ゲームカートリッジは20世紀の文化遺産か:「ATARI GAME OVER」への道

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編集部より:この連載は1990年代以降ゲーム業界を渡り歩いた黒川文雄さんが往年の名ゲームメーカー、ATARIのゲームビジネスを検証するドキュメンタリー「ATARI GAME OVER」の日本語化に奔走する物語です。懐かしのゲーム機やゲームソフトだけでなく、アタリの創業者(正確には共同創業者)であるノーラン・ブッシュネル氏に突撃取材を敢行するなど、この連載だけでしか読めない内容を10回に分けてお届けします。今回は第2回。第1回はこちら。

アタリが開発製造し、廃棄した『E.T.』のゲームカートリッジ。その発掘調査がアメリカではそれなりのニュースになりました。いかんせんこちら日本の場合、海外発信のニュースというものは続報が入らない限り、その後の動向は一向に分かりませんでした。

続報が入ったのは、半年ほど経った2013年5月28日のことです。ニューメキシコ州のアラモゴード市委員会が、映像制作会社フューエルエンタテイメントに、廃棄物処理場での『E.T.』ゲームカートリッジ(というかゴミの)発掘許諾を与えたのです。ですがその後、発掘には環境局の許諾も必要なことから地質調査なども実施するなど二転三転しました。

ようやく発掘作業が実施できることが明らかになったのは、約1年後の2014年4月26日のことです。このニュースを読んで最初に思ったのは「これは面白い。面白すぎる......」ということです。

ゴミ捨て場から、20世紀を代表するお宝に匹敵する文化遺産が出土するかもしれない。

それが文化遺産か、ゴミかという判断は分かれるところですが、個人的に『E.T.』のゲームカートリッジは現代社会の遺跡(ゴミ処理場)から発掘した遺物や出土品であると思います。

あるかも? 出るかも? 発掘作業では最大60メートル以上までの深さを堀り進めます。1993年ごろに番組化された「徳川埋蔵金」に近いものかもしれません。もしくは現代版「トロイの遺跡」です。

ちなみに今回の「ATARI GAME OVER」の監督はザック・ペン。彼は『アベンジャーズ』や『ファンタスティック4』などの脚本家として知られていますが、相当なゲームマニアです(製作プロデューサーは「シュガーマン 奇跡に愛された男」のサイモン・シンです)。

さしずめ、ザック・ペンはアメリカ版・糸井さんか、現代に蘇ったシュリーマンと言ったところでしょうか。さあ、こんな面白いエピソード、それもドキュメンタリー作品を放っておくわけにはいきません。

早速、アメリカではXbo360でデマンド放送することになります。そんな情報を僕自身のFacebookでシェアしたところ、1通のメッセージを受け取りました。「黒川さんの探している『ATARI GAME OVER』権利購入できるよ〜」という軽いメールです。

それは僕が映画配給会社ギャガ(当時はギャガコミュニケーションズ)時代に苦楽を共にし、現在は日活(にっかつ)で映画プロデューサーとして辣腕を振るう千葉善紀氏からのメッセージでした。海外の映像会社との取引を頻繁に行っている彼のもとに届いたコンテンツセールス・カタログデータのなかに、なんと「ATARI GAME OVER」のDVD化権があることを僕に教えてくれました。

さすが、わが友! 僕はすぐにメール返信しました。「日本での販売権利買います!」

すると、千葉氏からは「そんなには権利料が高くないみたいだからウチ(日活)と黒川さんで買って、一緒に発売しよう」というものでした。断る理由はありません。

いよいよ、日本における「ATARI GAME OVER」のパッケージング作業(商品化)が始まったのです。

筆者より:「ATARI GAME OVER」特別上映会を9月5日に開催します。参加者募集中!

黒川文雄(くろかわ・ふみお):1960年、東京都生まれ。音楽ビジネスやギャガにて映画・映像ビジネスを経て、セガ、デジキューブ、コナミデジタルエンタテインメントにてゲームソフトビジネス、デックス、NHNJapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどに携わり、エンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。顧問多数。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。株式会社ジェミニエンタテインメント 代表取締役「ANA747 FOREVER」「ATARI GAMEOVER」(映像作品)、「アルテイル」「円環のパンデミカ」他コンテンツプロデュース作多数。