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●天文学者と揉めたMacのコードネーム
先日、Androidの最新バージョン、「Android 6.0 Marshmallow」が発表された。Androidはバージョン1.5から、Mac向けのOS Xもバージョン10.3頃から、バージョン名にコードネームが併記されるようになっている。しかしiOSではこうしたコードネームが付かず、単純にバージョン名だけで表示されている。iOSにもコードネームはないのだろうか?

○コードネームの歴史

パソコンに限った話ではないが、開発者が正規の製品名が決まる前に勝手に名前をつけるというのは昔から行われてきた。これは単に愛称というだけでなく、製造するものの正体を掴ませないようにするという意味もあった。こうしたコードネームをつけていたところ、そちらの名前が正式な名前になってしまった、という例も多くあり、たとえば戦車「Tank」。これは世界初の戦車を開発したイギリス軍によって、秘匿名として水タンクを意味する「Tank」と呼ばれていたことに由来する。

パソコン関連でも非常に多くのコードネームが開発中に使われてきた。有名どころであればWindows 95「Chicago」やWindows NT 3.5「Daytona」、Windows NT 4.0「Cairo」(これは結局完成せずに消えてしまったが……)、Mac OSのバージョン8、9になるはずだった「Copland」に「Gershwin」、Intelの「Northwood」「Prescott」「Ivy Bridge」「Haswell」といったCPUのコードネームなど、枚挙にいとまがない。

こうしたコードネームは一般に商標を犯さないよう、地名などの一般名詞から付けられるのが常だ。たとえば前述のWindowsやIntelのCPUは地名だし、旧Mac OSの場合は音楽家の名前から取られている。バージョン10.8までのOS Xならネコ科の猛獣、10.9からはアメリカ、特にApple本社のあるカリフォルニア州の地名を使っている。

余談だが、コードネームが裁判騒ぎになってしまったこともある。AppleがPower Macintosh 7100/66のコードネームを「Carl Segan」としたところ、著名な天文学者だったカール・セーガン博士からクレームがついた。

そこでApple側はコードネームを「BHA」としたのだが、これが「Butt Head Astronomer」(頭の固い天文学者)の頭文字だと聞いてセーガン博士が激昂、訴訟沙汰になってしまった。紆余曲折を経て最終的に両者は和解するのだが、最後についたコードネームが「LaW」。これは「俺たちゃ悪くないのに、弁護士が勝手に和解しやがって」という開発チームの怒りから「Lawyers are Wimp」(法律家どもは弱虫だ)の頭文字だという。

閑話休題。とにかくコンピュータ開発史とコードネームが切っても切れない関係だということはおわかりいただけただろうか。

Androidのコードネームはお菓子の名前
Androidのコードネームは「お菓子」

さてAndroidは、バージョン1.5のころからコードネームを公開するようになった。バージョン1.0、1.1は非公開のままだ。バージョン1.5は「Cupcake」(カップケーキ)となっており、以降「Donut」(ドーナツ)、「Eclair」(エクレア)、「Froyo」(フローズンヨーグルト)……と必ず「アルファベット順」で「お菓子」縛りのコードネームがついている。

ちなみに1.0は「Apple Pie」、1.1は「Banana Bread」というのがもっぱらの噂だ。

コードネームの頭文字がアルファベット順になっているので、6.0の次は「N」で始まるお菓子になることが容易に予想される。「ナタデココ」や「ヌガー」、あるいは「南部煎餅」あたりが入ってくるのではなかろうか。

iOSのコードネームは?
iOSのコードネームは?

一方のiOSはというと、きちんとコードネームもあるし、法則性もある。ただし、Appleはこれまで公式にiOSのコードネームを明かしたことはない。このため、これから紹介するのはあくまで「噂」レベルのものであるとご理解いただきたい。

ご覧の通り、iOSのコードネームは地名、それもスキー場に関係した地名が使われている。理由は定かではないが、iOSの開発チームにスキー好きでもいたのだろう。最初は米国内、できるだけカリフォルニア州に近いところが選ばれていたが、最近は海外のスキー場も選ばれている。「Shiga」「Naeba」などが採用される日が楽しみだ。

コードネームは普段一般的に目にするものではないが、知っているとちょっと事情通になったような気がする、業界ニュースのスパイスのような存在だ。開発中製品のニュース記事内に見慣れない単語が使われていたら、どんな経緯でそのコードネームがついたのか想いを馳せてみるのもいいだろう。

(海老原昭)