制服向上委員会は普段9名で活動。左から、齋藤優里彩、金子結稀、齋藤乃愛、清水花梨、西野莉奈、木梨夏菜。他に、小川杏奈、斗崎歩音、野見山杏里が在籍中。

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 前回のインタビューで、「大人にやらされている」「サヨクに洗脳されている」説をきっぱりと否定した制服向上委員会のメンバーたち。しかし、彼女たちの多くはもともと歌やダンスが好きなだけで、政治や社会問題のことはほとんど知らなかった。

 では、いったい彼女たちはどうやって、原発や安保法制のことを学んで行ったのか。そして、彼女たちはこれから何をめざすのか。AKBや他のきらびやかなアイドルがうらやましくないのか。そのへんも、率直に聞いてみた。

■TVに出るために脱原発の歌が歌えなくなるぐらいなら、TVなんか出たくない

――歌やダンスにしか興味がなかったみなさんがいろいろ学んで行くうちに、意識が変わったという話でしたが、政治や社会問題は、どういうふうに勉強しているんですか?

 齋藤(優) 事務所の方で、週に2、3回学ぶ機会を設けてくれています。

――それはどういうもの? ネットではサヨクの大人に洗脳教育されているというようなイメージをもたれているみたいですが(笑)

 齋藤(優) まさか(笑)、学校なんかより全然自由ですよ。プロデューサーから話を聞くこともありますが、どちらかというと、新聞の切り抜きをみんなで回し読みしたり、ニュースを見てメンバー同士でディスカッションしたり、自分たちで考える機会をいっぱいもらってる感じですね。

 木梨 歌っている歌詞とは反対の意見を学ぶこともありますね。この前は、イベントの楽屋で、メンバーが安保法制賛成派と反対派に分かれる設定で、討論しました。

 西野 学校の授業って、先生が上から知識を教えるだけじゃないですか? でも、ここのやり方はそういうんじゃないところがいい。

 齋藤(乃) 学校の授業もこういう感じだったら楽しくなるのにね。学校でやってるような、先生の話を聞くだけの授業だと眠くなっちゃう。

 木梨 あとはやっぱり、制服向上委員会としての活動のなかで学ぶことも多いですね。最近では、プラン・ジャパンという国際NGO団体が制作した映画(『Girl Rising〜私が決める、私の未来〜』)を観て、発展途上国の女の子の現状を知ったり、戦後70年広島・長崎原爆展に行って実際に被爆された方のお話を聞いたり、岩波ホールで上映された『沖縄・うりずんの雨』を観て沖縄の戦争の歴史を学んだりしました。あとは、自分から進んで新聞やニュースをチェックするようになったかな。

 齋藤(優) 私は主に本ですね。いまは、『日本国憲法を口語訳してみたら』(幻冬舎)を読んでいます。憲法って、原文で読むとすごく難しいんですよね。あと、こういう本で一から勉強して現状は分かっても、戦後70年の流れとか、戦争中の話とかは分からないので、そういったことも勉強していきたいですね。

 西野 やっぱり少しでも知識があるとすごく変わるんですよね。正直、最初はデモもただ行ってるだけだったんですよ。でも、言っていることが分かるようになってからはすごく楽しくなりました。

 齋藤(乃) 前はシュプレヒコールとか「これ言ってもいいのかな?」と思ってたんですけど、いまでは、みんなが一緒の思いで、一緒に歩いて訴えてるってすごい格好いい!って思います。

 西野 前までは怖くて、絶対一人じゃデモに行けなかったけど、いまは一人でも行けますね。

 齋藤(優) ごめん。私は一人じゃ無理かも(笑)寂しくなっちゃう(笑)

 他全員 え〜〜〜〜〜(笑)

――デモに対する思いはわかりましたが、でも、みなさんは歌やダンスがやりたくてアイドルになろうと思ったんですよね? テレビの歌番組やバラエティにたくさん出ているAKB48などのアイドルが羨ましくなったりはしない?

 齋藤(優) ならないですね。自分たちのグループのメッセージとして、脱原発だとか戦争法案反対だとかを歌っているわけなので。もしもそういった歌を歌える場所がなくなってしまったのだとしたら不満に感じると思いますけど。

 木梨 唯一羨ましいとしたら、やはり、歌う活動の場がAKBさんの方が広いということですね。歌っている曲の内容に関しては何も羨ましいとは思いませんけど、私たちにもAKBさんが歌っているような青春ソングもラブソングもあるので。でも、AKBさんの方が露出媒体が多いし、テレビでも歌えるというのはありますよね。

 齋藤(優) でも、テレビではなくとも、私たちには自分たちの歌を歌える場所があります。もしもテレビに出るために、脱原発の歌を歌えないとなるぐらいなら、私はテレビなんか出たくないです。

――先日皆さんが渋谷で安保法制反対デモに参加していたのと同じ日の同じ時間、TOKYO IDOL FESTIVALという、150組以上のアイドルが出演し4万人近くのお客さんが来場した、フジテレビ主催のアイドルフェスティバルが開かれていました。あっちのほうに参加したいと思ったりはしなかったですか?

 木梨 "どちらのイベントに出たい"とかじゃなくて"私たちは何を訴えるか"が大事なんですよね。もしも、フェス側から「脱原発の曲を歌ってください」というふうにオファーされたんであれば、人もいっぱいいるだろうし、すごい発信力になると思うので、メンバーをデモ参加組とフェス参加組で二手に分けて両方に出演したんでしょうけど、いまの日本ではなかなかそうはならないじゃないですか。そういうアイドルフェスティバルではプロテストソングは歌わせてもらえない。だから、いくら活動の場が広まるといっても、自分たちの主張を曲げてまでそういうイベントに出たいとは思わないかな。

■沈黙しているミュージシャンの方には「怖気づくな!」と言いたいです

――みなさん、強いですね。その歳でどうしてそこまでの覚悟をもてたんだろう。

 齋藤(乃) 最初からこんなに強かったわけじゃないですよ(笑)

 木梨 はじめのうちは、傷ついたこともありましたよ。知らないうちに涙が出てる、みたいな。ツイッターに寄せられる誹謗中傷の言葉がすごくて、怖いなって思いましたし。
「私たちがやってることって間違ってるのかな」なんて、一瞬迷ったこともありました。

 齋藤(乃) でも、デモなどのイベントに参加するたびに応援してくださる方々の声も聞こえて、「頑張れる」って思いました。原発問題とかで苦しんでいる人の声を間近で聞いているんで、そういう人たちがいるって知りながら、私たちがくじけてられないなって思うんですよね。

 齋藤(優) それと、一連の活動を通して学んだのは、"無知"を恐れちゃいけないんだなってこと。恥ずかしがったり、怖がったりして何も発言しないと、自分も世界も何も変わらない。行動してみたら、暖かく迎えてくださる方も、応援してくださる方もたくさんいらっしゃるから。皆さんも、おかしいと思うことがあるのなら「勇気を出して行動して!」ということを伝えたいですね。

――ミュージシャンや芸能人の中には、いまの政治状況に対しおかしいなと思っていて、そういった発言をしたいと考えていても、事務所からストップがかかって話せない人がたくさんいると思うんですよね。

 齋藤(優) そういう方には「怖気づくな!」と言いたいです(笑)

 木梨 自分の思いを大切にしてほしいなって思います。

 齋藤(乃) テレビとか、公の場で政治的なことを言うと、視聴者から批判も来るだろうし、そういうのを恐れて言わないのかなと思いますが、勇気を出してほしいです。

 齋藤(優) みなさん、なにかを伝えるためにアーティストという職業をお選びになっていると思うので、自分の本心から「原発が危険」とか、そういうことを思うなら、歌にして伝えるべきだと思うし、「安保法制がおかしい」と思うなら、それを歌という手段で伝えるべきかなって思います。
 
――最後にみなさんの未来のことを教えてください。これからやってみたいことってありますか。たとえば、将来、政治家になりたいとか(笑)

 木梨 それ、友だちにもよく言われます(笑)。でも、私たちがやりたいのは「歌」なんです。

 齋藤(乃) 「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」だって、歌わなくていい世の中になってくれるなら、それに越したことはないです。

 木梨 私たちだって、本当はプロテストソングばかりでなく、可愛い歌もたくさん歌いたいですよ。でも、歌わざるを得ない政治状況があるから歌っているわけで。プロテストソングを歌っていることで、「売名行為」なんて言われてますけど、売名したいだけなら、このグループにいません! ネトウヨと呼ばれる方々からも「ブスブス」言われたくないですもん(笑)

 西野 今はやっぱり目の前の問題をちゃんと歌でみんなに伝えたいと思っています。安保法制の国会論議とか安倍さんの説明とか聞いてると、やっぱりひどいじゃないですか。「不良から、友だちの麻生くんが守ってくれて〜」とか、なんで、そんな大事なことをくだらない例でたとえるんだろう? 私たちでもそんな幼稚なこと言わないような気がするんですけど。

 齋藤(乃) あと、「私が総理大臣なんだから私が正しい」とか。学校の先生にもそういう人いるんですよ。いつもイラつきます。先生だから正しいこと言ってるよみたいな雰囲気を出しますけど、こっちの方が正しいことを言うときもあるし。なんでもかんでも自分が正しいと思ってる大人ってどうなんでしょう。

 齋藤(優) ああいう人が首相っていうのが恥ずかしいよね。

 木梨 川内原発の再稼働もすごく心配。核兵器をつくる技術のために原発が必要だっていう話を読んだことがあるんですよ。原発がなくたって電気は足りてたわけじゃないですか? 結局は、核兵器をつくるために原発を大事にしたいのかなって。

 齋藤(優) 最初にも言いましたけど、今はとにかく私たちの活動をきっかけに社会問題に目を向ける人が多くなって欲しいというのが一番です。私たちもまだまだ勉強不足ですけど、まずは行動してみる。歌やダンスを通して伝えていきたいなって思っています。

 西野 歌える場所があればどこででも歌いますから、ぜひ呼んでください!

――もしも、自民党の集会に呼ばれたらどうしますか?

 齋藤(優) もちろん、喜んで行かせていただきます! 正反対の意見も聞きたいですし、私たちのモットーは「歌える場所があればどこへでも」なので(笑)

 以上、インタビューを読んでみなさんはどう感じただろう。

 実はインタビュー前、私たちも半分くらいは太田光と同じように「無理矢理やらされているんじゃないか」という疑念をもっており、だから、このインタビューではわざと彼女たちに意地悪な質問をぶつけてみた。

 しかし、彼女たちはなんの屈託もなく、自分の素直な思いを語ってくれた。

 もちろん、彼女たち自身が認めているように、ほとんどのメンバーはもとから社会問題に関心をもっていたわけではない。制服向上委員会の活動を通じて周りの大人から原発問題や安保法制や憲法の問題を教わった。そういう意味では大人が用意したものに乗っかったというのはたしかだろう。

 しかし、きっかけがそうであっても、彼女たちは今、そのへんの政治家よりもずっと自分の頭で考え、自分の言葉をもっている。覚悟をもってメッセージを発し、その発したメッセージに誇りをもっている。このインタビューを読めばそのことがよくわかるはずだ。

 これを「操られている」「やらされている」というのは、自分たちのだらしなさを認めたくない大人たちの言い訳にすぎない。
 
 メンバーのひとり、斎藤優里彩は「"無知"を恐れちゃいけない。恥ずかしがったり、怖がったりして何も発言しないと、自分も世界も何も変わらない」と語っていた。

 私たちが今、耳を傾けるべきなのは、空気を読むことに長けた小賢しい評論家や芸人のしたり顔の解説ではない。歌やダンスが大好きなこの女の子たちのまっすぐな言葉なのだ。
(インタビュー・構成 編集部)

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■制服向上委員会プロフィール
1992年結成のアイドルグループ。安倍政権批判で話題の曲「おじいさんと同じ」「Oh ズサンナ」収録のプロテストソングコンピレーションアルバム『3あくついほう!』好評発売中。また、先日復活した制服向上委員会のスピンオフユニット・寿隊による最新アルバム『終わりよければ全てよし』も発売されたばかり。9月22日(火・祝)国分寺Lホールにて単独ライブ、9月25日(金)国分寺Café SlowにてPANTA(頭脳警察)・中川五郎とのトーク&ライブが予定されている。その他、今後の詳細はオフィシャルホームページを参照。