明日22日に開幕する「世界陸上北京」。今大会もメインキャスターを織田裕二と中井美穂が務め、TBS系列で計64時間放送予定だ。そこで大会の見どころ、注目選手、織田裕二キャスターの陸上愛について、実況を担当するTBS初田啓介アナウンサー、土井敏之アナウンサーに話を聞いた。(前編はこちら)


日本リレーの伝統芸「アンダーハンドパス」で日本記録を!


─── 来年のリオ五輪に向けて、若手で特に注目しておきたい選手というと?

土井 それは16歳のサニブラウン選手しかいないでしょう。男子200m、男子4×100mリレー出場予定の高校2年生!

初田 日本の若手、というとサニブラウン選手ぐらいしかいません。高3で出場、というのは今までもありましたけども、高校2年生での世界陸上出場はちょっと記憶にないですね。

土井 男子200m予選は大会4日目(8月25日)。サニブラウン選手以外でもこの種目は注目です。

初田 男子200mは今年、藤光謙司選手が20秒13、高瀬慧選手も20秒14。世界ランクでもだいぶ上のほうで数字を残しています。3人とも予選を突破する可能性は存分にありますね。

土井 いやー、準決、決勝に残ったらスゴイことですよ。

初田 高瀬選手は今や短距離陣のリーダー的な役回りになっているし、藤光選手に関しては、5月の世界リレー大会で銅メダルを取ったときのメンバーだし。実績を重ねてきたその2人の選手に、高校2年生が加わる。

土井 大会8日目(8月29日)のリレーも楽しみですね。サニブラウン選手がアンカー予定。いやー、面白いですよー、これ。

初田 5月の世界リレーでも、日本はバトンワークの良さで銅メダルを取りましたから。1走:大瀬戸一馬、2走:藤光謙司、3走:桐生祥秀、4走谷口耕太郎。

土井 この時だって、山縣亮太選手がいなくて厳しい、と言われた中でしっかり結果を残しました。

初田 日本リレーの底力が上がっているんですよね。2001年から取り組み始めたアンダーハンドパスの追求も、もうかれこれ15年。メンバーはその都度変わるわけですけれども、日本短距離陣としての軸というものがハッキリとあるので、ある意味で伝統芸みたいな感じになってきています。2007年、世界陸上大阪のときの38秒03が日本記録。今回は是非、この記録を破ってもらいたいですね。

土井 今回のメインスタジアムである「鳥の巣」での4×100といえば、2008年の北京五輪で銅メダルを取り、アンカーの朝原宣治さんがバトンを空高く投げたシーンを思い起こします。

初田 塚原直貴、末続慎吾、高平慎士、朝原宣治。あの五輪は、短距離陣の苦戦が続いた中で最後の最後にメダルを取った。解説の高野進先生がものすごく喜んでいたことも思い出します。

土井 あの名場面が生まれた場所で、もう一回日本が戦えるという面白さ。今回高校生が加わり、日本リレーの歴史が重なっていくのはなかなか興味深いものがありますね。


焼きそばパワーで決勝を目指す女子やり投げ「シェフ海老原」


─── フィールド競技での注目といえば?

土井 やり投げは女子も男子も注目ですよね。男子は決勝が大会5日目(8月26日)、女子は最終日(8月30日)に決勝です。

初田 やり投げはフィールド競技の中では、日本選手の決勝進出が最も期待できます。だからやっぱり、メダルを誰かが取ることの大切さ、ですよ。

土井 次につながるんですよね。

初田 2009年のベルリン大会で村上幸史選手が銅メダルを取ったことで、「日本人でもここまでいけるんだ」「自分でも83〜85m投げられる」という空気ができましたから。その流れが女子のエビちゃん(海老原有希選手)にも伝搬して。

土井 エビちゃんは前回、あと数十cmの差で決勝12人に入れなかったんですよね。女子やり投げで日本人が決勝に残るなんて、かなりワクワクします。そんなエビちゃんは、好物が焼きそば。

初田 前回大会で、TBSがエビちゃんにカップ焼きそばを差し入れしたんですよ。そしたら喜んで食べてくださったんですけども、数十cm届かなかった。ちょっと差し入れが足りなかったんじゃないかという反省点もありました。そして村上幸史選手は妹分の海老原選手に焼きそばを作ってもらう。「シェフ海老原」って呼んでいますから。まあ、シェフって言ったって、お湯入れて作るだけなんだけど(笑)。

土井 遠征中はカップ焼きそばですけども、本当はスーパーで売っている3袋入りの奴を、具をあまり入れずに麺を味わうのが好きなんだそうです。

初田 男子は村上選手が今回出られないのはとても残念ですけど、新井涼平選手が去年秋に自己ベストを大きく更新して86m60を出した。今年の春先、南アフリカに練習に行って食あたりになっちゃって、南アフリカにいる間中ずっと体重が落ち、帰りの飛行機に乗ったらようやく体調が戻ってきたという。その体調不良に加えて脇腹故障もあり、だいぶ心配されましたけども、その分、体を作り直したのがかえって良かったみたいです。世界トップは90mを投げる選手がゴロゴロいる中で、なんとか87mを目指して、決勝に残って欲しいですね。


世界記録更新に注目が集まる、棒高跳びと走り高跳び


初田 フィールド競技では、3日目(8月24日)の男子棒高跳び決勝も注目です。今まで、棒高跳びの世界記録というと、セルゲイ・ブブカさん(ウクライナ)の6m14だった。ところがルノー・ラビレニ選手(フランス)が去年の2月、室内で6m16を跳んだんです。以前は屋外と室内で記録を分けていて、ブブカさんが屋外で6m14、室内で6m15という2通りの世界記録を持っていた。ただ、今は室内・屋外の記録が統一されたので、ラビレニ選手の6m16が正真正銘の世界トップ記録です。ただ、ラビレニ選手の屋外ベストは6m5。屋外でもブブカの記録(6m14)を上回りたいという目標が間違いなくあると思います。

土井 ラビレニ選手は家の庭に棒高跳びのピットがあって、毎日練習しているそうです。ちなみに、バイクにも毎日乗っているみたいで。

初田 日本勢も荻田大樹選手が決勝に残れる可能性だってあるでしょうし、山本聖途選手もいます。山本選手は前回大会で私、注目!とお伝えしましたが、今回も引き続き注目いただければと思っています。そして跳躍系では男子ハイジャンプも面白い。バーシム選手(カタール)とボンダレンコ選手(ウクライナ)、この二人がいつ世界記録(2m45cm)を出してもおかしくないというレベルで競い合っているんです。

土井 でも今、バーシム選手がちょっと調子悪いんですよね。

初田 そんな中、日本勢は3人出場します。中でも期待は戸邉直人選手。2m31cmという記録を去年打ち立て、今年も2m28を跳んでいます。決勝に残ってくれるといいですよねぇ。

土井 最終日(8月30日)が盛り上がります。

初田 決勝に残ったら一大事です。でも今、本当に、日本のハイジャンプは層が厚いんですよ。標準記録を超えた選手が3人もいる。戸邉選手は私が観に行ったロンドンのダイヤモンドリーグにも出場していましたけども、海外での試合を当たり前のようにこなしていました。バーシム選手にも萎縮することなく、本当の意味でトップ選手になってきた感じがします。そして付け加えるならば、彼の母校である千葉県の専修大学松戸高校がこの夏、ついに悲願の甲子園初出場!

土井 その話題に来ますか(笑)

初田 人口40万人以上の市町村で、甲子園に出場したことのないたった3つの都市のうちのひとつ、それが松戸市でした。その松戸市から遂に甲子園。去年は千葉県大会の決勝で涙したわけですから、今年の松戸市、そして専大松戸パワーたるや。私は今回、走り高跳びの実況を担当しませんが、もしするならば、絶対にどこかで専大松戸の名前を出します。松戸市民40万人が注目してくれるはずです。

土井 担当は新タ悦男アナウンサーです。言うかどうか、楽しみですねぇ(笑)。

織田裕二キャスターの情熱、そしてライブ感を届けたい


─── 今回、TBSで世界陸上を中継するようになってから10大会目ということですが、この10大会の間で、大きく変わったことは何でしょうか?


初田 とにかく、効率化が進みましたね。放送で使う「スタートリスト」という資料があるんですが、以前はアナウンサーがシールを張り替えたり、手書きで作っていましたから。私も人のことは言えませんが、特徴のある文字が読みにくかったりして難儀なんです。特に数字が読めないと致命傷ですから。7なのか1なのか、どっちや!と。

土井 今は最低限の情報が打ちこんだものを用意してもらい、そこにアナウンサーごとに情報を書き加えれば良くなったので、資料づくりの部分ではかなり労力が軽減されました。

初田 まあそれもあってか、以前はアナウンサー十何人で臨んだ大会もありましたが、今回は6人。この人数で全競技を回す、っていうのも相当無茶なんですが(笑)。でも、回が進むごとに織田裕二さんが我々の書き込んだスタートリストを、まるでアナウンサーのように活用してくれるんですよ。スタートリストには選手の特徴や過去の経歴のほかに備考欄があって、そこに我々アナウンサーがいろいろと調べたり、取材した内容を書き込んで実況に備えているわけです。それをちゃんと織田さんも見て使ってくれているっていうのが嬉しい!

土井 リレーみたいに直前に出場選手や順番が変わる種目なんかの場合、スタートリストをじっと睨んで、「うーん……3走で来たか」みたいなこと言ってますから。もう、織田さんの陸上愛たるや。

初田 競技が終わって中継終了後もなかなか帰らないですからね。

土井 そう! 反省会のように立ち話をしてるんですよ。我々が実況ブースから戻ってきて、「どうもお疲れさまでした」と織田さんに挨拶をして、それから別室で翌日の準備をしたりします。で、もうこんな時間だからそろそろ帰りますかー、と部屋を出ると、まだ喋ってる! 誰よりも情熱をもって放送に臨んでいますよ。

初田 10回目を迎えて、さらにその情熱、情報量に磨きがかかっています。織田さんに限らず、我々スタッフ一人一人の情熱と、そしてライブ感。これを放送ではしっかりとお伝えしたいですね。

土井 確かに、ライブでお伝えできる回数、競技がここ数回の中だけでも圧倒的に増えました。それが、回を重ねてきた中で一番の変化かもしれませんね。

初田 インターネットの発達によって、もう、ライブが当たり前なんですよね。テレビよりもインターネットのほうが速い場合もありますから。だから、ライバルはインターネット! 究極的にはインターネットよりも速くなりたい。今回は特に時差が1時間と少なく、見やすい環境が整っていますから、視聴者の皆様には、ライブならではの陸上競技の楽しさ、醍醐味を実感していただければと思っています。
(オグマナオト)

「世界陸上北京」2015年8月22日(土)〜30日(日)TBS系列独占放送。

〜主な競技スケジュール〜
■DAY1[8月22日(土)]:
あさ: 男子マラソン
ごご: 男子100m予選/女子砲丸投決勝/男子棒高跳予選
■DAY2[8月23日(日)]:
あさ: 男子20km競歩/女子100m予選
ごご: 男子100m決勝/男子ハンマー投決勝
■DAY3[8月24日(月)]:
男子棒高跳決勝/男子やり投予選/女子100m決勝/女子10000m決勝
■DAY4[8月25日(火)]:
男子400mH決勝/男子800m決勝/男子走幅跳決勝/男子200m予選
■DAY5[8月26日(水)]:
女子棒高跳決勝/男子やり投決勝/女子200m予選/男子400m決勝/男子200m準決勝
■DAY6[8月27日(木)]:
男子200m決勝/女子200m準決勝/女子400m決勝/男子三段跳決勝
■DAY7[8月28日(金)]:
女子20km競歩/男子十種競技/女子走幅跳決勝/女子200m決勝/男子110mH決勝/女子100mH決勝/男子走高跳予選
■DAY8[8月29日(土)]:
あさ: 男子50km競歩/男子十種競技/男子4×100mリレー予選/女子4×100mリレー予選
ごご: 女子走高跳決勝/男子5000m決勝/男子4×100mリレー決勝/女子4×100mリレー決勝
■DAY9[8月30日(日)]:
あさ: 女子マラソン
ごご:男子走高跳決勝/女子やり投決勝/男子4×100mリレー決勝/女子4×400mリレー決勝