座るな、立ち上がれ! wavebreakmedia/PIXTA(ピクスタ)

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 デスクワークに追われることの多い現代人。肩こり、腰痛、運動不足など、座りっぱなしのデメリットは以前から指摘されている。最新の医学研究のなかには、「座り続けること自体が人間の寿命を縮める可能性がある」ことまで示す論文が発表されるほどだ。

 当サイトでも、これまで次のような記事を紹介してきた。
●座る時間が長いと寿命が縮む?「座っている時間」と「寿命」の関係が明らかに
●長時間のデスクワークは危険? 女性の"座り過ぎ"と乳がんリスクの関連性が明らかに
●座りっぱなしのデスクワーカーに朗報! 1時間毎に2分歩けば"長生き率"が33%UP!

 一方で、「デスクワークは健康によくないが、立ち仕事でも問題が生じるかもしれない」、そんな研究内容が『Human Factors』(オンライン版・6月5日)に掲載された、スイス連邦工科大学(ETH)チューリヒ校のMaria-Gabriela Garcia氏らによると、「1日5時間立っていると慢性的で強い下肢筋肉の疲労につながり、長期的な腰痛・筋骨格障害のリスクが高まる可能性がある」という。

"動的な動き"で慢性疲労が軽減される?

 Garcia氏らによれば、全世界の労働者のほぼ半数は1日の4分の3以上"立っている"。今回の研究の対象者は、男性14人、女性12人(半数が18〜30歳、50〜65歳)。神経障害や筋骨格障害の病歴はなく、試験前日の激しい運動は控えてもらった。

 製造工場のシフトを再現し、対象者全員に軽作業を行ってもらった。作業台で5時間立ち、複数回の5分間の休憩と30分の昼食休憩を設けた。

 姿勢の安定と脚筋の応力(「筋収縮力」として定量)をモニターし、対象者に不快感を報告してもらったところ、年齢・性別にかかわらず、作業日の終了時に著しい疲労を感じていたという。また、実際に緊張を感じているかどうかにかかわらず、立ち時間終了後30分以上、筋疲労の明らかな徴候がみられた。

 今回の研究は小規模でごく限られた期間であるため、長時間の立ち仕事が健康を害することは証明していない。Garcia氏は、「定期的なストレッチ運動や決まった休憩、仕事のローテーション、より動的な動作を取り入れることで、慢性疲労の影響は軽減される可能性がある」という。

ウエストが気になるなら「座るな、立ち上がれ」!

 最新の研究では、「座って過ごす時間が長いと心血管系に悪影響をおよぼす」ことも指摘されている。「たとえ定期的に運動をしている人でも、座って過ごす時間が長いと心血管系に悪影響をおよぼす」という報告が、『European Heart Journal』(オンライン版・7月30日)に掲載された。

 座る時間が長いと血糖値や脂質値が上昇し、体重増加、心疾患の発症につながる。だが、1日2時間、座位から立位に替えることで、これらの指標が改善し、ウエストも細くなるという。

 研究を主導した豪クイーンズランド大学のGenevieve Healy 氏は「座る替わりに立って過ごすことが、心血管代謝に好影響をおよぼす。座るよりも立つ時間を長くすることで、血糖値やコレステロール値は改善し、さらに、座る時間をウォーキングに替えることでウエスト周囲長やBMIの改善も図れる」と述べている。

 同氏らは、オーストラリア糖尿病・肥満・ライフスタイル研究(Australian Diabetes,Obesity and Lifestyle Study)に参加した男女782人(36〜80歳)に活動量計を提供。「座位・臥位・立位・歩行・走る」に費やす時間を追跡した。

 また、対象者には、血液検査、血圧・ウエスト周囲長・身長・体重(BMI)測定を実施。活動量計は24時間、7日間にわたって装着された。

 その結果、1日2時間を座位から立位に替えると、空腹時血糖値が2%、トリグリセライド(中性脂肪)が11%、それぞれ有意に低下。立っている時間が長いほど、コレステロール値の改善に関連していた。

 さらに、1日2時間を座位からウォーキングやランニングに替えることで、BMIが11%低下し、ウエスト周囲長が7.5cm減少することもわかった。ウォーキングに替えた場合には、さらに食後2時間血糖値の11%低下、トリグリセライド値の14%低下に関連していた。

 「自身の心臓の健康とウエスト周囲長低減のためにも、"座るな、立ち上がれ"」と、同氏は訴えている。

"運動"よりも"立つ"ことが重要

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓病学教授のGregg Fonarow氏は、「これまで多くの研究から、座っている時間の長さが糖尿病や心疾患、若年死亡に関連することが示されている」と指摘。座っている時間が長い人では、たとえ定期的に運動していても早期死亡リスクが高い。だが、最も健康のリスクが高いのは「まったく運動しない人」だという。

 付随論説を執筆した米メイヨークリニック(ミネソタ州)の心臓専門医であるFrancisco Lopez-Jimenez氏は、「これまで社会は "運動"に注意を払いすぎてきた。座っている時間を長くとりすぎないこと、"立つ"という低強度の運動の重要性にも留意すべきだ」と述べている。

 もちろん、運動が習慣化できるに越したことはないが、1日2時間程度の「立つ」習慣は、あなたの健康を左右しそうだ。
(文=編集部)