『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』©2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 ©諫山創/講談社

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斎藤工が主演した『虎影』(14)などの映画監督で、特殊メイクアップや特殊造型のスペシャリストとしても知られる鬼才・西村喜廣。

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現在大ヒット公開中の『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』で特殊造型プロデューサーとして活躍し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015では審査員を務めた注目の才能が、次世代の映像クリエイターたちの作品を観て思うこと、知られざる今日までの道のり、日本の特撮の現在と未来を熱く語った!!

「今年の“ゆうばり”のオフシアター・コンペティション部門の作品を観てまず思ったのは、ラブストーリーが多いな〜ということでした。

もちろんその中には楽しい作品もあったけれど、これってファンタなの?

という疑問も湧いたし、自分の半径何メートルの世界で“俺はモテない”とか“彼女にフラれた”みたいなことを描くものが目立ったから、それがちょっと残念で。

みんな技術もあるし、センスもいいんだけど、どうして日本や地球が爆発するような、そこまでのインパクトを感じられる作品がないのが、正直不満だったんですよね」

観る側の想像を超えた、荒唐無稽な作品がなぜ出てこないのか? その理由を西村監督は「怒られたくないから。じゃないですか?」と分析する。

「“何、バカなことをやっているんだ!”って言われるのが怖いんじゃないかな。

でも、みんなから怒られるのってすごく大事なことだと思うし、中にはその振り切ったものを“面白い”と思ってくれる人もいたりするのが常だから、やればいいんですよ。

なのに、異端児になりたくないのか、ヘンに上手くまとめようしているのが見える。それがすごくイヤでしたね」

西村監督がそこに不満を感じるのは、自分はやりたいと思ったこと、映像で見せたいと思ったことを周りの目など気にせず、全力で形にしてきたという自負があるからだ。

「いちばん最初の映像作品は、中一か中二のときにレイ・ハリーハウゼン(『恐竜100万年』『シンドバッド虎の目大冒険』などで知られるハリウッドの伝説の特撮監督)の影響を受けて、8ミリフィルムで撮った僕と骸骨兵士が戦っているもの。

自分が戦っているところを最初に撮って、その映像に後から骸骨の人形をひとコマずつ合成していった僕の原点です。

大学の1年のときには、当時1学年下の後輩で現在は参議院議員の蓮舫さんの主演でホラー映画を撮って“ぴあフィルムフェスティバル(PFF)”にも応募したんだけど、落選しました。

その後も5回ぐらい出したものの落とされ続けたから、俺は映画監督にはなれないんだな? と思った時期もありましたよ」

だが、そこで諦めないところが西村監督だ。


「『部屋 THE ROOM』(94)のときにカメラを貸したのがきっかけで仲よくなった園子温は、『俺は園子温だ!』(85)でPFFのグランプリを受賞して『自転車吐息』(90)で劇場監督デビューした。

でも、自分が作る映画はPFF向きじゃないと確信したから、僕はぴあとはまったく違うところから映画の世界を目指そうと思って。

中学生のころに公開された『狼男アメリカン』(81)、『遊星からの物体X』(82)がきっかけでブームになった特殊メイクにもハマっていたし、自分が作る映画には特殊メイクが必要だったから独学で勉強をしたんですけど、子温の映画でずっと特殊メイクをやっていた事もあって、08年に『東京残酷警察』で劇場監督デビューすることができたんです」

そこから一気に非凡なる才能を開花させた西村監督は、監督、特殊メイク&特殊造型などのアーティストとしてマルチに活躍。

いまでは日本映画界になくてはならない存在となり、この夏の超大作『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』にも樋口真嗣監督から直々に指名されて参加した。

そのポジションは、自らが命名した「特殊造型プロデューサー」。いったいどんな仕事なのか?

「“進撃”は前後篇からなる大作だし、あの世界観を創造するための造型物が膨大に必要になるから、ひとつの工房ではやりきれないんですよ。

これまでの特撮モノの大作でひとつの工房でやっていたように見えたものも、実はそこから他の工房に振り分けていたんですね。

そこで僕の出番というか、僕はいろいろな工房とのつき合いがあるし、どの工房の誰がどんな作業を得意としているのかを知っているから、仕事をその適材適所の人たちに半ば強引に振り分けていった。そうすることで、より効率よく、よりクオリティの高いものを作ることができたと思っています」

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』では、スーツアクターやクリーチャー、ミニチュアを使った日本映画界伝統のアナログの特撮がまんまと成功。

映画を観た多くの人が、その重量級のスペクタクルに圧倒されたに違いない。

「別に実存主義ではないです(笑)。フルCGでもいいんです。いいものができるなら。でも、“進撃”の場合はそれなりの予算があったし、樋口監督や尾上特撮監督の狙いもあった。ミニチュアを作って、実写で撮ったものに後からCGを合成していった方が絶対にいいという結論に達して僕も賛同しました」

それはなぜなのか? その理由にこそ、日本の特撮の現状と進むべき未来のヒントが隠されている。

「例えば、『ゴジラ』を日本はフルCGで作ることは難しいんですよ。

なぜなら、その環境が整ってないから。ゴジラをリアルなアニメーションで描こうと思っても経験値が少ない。

ハリウッドなら火炎放射を吐くときのゴジラの喉の震えなんかも、過去の作品をアレンジしたり、その経験で表現できるけれど、日本にはそういった積み重ねてきたものが少ないんです。

そこは、日本が誇る昔ながらの特撮が、長年受け継がれてきた着ぐるみや造型物、操演などの確かな技術によって成り立っているのと同じじゃないですかね」

だったら、フルCGで創造できる人材を育てればいいんじゃないか? そういう声も当然聞こえてくるが、そんなに簡単なことでもないらしい。

「日本には育てる環境と予算がないんです。

だから、CGの技術に関しては10年後も20年後も、ハリウッド映画に追いつくことは難しいでしょうね。でも、例えば特殊メイクに使用するシリコン素材なんかもネットで安価で買えるようになったから、すごくやりやすい。レベルも上がってきていますよね」

要はこれまで培ってきた技術をちゃんと利用してさらに磨きをかけた方が得策だし、世界と勝負するならそこを強化した方が早道ということなのだろう。

そして、その技術を最大限に発揮するには、いままでに誰も観たことのない圧倒的なシチュエーションを作り出す必要がある。

“ゆうばり”オフシアター・コンペティションの作品に対する冒頭の西村監督の言葉は、そこを期待しているからこそ、思わず出たものなのかもしれない。

「人を驚かすのが好きなんです」

西村監督が何気につぶやいたそのシンプルな言葉が、すべての物作りの源。

2016年夏公開予定の新『ゴジラ』では脚本・総監督の庵野秀明、監督・特技監督の樋口真嗣とタッグを組む異能が、これからも日本の特撮エンターテインメントをどんどん面白く進化させてくれるはずだ。