CoCo壱番屋の人気トッピング・チキンカツを載せた野菜カレー。約950円
 外食チェーン店の苦境や不祥事など暗いニュースが多い中、躍進した企業がある。カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」(以下、ココイチ)を展開する壱番屋は、平成27年5月期連結決算における最終利益27億円と、前期比14.2%増の過去最高を記録したのだ。

 外食に対して消費者が厳しくなっている中での快挙だ。外食産業に詳しいフードアナリスト・重盛高雄氏は次のように語る。

「日本フードサービス協会のデータによると、外食産業は業態で明暗が分かれています。ファミリーレストランは25カ月連続で前年比を上回っています。一方、ファストフードは苦戦中。消費者の嗜好は、デフレ時代の『とにかく安さ』から一歩進んで、『安い・マズイくらいなら外食をしない』、『コストパフォーマンスに優れたものを食べたい』に変化しています。消費税アップの影響で、お客さんの取捨選択は、ますます厳しくなっているといえるでしょう」

 そんな中、なぜココイチのカレーは売れているのか? カレーを食べたいなら、他にも選択肢は多い。価格も大手牛丼チェーンなら300円台半ばだが、ココイチのポークカレーは442円。約100円の開きがある。

 前出の重盛氏はココイチの強みについて次のように分析する。

「まず、カレーの豊かなバリエーションによる、幅広い客層への訴求があります。ココイチはトッピングが有名ですが、それだけでなく、ルーの種類・辛さ・量などもカスタマイズが可能です。おかげで、子供を連れて行っても、おじいちゃんを連れて行っても、みんなが好みのカレーを食べられる。これなら家族連れにとっても選択肢の一つとなり得ます。実際、ココイチの店舗は牛丼店に比べてカウンター席が少なめで、テーブル席が多くなっています」

◆豊富なトッピング仲人としてのルー

 そして、誰もが注目するトッピングも強みだ。

「揚げ物にしても、ココイチでは揚げたてを食べられるんですよ。作り置きではなく、注文受けてから揚げますからね。当然ながら、トッピングを追加すれば客単価も上がります。また、トッピングの価格は100円台も数多くあり、気軽に追加できる上手い値付けになっているんです。牛丼の場合はこうもいかず、客単価を上げづらいのがネックになっています」

 ココイチ利用者に話を聞いてみても、やはりトッピングは重要で、「必ずウインナーをトッピングする」、「カツカレーを気軽に食べられる」といった声があった。

 では、肝心のカレールーの味はどうか? 美味い不味いは個人の嗜好によるが、その方向性は平均的というか無難。だが、それが強みだと重盛氏は言う。

「ココイチのカレールーはお見合いにおける仲人さんみたいなものと捉えています。ご飯とルーだけでなく、トッピングを加えた三要素を調和させる橋渡し役。そして、好みが分かれるような個性の際立った味ではなく、誰もが受け入れられるような王道をはずさない味です。先にも指摘した、細かいカスタマイズと合わさって、個人個人の味覚にあったマイカレーともいうべき存在が出来上がるのです」

 ちなみに、ココイチのカレールーはセントラルキッチンで調理したもの。一方、他のチェーン店におけるサブメニューのカレーは概してレトルト。消費者が多ければこそのアドバンテージだろう。

 ココイチの戦略は、味の問題だけにとどまらなく、満足度を上げる演出にも見て取れるという。

「たとえばトッピングの揚げ物は、客席から見える位置で調理されます。ロースカツの揚がる油の音、そこで高まる期待感が重要です。この演出は天丼チェーンやカツ丼チェーンでも取り入れられていますね。ほかにもオーダーの取り方に注目。店員が『辛さ1、トッピング・ウインナー!』などと他のお客さんにも聞こえるように大きな声で言っているはず。回転寿司なども同じで、他人の注文を聞くと『それも食べたい』といった欲求が生まれます。これが意味するのは、早く出てくることだけが重要ではないということ。待つ時間も楽しみのひとつ。そこをしっかり押さえているのです」

 消費者心理を温めなおす仕掛けの数々、そこにもピリッとスパイスが効いているようだ。

【重盛高雄氏】
フードアナリスト。ファストフードや外食産業に詳しく、メニューから事業形態まで語り尽くす。テレビ・雑誌と幅広いフィールドで活躍している