■俳人・堀本裕樹 × スポルティーバ編集部
第1回 スポルティーバ句会開催!
スポーツ俳句への誘い(3)

「第1回スポルティーバ句会」もたけなわ。出句、選句、講評していくことで俳句が徐々に身近なものと感じ始めている参加者たち。主宰の俳人・堀本裕樹氏の発言や表情からも、スポーツと俳句のマッチングの妙に手応えを感じていることが窺える。
 この時点で、今回のダークホース、アスリート枠(?)として参加しているじゅんいちダビッドソン氏の俳句がまだ講評されていない。だが、ここからが真骨頂だった。独自の目線による俳句からは、思いがけない深みが感じられた。

 
『夏空がガリガリ君を攻めてくる』(作者・じゅんいちダビッドソン)

●堀本評
 炎天がガリガリ君を攻めるということは、これは太陽がガリガリ君を溶かしにかかっているんじゃないかと思いました。多分、練習か試合が終わったあとにガリガリ君を食べている状況で、太陽が照りつけるため早く食べないと溶けていってしまう。それを『攻めてくる』という表現にした。また『夏空が』の『が』と『ガリガリ君』など、濁音が多くて、なにか暑さに満ち満ちているような感じがしますね。言葉の響きが非常におもしろい。

●上杉評
 『夏空』と『ガリガリ君』というイメージと『攻めてくる』という表現が強烈ですね。ガリガリ君を擬人化しているようで、私には夏というものが非常に強く感じられました。

●作者(じゅんいち)評
『ガリガリ君』はもうそろそろ季語になっていいと思うんですよね(笑)。堀本さんがおっしゃるように、夏の日にガリガリ君を食っていると、直射日光を浴びて溶け方が尋常じゃない。結局、食べ終わる前にバーからスルッと抜けてベシャッと地面に落ちてしまう(笑)。これはもう攻撃やろうと。その情景を思い出して作った俳句です。

 
『ゴーグルの日焼けの跡でほぼパンダ』(作者・じゅんいちダビッドソン)

●堀本評
 単純に『パンダ顔』ではなく『ほぼ』という表現がおもしろいですね。

●市橋評
 情景が思い浮かぶのと、表現がいちいち可愛いなと思って選んでみました。

●杉山評
『ほぼパンダ』という表現が今っぽいというか、言いまわしとしてカラフルでポップだなと。俳句の中でこういう表現もありなんだと思ったし、すごく身近に感じた俳句でした。またゴーグルの日焼けが、カッコイイのか、カッコ悪いのか微妙なところもいいですね。

●作者(じゅんいち)評
これは経験談で、水泳をやっていると、やっぱりゴーグル焼けしてパンダみたいになっちゃうんですよ。ただ厳密にいうとパンダとは黒と白が逆転する。だから『ほぼ』を付けたんです。さらに言うと水球はゴーグルをしないので、パンダのような焼け方はしなくて、帽子をかぶるのでアゴ紐焼けをするんです。けど、それを俳句にしちゃうとあまりにマニアック過ぎて伝わらないだろうって(笑)。


『耳の中鼻の中まで汗をかく』(作者・じゅんいちダビッドソン)

●堀本評
 とにかく暑さが伝わってきますね。練習の最中なのか後なのか、あるいは試合中なのか、スポーツに置き換えるといろいろな情景が見えてきます。また『耳の中鼻の中』というように『中』を二つ使い、それがリフレインとなって一句の中で良いリズムになって響いている。汗が流れている情景にリズムを感じさせます。汗の句としてはなかなか良いものだと思いました。

●高森評
 耳の中に汗をかいた経験は結構あるんですけど、鼻の中は微妙にあるかないか。まあ、それぐらい暑いんだなってことがストレートに伝わってきました。

●作者(じゅんいち)評
 ここ数日むちゃくちゃ暑いじゃないですか。そこでパッと思い浮かんだのがこの句なんです。鼻の中まで汗をかくのは行き過ぎかもしれないけど、それぐらい暑い。最初は『内臓まで汗をかく』みたいなことを句にしようかと思ったんですが、それだとちょっと発想が飛躍し過ぎだなということで、『鼻の中』で収まりました。

 以上がじゅんいち氏の作品となるが、無回転ではなくしっかりと回転が掛かっているところに意気込みが感じられる。若干スポーツとは離れている部分もあるが、そこはやっぱり芸人としての血が騒ぐのだろう。

その他にも発想豊かなスポーツ俳句が数々選句された。『炎天のポカリスウェットや星三つ』(作者・高森勇旗)はじゅんいち氏が特選に。

●じゅんいち評
(本田圭佑のモノマネで)そうですね。非常にあの、自分の経験として、まあ、まさによくわかっているなというのが第一なんです。ただ、アクエリアスのCMをやっていた僕がポカリを選んだほうがおもしろいんじゃないかと。ある意味、あえて特選させてもらいました。

●作者(高森)評
 夏といえばポカリスエットのイメージがあって絶対にこれを使ってみたかったんです。さらに『や』という切字を使うことで、俳句っぽくできないかなって。星三つは、それぐらい美味いってことですよね。あと、よくよく考えてみると『スエット』には『汗』という意味がありますから、そこにも上手く掛かったのかなと。


『ライバルの汗と我が汗光り合ふ』(作者・堀本裕樹)

●市橋評
 ライバルと競い合っている様子が、臨場感とともにすごくキレイに感じられたので選びました。

●杉山評
 同じようなシーンを考えたんですけど、相手の汗が飛び散ってくるような状況は、個人的に嫌だなと思ってしまったんです。けれど、それを美しくまとめてきているところに感心しました。

●作者(堀本)評
 これは私の句になるんですけど、陸上をやっていたとき、ライバルと並んだときパッと横を見ると相手の汗の具合や息遣いなどを感じたんです。自分の汗とライバルの汗が、接近することで競い合いながら光り合っているような情景を描きたくて、この句を作りました。

 その後も出句されたすべての俳句に対し講評が行なわれた。俳句というと、どうしても作る方に意識を捉われがちだが、こうやって句会をやってみると選句のセンスや講評のコメントも重要で、そこからどんどん世界が広がっていくことに気付かされる。
 次回、最終回では、この句会を体験してみての感想を参加者たちに語ってもらう。やる前と後では、どれほど俳句に対する意識は変わっているのか......。
(つづく)

【profile】
堀本裕樹(ほりもと・ゆうき)
「いるか句会」「たんぽぽ句会」主宰。創作の傍ら、老若男女幅広い層へ俳句の豊かさや楽しさを伝えることをテーマに活動中。近著は又吉直樹氏との共著『芸人と俳人』(集英社)

石塚 隆 ●文 text by Ishizuka Takashi