大規模噴火が懸念される桜島の模様(YouTube「ANNnewsCH」より)

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 先週から日々、桜島の状況が注目されている。気象庁は2007年に噴火警戒レベルを導入して以来、初めて桜島をレベル4(避難準備)に格上げした。桜島の研究を35年続けている京都大学防災研究所の井口正人教授は、今回の桜島の異変について、「1980年代以降の南岳の爆発を含め、今までにない火山活動。規模の大きな噴火が今すぐ起きてもおかしくない差し迫った状況だ」と発言している。

 井口教授はもともと今年5月に「桜島の北側の海底、地下深くにマグマ溜りがあり、このマグマが桜島の直下に流れ込み、山体が膨脹し続けている。さまざまな兆候から2020年頃には大噴火が発生する可能性が高い」と警告していたが、まさに指摘通りの状況が起きつつあるということだ。

 だとすると、気になるのが、2週間前に再稼働になった川内原発への影響だ。川内原発は桜島から50キロの場所にあるが、その桜島は「姶良(あいら)カルデラ」という巨大火山の一部で、この巨大火山が噴火した場合、川内原発も壊滅的な被害にあうことが予想されている。

 実際、川内原発を再稼働させた九州電力も3万年前に起きた姶良カルデラの破局的噴火の際、火砕流が川内原発のある地点まで到達したことを認めている。

 だが、再稼働当日の記事でも指摘したように、原子力規制委員会は、川内原発が稼動している数十年の間に噴火は来ないとして立地不適にしなかった。九州電力が火山活動のモニタリングを行い、火山噴火の兆候把握時に適切な対処をするとして、再稼働にGOサインを出した。規制委は「再稼働ありき」で、数万年に一度の噴火など考慮するに値しないとその危険性を排除してしまったのだ。

 しかし、この桜島の噴火が姶良カルデラの破局的噴火につながる可能性はけっしてゼロではない。01年に長崎大学の長岡信治氏らが発表した研究論文「10万〜3万年前の姶良カルデラ火山のテフラ層序と噴火史」によると、2万9000年前の姶良カルデラの破局的噴火の際、最初に現在の桜島付近で大噴火が発生しているという。その後、数カ月程度活動が中断した後、破局的な巨大噴火が発生したと推定している。

 姶良カルデラの噴火の可能性が指摘されているのは地震考古学的な観点からだけではない。桜島噴火を予見していた前出の井口教授は桜島単体だけではなく姶良カルデラについてもGPSを使った地殻変動の状況を調べ続けてきた。「桜島昭和火口噴火開始以降のGPS観測 ─2012年〜2013年─」という論文には、こう書いている。

〈桜島および姶良カルデラ周辺の地盤は長期的な膨張が継続している.2010年11月から2012年11月までの間の繰り返し観測からは,姶良カルデラ中央部を中心とする等方放射状の膨張が検出され,球状圧力源は深さ7kmに得られた.この膨張は2011年10月〜2012年2月にかけて膨張率が大きかった.また,2013 年1月〜6月にかけても膨張が観測されている〉

 姶良カルデラ自体のマグマが増加しており、その姶良カルデラ自体のマグマから一部が桜島に流れ込んでいるのだ。これは火山学では当たり前の見解で、鹿児島大学の井村隆介准教授は、姶良カルデラには既に巨大噴火を起こすだけのマグマを蓄積している可能性があると指摘している。

 もうひとつ、気になるのがいわゆる「たぎり」と呼ばれる現象だ。鹿児島市桜島の北の端にある二俣港で、海面にぶくぶくと湧き出す気泡が、火山性地震が急増した15日以降、住民によって確認されているが、これは海底から火山性ガスが湧き上がっていると見られている。鹿児島地方気象台は「火山活動との関連性は分からない」としているが、無視できない事態だ。

 この付近では以前も「たぎり」現象は見られていたのだが、それは桜島から離れた場所だった。今回のような桜島近辺の 「たぎり」は前例がなく、住民の一部は姶良カルデラに異変が起きているのではないか、と心配している。

 いずれにしても、現在の桜島の状況は、実は姶良カルデラの巨大噴火の恐れを無視できるような状況ではない。数万年に一度の話を大げさにするなと言うが、11年の東日本大震災は数万年に一度あるかないかの巨大地震だった。そしてその稀な巨大地震以降、日本全体の地殻変動が起きていると多くの地震学者は見ている。

 実際、一部のマスコミはこの桜島の噴火活動以降、川内原発への影響を注視。原子力規制委員会に対しても質問を投げかけている。だが、驚いたことに原子力規制委員会の田中俊一委員長は噴火前と全く同じ、木で鼻をくくったような対応に終始しているのだ。

 原子力規制委員会のHPに、8月19日の田中委員長会見が掲載されている。少し長くなるが、全文掲載するので読んでいただきたい。

〈記者 朝日新聞のオオムタです。川内原発のことについてお伺いします。桜島が噴火警戒レベル4になっております。これについて、巨大噴火については、異常な状態があれば、それは事前に分かるということで審査に合格ということになったと思うのですけれども、九州電力から今の状態は異常ではないというようなこと、あるいはそういったことについて、今の状態について、規制委員会から川内原発、あるいは九州電力に対して、桜島の状態について、今、どういう状態にあるのかと、異常ではないのかと、そういう問合せ等はされたでしょうか。

田中委員長 規制委員会には何もないですけれどもね。気象庁の発表しているのは、3kmとか4km以内の立入禁止でしょう。川内原発、50kmまで大きな影響が及ぶようだったら、今、もう鹿児島市内、人がおれないですよ。違いますか。そんなの常識ではないですか。

記者 何が常識なのでしょう。常識ということはないと思います。つまり、どういう状態なのかということ、それは、今、気象庁が3km、4kmの立ち入りを制限しているということをもって、であるから大丈夫だということなのですか。

田中委員長 審査の中身は、姶良カルデラの、要するに爆発的噴火ですよ。VEIのレベルが6、7ぐらいのものを言っているわけで、そういうことについては、今、何も異常が出ているということは聞いていませんし、そんな発表は気象庁もしていませんし、誰も言っていないと思いますよ。

記者 それは承知しています。VEI6ないし7という話ですけれども、これについてはモニタリングをすることになっていますね。九州電力はどういうモニタリングをして、今の状態では問題がないと判断しているのでしょうか。あるいは、モニタリングについての、規制委員会として、こういうモニタリングをすべきだということも決まっていないかと思うのですけれども、それはいかがなのでしょうか。

田中委員長 どういうモニタリングをすべきかということよりは、やはり予兆をできるだけ確実につかめるような方法を考えるべきでしょうということで、今、火山学会の先生方に協力を得て、そういう専門家グループを立ち上げようとはしていますけれども、桜島の噴火が4だとか、3だとかいうことで、今、ばたばたするような状況ではないですよ。

司会 よろしいでしょうか。他に質問する方もいらっしゃるので。

記者 すみません、最後に伺います。では、田中委員長は、桜島に住んでおられる方、あるいは桜島の近辺にいられる鹿児島の方に対しても、全くそういう心配ないと、規制委員会としてそういうふうに言えるということなのでしょうか。

田中委員長 どういう意味。3km、4kmの人は注意してくださいとか、避難してくださいと言うのだから、それは気象庁がそう言っているのだから、そのとおりだと思いますけれども。私がどうこうするわけではないですよ。だけれども、そのことで川内原発からの影響があるなどということはありませんよと明確に申し上げます。

司会 それでは、よろしいですか。

記者 ちょっと待ってください。だってね、何をもって予兆と言えるかということさえもわかっていないわけでしょう。今、例えば、藤井先生にしても、それはコンセンサスとしてそういうものがないということだと思います。

司会 では、これで最後の質問ということでお願いします。

田中委員長 もう答えてもしようがないから、やめましょう。〉

 この田中委員長と記者とのやり取りを見て、いかが思われただろうか。繰り返すが、火山学者の多くは、数十年の間に噴火しないとは科学的に言えない、と疑義を呈している。しかも、再稼働については火山噴火の兆候のモニタリングが前提になっており、本来なら、桜島の異変が起きている今こそ、姶良カルデラの噴火の可能性を、数年、数十年などでパターン分けをして調査、解析して、科学的に姶良カルデラの噴火ははないと現時点で報告する必要がある。それができないのなら一旦川内原発の稼動を停止し、ガイドラインを修正した上で再審査せねばならない。

 ところが、九州電力はそんなモニタリングも分析もしていない。当然だろう。実際は、火山予知連絡会の藤井敏嗣会長はじめ、ほとんどの火山学者が認めているように、火山活動のモニタリング、兆候把握は不可能なのだ。

 にもかかわらず、田中委員長は「3kmとか4km以内の立入禁止でしょう」と現在の桜島の噴火警戒レベルの話と意図的に混同させ、「ばたばたするような状況じゃない」と根拠なく断定。モニタリングについても現実にできるはずがないのに「予兆をできるだけ確実につかめるような方法を考える」などとごまかしているのだ。

 しかも、記者がそういった矛盾を追及しようとすると「もう答えてもしようがないから、やめましょう」などと遮ってしまった。これが、原発の安全性を判定する国家機関の責任者の態度なのか。

 実は、田中委員長は以前にも同様の態度を見せている。昨年9月、原子力規制委が川内原発再稼働にGOを出す判断をした当日、会見で、記者が「専門家が『わからない』といっている火山リスクを規制委が『ない』とするのはおかしい」と質問しているのに、田中委員長は今回と同様の官僚的答弁に終始。業を煮やした記者が角度を変えて質問を繰り返したところ、田中委員長が「答える必要ありますか」と打ち切ってしまったのだ。

 しかも、『報道ステーション』(テレビ朝日系)がこの田中委員長の無責任なセリフを報道すると、原子力規制委が「恣意的に発言を切り取り編集した」と抗議。テレビ朝日の吉田慎一社長が謝罪し、『報ステ』はBPO審議にかけられる事態となった。

 ようするに、原発再稼働のために火山リスクを無視し、非合法な判定をやっていることは田中委員長自身がわかっているのだ。だから、それを追及されるとすぐに逆ギレし、力で報道をつぶそうとする。

 これは原発の是非以前の問題だ。こんな無責任で横暴な「原子力ムラの代弁者」が原発の安全性を判定する立場に居座ったままでは、"フクシマの悲劇"が再び繰り返されることになりかねない。国民は一刻も早い罷免を政府に求めるべきだろう。
(奥村ナオ)