冷却塔からレジオネラ菌が飛散する shutterstock.com

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 ニューヨーク市でレジオネラ症が流行している。その対処に追われるなか、米国政府による新たな2件の報告で、この疾患の原因が管理の不十分な温水浴槽、噴水、冷却塔などのさまざまな水源にあることが明らかにされた。この知見は「特に病院、長期療養施設、その他の医療施設など、影響を受けやすい人が集まる場所でのレジオネラ菌制御の難しさを浮き彫りにするものだ」と米疾病管理予防センター(CDC)のKarlyn Beer氏らは述べている。(HealthDay News Aug. 13, 2015)

 ニューヨークの調査では、サウスブロンクスで発生した100人以上の罹患および12人の死亡の原因が、空調に用いられる冷却塔にあったことが明らかにされているが、全国的には処理の不適切な飲料水による流行が増えてきていると、CDCのチームは1件の報告で述べている。

 冷却塔は屋内の熱交換器や吸収式冷凍機で回収した熱を大気中に放出するために設置されている。熱を放出させるために冷却水を落下させており、レジオネラ菌に汚染された冷却水が、ファンによって巻き上げられ、その際にエアロゾル(霧のような微細な水滴)となって空気の流れとともに外部に飛散、人の気道を介して体内に侵入しレジオネラ症を発病させる。

 この研究で、2011〜2012年に報告された32件の飲料水に関連する疾患のうち3分の2がレジオネラ菌に起因するものであり、2007〜2008年の数字の2倍となっているという。この2011〜2012年の流行の原因は、管理の不十分なビルの配管や、(公共の水道でない)個人利用の地下水だったという。この期間にレジオネラ菌が原因で14人が死亡し、430人以上が疾患を発症した。

 「流行を予防する鍵は、ビルの配管システムのメンテナンスだ」とBeer 氏は述べている。CDC発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report」8月14日号に掲載された2件の研究はいずれも同氏のグループによるもの。

 流行は病院や医療施設で発生することが多く、入院患者に疾病負荷が偏っていることが示されると研究チームは指摘する。レジオネラ症は肺炎の一種で、特に高齢者や基礎疾患のある人はリスクが高い。咳、喘鳴、呼吸障害などを引き起こすが、人から人へ感染することはなく、抗生物質で治療できるという。

 配管システムや私設井戸の不備、地下水汚染を特定し、改善することにより、多くの流行を予防できると著者らは述べている。ニューヨークではすでに、冷却塔に関する法令の厳格化に着手している。

日本でも年々患者数が増加中

 2件目の報告では、2011〜2012年に発生した環境水または未確定の水への曝露による18件の疾患流行(10人が死亡)のうち、15件がレジオネラ菌によるものであったとしている。4件がホテルやモーテル、3件が病院、3件が長期療養施設で発生しており、オフィス、工場、トレーラーハウスでも流行がみられたほか、装飾用の噴水に関連するものも3件あった。

 レジオネラ菌をはじめとする細菌の増殖を防ぐには、さまざまな水道システムの管理が不可欠であると、研究著者らは述べている。

 日本では厚生労働省が1999年4月に、感染症新法によりレジオネラ症を、デング熱、日本脳炎、マラリアなどと同じ第4類感染症として定めている。診断技術の進歩もあるが、患者の発生数は年々増加傾向にある。(2001年86人、2005年281人、2010年751人、2012年903人〜感染症発生動向調査:2013年5月15日現在)。

 感染症による死亡者は減少傾向にあるといわれるが、後遺症として肺の機能低下などQOLを損なう可能性は高いため軽視はできない。冷却塔の中でレジオネラ菌が繁殖に適した水温は20℃〜50℃、夏場は冷却水の温度が上昇し、菌が繁殖しやすいので注意が必要だ。
(文=編集部)