世界の金融市場が混乱するなか、2016年米大統領選の共和党最有力候補であるドナルド・トランプは株価暴落を中国のせいにして、中国はアメリカにとって脅威だ、と言った。

「私はずっと、中国にアメリカの雇用が奪われていると言ってきた。われわれの金が奪われているのだ。気をつけないとやられてしまう。自覚が必要だ。誰もそれをわかっていない」。トランプは月曜の午後、インスタグラムの動画でそう発言した。

 その前には、ツイッターでは次のような発言もしていた。「市場は崩壊しつつある。すべては計画の不手際で、中国とアジアに主導権を握らせたせいだ。面倒なことになる可能性がある! トランプに投票を」

 もし市場の混乱が続けば、リーマンショック以降の株価高騰に終止符が打たれるかもしれない。2009年春に7000ドルを割り込んでいたダウ工業株30種平均は、1万8000ドルを超える水準まで上昇してきた。先週からの株価暴落は、過去6年にわたって世界経済の回復を後押ししてきた中国経済の成長に陰りが見えたという不安によるものだ。

 中国発の株価暴落は、選挙運動の中心に中国経済を据えてきたトランプにとって好都合だ。トランプは常々中国を、通商交渉を通じて抜け目なくアメリカから雇用を盗む経済大国として描いてきたが、今回の株価暴落のおかげで一歩踏み込んだ議論ができそうだ。アメリカはあまりにも密接に中国と結び付いており、中国経済の悪化がアメリカ経済の悪化に直結してしまう、というものだ。

 トランプは輸入品に高率の関税を課し、過去四半世紀にわたって行われてきた超党派の貿易自由化交渉を放棄するべきだと考えている。この政策の善し悪しはともかく、株価暴落でこの問題が選挙運動の中心に躍り出てくることは確かだ。

 トランプは、他の貿易・金融問題については多くを語っていないものの、先週末に出演したCBSのインタビュー番組『フェイス・ザ・ネーション』ではヘッジファンドを批判してこう述べた。「この国をつくってきたのはヘッジファンドの人々ではない。奴らは書類や金をあちこち動かして幸運を引き当てただけの連中だ。何の代償も支払っていない。馬鹿げている」

 投資家に対する増税を大っぴらに訴えることこそなかったが、この発言から察するに、トランプは投資に増税する案には抵抗がないようだ。トランプの税制案は今秋、提出されることになっている。

マシュー・クーパー