは)初めてだったのである程度仕方のない部分もありますが、もっとボールに触れたら良かったんじゃないかなと思う」
 
 もっとも、パスが出てこないからといって、やることに変わりはない。根気強く細目にポジショニングを修正しながら、プレーに絡もうとする。
 
 その努力が結実したのが、0-2で迎えた終了間際のワンプレーだ。ボールを要求する鎌田に、後方から正確なフィードが届く。何度目かのチャレンジでラインブレイクに成功すると、「もらって中を見たら、味方(前田)がファーに走っていたので、GKを越えたら入るかなと思いました」とクロスを供給。これを「大地がああやって良い形で裏へ抜けたので、来るだろうなと思って信じて走りました」という前田が確実に押し込み、U-22代表がようやく1点を返した。
 
 わずか30分のプレータイムのなかで目に見える結果を出したが、「平行パスをGKに取られたり、シュートも決められる場面があった。あの内容で1アシストでは少ないかな」と、弱冠19歳の大物ルーキーは満足する素振りを見せず、反省点を挙げる。「まだまだ上手くボールに触れると思う」とその向上心は尽きることがない。
 
「前向きでボールをもらえたら、自分の持ち味はある程度通用するのかなというのがあった。その回数を増やしていけたらいい」
 
 その言葉を裏付けるプレーは、アシストしたすぐ後に披露される。バイタルエリア付近でキープすると、出しどころを探しながらゆっくりとボールを運び、抜群のタイミングで抜け出した金森健志へスルーパスを通し、相手の守備陣形を簡単に切り崩してみせた。
 狭いエリアでも、卓越したボールスキルで迫りくる相手を軽やかにかわしてみせる。「自分の得意な形」という相手を背負ってからのターンも「回数は少なかったが、そこは良くできたかな」と手応えを語る。
 
 チームを率いる手倉森誠監督の評価も上々だ。
 
「勝つためにはゴールが必要で、前田と鎌田はしっかりと決定的なチャンスをもたらしてくれるプレーヤーになりそうだなという気配がします」
 
 鎌田個人については、次のように言及している。
 
「攻撃のセンスは確かにあるな、と。身体の使い方やボックス内の身のこなし。相手を外す部分ではスケールの大きさを感じる。大柄な選手で前でプレーするのは、この世代では(鈴木)武蔵ぐらいしかいなかった。その意味では、あの体格で、足もともしっかりしていて、ゴール感覚も備えているだけに、頼もしいなと改めて思いました」
 
 合宿当初はコミュニケーションに不安を抱いていたようだが、「最初に比べたら全然喋れるようになった」。試合後のクールダウンでは、隣に座る岩波拓也と笑顔で談笑する姿も見られたように、スムーズにチームに馴染んでいったようだ。キャンプ中のホテルでは中島翔哉と同部屋で、この生粋のサッカー小僧と生活をともにすることで多くの刺激も受けた。
 
 選手として、戦いのステージがひとつ上がった。「チームでレベルアップできるように、鳥栖で結果を出し続けるようにしたい」と足もとを見失ってはいないが、「五輪は以前に比べたら、より近付いたかなと思う」。
 
 五輪という目標が、より現実味を帯びてくる。もっとも、その前にさらなるステップアップの機会が訪れるかもしれない。
 
 この試合を視察していたA代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、京都に敗れたU-22代表の戦いぶりに対し、どちらかと言えばネガティブな印象を受けたようだが、それでも次のようなフレーズを口にしている。
 
「こういった試合でいろいろと判断するのは難しいですが、何人か面白い選手を見つけました」
 
 その“何人か”に鎌田が入っていてもおかしくはない。ハリルホジッチ監督は「将来のことを考えると、若い世代にチャンスを与えなければいけない。私のビジョンは3年後のワールドカップを見ています」という考えの持ち主だ。近い将来に鎌田がハリルジャパンに招集されても、決して不思議ではない。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)