【絵本】元図書館司書が厳選! ゾクゾクする日本の「怖い絵本」厳選5冊

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今回は昨年に引き続き、大人から子どもまで楽しめる「日本の怖い絵本」を新たに5冊ご紹介したいと思います。残り少ない、けれどまだまだ暑い夏、怖い絵本を読んで涼しくなって頂ければ嬉しいです。

【写真】見ただけでゾクゾク…! 迫力がスゴい「怖い絵本」

「かがみ」に「足」。
〜身近にあるけど実は妖しく怖いもの〜

日本を代表する怪談文芸や怪奇幻想文学のプロフェッショナルたちが執筆する岩崎書店の「怪談えほん」シリーズ。昨年から今年にかけて「第2期」が発売されています。

「良質な本物の怪談の世界」を提供してくれるこのシリーズは、子どもはもちろん、大人が読んでもトラウマレベルの絵本ばかり出版されているので、読まれる際は十分に覚悟してお読みくださいね。

まずご紹介したいのは、オシャレ女子には(男子にも)必須のアイテム「かがみ」の怖さを描き出した『かがみのなか』(恩田陸 作/樋口佳絵 絵/東雅夫 編)という絵本です。

 家でも街でも、見ない日はない「かがみ」。本書は「かがみ」と少女をめぐるふしぎなお話が描かれています。

ある少女は、家の中でも学校でも、かがみを見上げます。そこに映るのは、普段は何の変哲もない自分自身です。右手を出せば、鏡の中の自分は左手を出しますし、逆もまた然りです。

だけど、かがみは時々間違ったり、ウソをつくこともあるようで……!? 

皆さん、かがみの中から自分の手がヌッと出てきて、別の世界にひきずられることを想像してみて下さい。とても怖いですよね……。

この作品は、そんなかがみにひそむ恐怖を、まるで「詩」のような見事な文章と、足元がゾワゾワするような気味の悪い少女の絵で見事に描ききっています。

この本を読んだ後、夜中にトイレに起きてかがみを見ると「蝶々を口に入れた女の子が微笑んでいたらどうしよう……」と妄想が爆発すること間違いなしです。

続いてご紹介したいのは、岩井志麻子さんと寺門孝之さんによる、少々官能的なムードが漂う『おんなのしろいあし』という絵本です。

「オバケがいる」と怖がられている古い倉庫に、雨の降る暗い夕方、少年が一人で入ると「女の白い足」の幽霊に出会うのですが……!? というお話です。

登場するのは、本当に「足だけ」の幽霊なのですが、爪には赤いペディキュアが塗られていて、しかも色は白くて、太ももは太く、足首は細くて、はだしでペタペタペタペタ歩く様子が何とも妖艶です。

筆者は「あれ?これはホラーなのよね……?全国の少年を妖しいムードに誘う類の本ではないわよね……?」と思ってしまいました。

少年と「女の白い足の幽霊」の行く末が気になる、美しく、じんわりと怖いラストが待っています……。

「あずきとごうか ひととってくおうか」
〜京極夏彦先生による妖怪えほん〜

2012年に発売された京極夏彦さんと町田尚子さんによる、伝統的な日本家屋の隙間の薄暗がりを描いた『いるの いないの』(岩崎書店)は、談えほんの中でもとても注目を集めました。

実は今年、このお二人が再びタッグを組み、妖怪えほん『あずきとぎ』(京極夏彦 作/町田尚子 絵/東 雅夫 編)を出版されたことはご存知でしょうか? 

京極夏彦先生の「妖怪えほんシリーズ」は全5巻に渡って展開されているのですが、『あずきとぎ』はその中でも格別の、極上の怖さが味わえる絵本です!

主人公は、夏休みの間はおじいちゃんがいる田舎で暮らすことになっている少年です。絵本には山や林や森、虫に川など壮大な自然が描かれています。

不思議なことに川からは「しょきしょきしょき」という変な音が聞こえます……。
おじいちゃんはそれを、「あずきとぎ」という小豆を洗う音をさせるオバケだと言います。

「この音がするとすべってふちに落ちるそうだし、川は危ないから入ってはダメだ」と注意された少年ですが、「おばけなんていないでしょ」と軽く流して、再び川に行ってしまいます……!

ラストは、大人でも声を失うほどの恐怖が待っています。

「あずきとぎは実際は姿は見せず、あずきを研ぐ音だけが聞こえる妖怪だ」とも言われているのですが、雄大な自然の中で姿を全く見せないおばけに、ここまで驚かされるとは思わなかったです。

『いるの いないの』以上の衝撃を味わいたい方、おススメです!

「のっぺらぼう」に「かっぱ」
〜親子で楽しめるちょっと優しいおばけ絵本〜

ラストは、お母さんと子どもが一緒に楽しめる「怖いけれど、どこかホッとする」おばけの絵本を2つ紹介します。

まずご紹介したいのは、顔に目や鼻・口がないと言われる『のっぺらぼう』(杉山亮 作/軽部武宏 絵/ポプラ社)の絵本です。

母親に山に薪をとりに行くように言われた男の子。「山は暗くなると怖いものが出るから、すぐに帰ってくるように」言われるのですが、そこはやはり子どもです……。

飛び出したうさぎを追いかけ始めているうちに、辺りはすっかり暗くなり、来たことのない山奥に迷い込んでしまいます。

男の子はあわてて山をおりる途中で、赤ん坊を背負った母親や、提灯を持ったさむらい、おしょうさんに出会って助けを求めるのですが、彼らの顔をよく見ると……!?

目も鼻もない(※なぜか口だけある)のっぺらぼうに追いかけられ「彼らの仲間になりなよ!」とまで誘われる男の子の恐怖はとんでもないものだったはず。

しかしラストは、心配して待っていた母親の優しさがあふれる終わり方をします。

また、『のっぺらぼう』と同じ杉山亮さんが作者の、日本のおばけ話絵本シリーズの第三弾『かっぱ』(杉山亮 作/軽部武宏 絵/ポプラ社)。

こちらもかっぱが人間に化けて、お父さんと娘を脅かすお話なので、怖いのですが、最後は心からホッとできます。

つりをしていた父親に化けて、女の子が待つ家に帰宅するかっぱ……。

女の子をだまして、いろりばたに座り込み、父親の好物である団子ではなく「きゅうり」をばくばく食べる様子は、すさまじい威圧感があります!

しかしラストは、親子の愛情と、かっぱと人間の絆が感じられるハッピーエンドを迎えるので、「怖い話」を読んでいたはずなのに「良い話だな〜(涙)」と感じることができ、大人も子どももホッとして眠りにつくことができます。


いかがでしたか?

「怖い話」というのは、じっくり読んでみると「恐怖」だけではなく、何かしら危険を教える教訓があったり、何があっても臨機応変に対応できるよう、冷静な心を育む教えが描かれていたり、意外と深いお話なのだな〜ということがわかります。

ハラハラドキドキできるのはもちろん、親子で一緒に読んで、心の豊かさや、物事に対する理解力を深めてみるのも良いかもしれません。