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ソーシャル・ショッピングサイト「BUYMA(バイマ)」を運営するエニグモは、経済誌「Forbes」アジア版における「売上10億ドル以下の優良企業200社」に選出されるなど、その収益性と成長性が高く評価されている。創業から11年のITベンチャーは、従業員が元気になるための職場づくりと、事業の成長をどのように両立させていったのだろうか? 取締役の金田洋一氏と、人事総務グループ マネージャーの大谷彰徳氏へのインタビュー記事をお届けする。

○世界のビールが飲めるオフィス

――オープンな社風が特徴の御社には「ビール制度」というものがあると聞きました。まずはこの制度について教えていただけますか?

金田氏:「新しい発想はお酒の場から生まれる」と、代表の須田がよく言っていまして、一昨年にオフィスを移転した時に、仕事以外の時間にメンバーが関わり合い、会話できるようなフリースペースをつくりました。バーカウンターのように窓ぎわに並ぶ席があって、世界中のビールを皆が好きに飲めるようになっています。業務時間外であればいつでも飲んでよい、というかたちになっています。

――どのように利用されているのでしょうか?

金田氏:社内ではプロジェクト単位でさまざまなチームが動いているのですが、それぞれのチームが自分たちの持っている案件をリリースするごとに、小さな打ち上げをしています。

――「お祝い」がすぐにできると、達成感を共有しやすくなりますね。

金田氏:あとは煮詰まったり、夜遅くなった時に、ちょっと飲んで話をしています。仕事中では聞けない意見や、「この人はこういうことに興味を持っているんだな」ということがわかる時間だと感じています。

○「やんちゃ」である「まじめ」さ

――2011年に経営理念を刷新し、"ENIGMO7"を掲げた御社ですが、一番最初に「やんちゃであれ!」というメッセージがあります。この「やんちゃ」とはどういう意味合いなのでしょうか?

金田氏:今ある制度やルール、既成概念の中では、なかなか新しいことは生まれません。そこを飛び越えて行動を起こしたり、発言する中から新しい発想が生まれるんじゃないか、そういう意味での「やんちゃ」です。

「こうあるべきだ」と多くの人の前提となっているようなことも、実際は発想が固まってしまっているだけだと思います。本質を問い直すことこそが、「やんちゃ」というわけです。

――しかし、羽目を外しすぎたり、やり過ぎたりすることにつながる恐れはありませんか?

金田氏:そこは「メリハリを付ける」「周りに敬意を払う」ことが重要だと常に社員に言っています。自分の言葉や行動には、常に相手がありますよね。自分が発信したものはどの範囲に及んで、どんな人たちがいて、どんなことを感じるだろうか。それを熟慮した上での言葉や行動だったらなんでもよい、というわけです。

――「社会通念でなく、生身の人間と相対しよう」ということでしょうか。

金田氏:まさにそういうことです。実体を見ましょう、ということです。

大谷氏:私はこの会社に転職したばかりですので、フレッシュな目で見えるのですが、実際は「やんちゃ」というよりとても「まじめ」だと思いました。「自由と自立」というコンセプトが根付いています。自由であるがゆえに一人ひとりが考えて行動しているので、よい意味でのガバナンスが効いているんです。

――個人の価値観レベルで、やること・やらないことが判断できているわけですね。

大谷氏:今はとてもよい状態になっていますので、今後、100人規模の会社へと成長していくにあたって、会社のカルチャーを薄めずに大きくしていくにはどうすればよいか、そこが大きな課題だと思っています。

○採用はじっくり語り合って

――「自由と自立」「やんちゃであれ!」「周りに敬意を払う」などのカルチャーを根付かせるためには、どのような工夫があるのでしょうか?

金田氏:派手な取り組みではありませんが、最も重要なのは採用です。それも、見極める時間を双方に取ることが必要です。われわれだけが選ぶのではなく、応募者もまた選びに来ています。その「対等な時間」をどれだけ作り出すかが非常に大事です。われわれもうそ偽りなく会社について伝えますし、応募者の方も、自分がどういう人間で、どんなものを求めているかを正直に言っていただくために、かなり多くの時間を使います。

――カルチャーというのは説明しにくいと思うのですが、どうされているのでしょう。

金田氏:一対一の面接は行わず、必ずこちらから複数の人間を出しています。一人だけのものの見方を伝えるのではなく、お互いが会話をする空間を、語り合う時間をちゃんと作り出すようにしています。

――採用の面接は「質疑応答」という印象がありますが、そうではなく「語り合う」んですね。

金田氏:「われわれはこういうことを考えて、こんなことをやっているけど、あなたはどういうことを考えて、どんなことをやっていますか?」と、ただ質問をするだけはなくて、質問の意図までお話しています。

○皆とつながる「ウェルカムランチ」

――入社後は、エニグモカルチャーにどのように触れていくのでしょうか?

金田氏:一番最初に経験するのが「ウェルカムランチ」です。部署・部門ごとに、新しく入った社員を誘うウェルカムランチが勝手に催されて、スケジュールにいつの間にか入っています。会社が大きくなると、部署ごとに意識の差が生まれて関わらない人が出てきますが、そういったことを和らげようと、自然発生的に生まれて、昔から根付いている習慣です。

大谷氏:私も「入社しました。よろしくお願いします」というメールを送ったら、部署関係無しに、「ぼくも同じ年です」「こんな共通の趣味があります」と、いろいろな暖かい返信をもらいました。それから「ご飯を食べに行きましょう」とつながって、はじめの1、2週間は部署ごとのランチでスケジュール帳が埋まりました(笑)。

中途で入ると、なかなか話しかけづらいと思うのですが、ランチを一緒に食べながらいろいろな話を聞けるので、すぐに顔を覚えることができました。この「ウェルカムランチ」には、やらされている感が全く無いんです。自発的に起きているので、すごくよいなと思いました。

――自己紹介メールが儀礼的・義務的なものではなく、ちゃんとそこから会話が生まれているのですね。

金田氏:返信自体も全社員にまわるので、この人はセンスのある返信をするとか、この人はマニアックなネタを掘り下げるとか、それぞれの価値観を全員で共有できるようになっています。

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カルチャーにとことんこだわるエニグモだが、その理由は、かつて直面したピンチにあった。インタビューの後編では、過去の経営危機から学んだこと、そして未来の展開についてお届けする。

(瀬戸義章)