米国のコレステロール治療ガイドライン(GL)には、LDL‐コレステロールの管理目標値が設定されていない。曰く「目標値を設定するに足る科学的根拠がない」というのだ。

 2013年11月、同GLが発表されたとき、各国の関連学会は大騒ぎになった。何しろこれまで治療の根拠として君臨してきた数値がばっさり切られたのだから。

 当時の日本動脈硬化学会の公式見解をみると、「LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンス(科学的根拠)は現状では十分ではないことに関してはわれわれも異論はなく(中略)しかし日本の実臨床の場では管理目標値があった方が治療しやすく(後略)」、とある。解りやすい数値があった方が、医者も患者も便利でしょう? というわけだ。

 米GLも脂質異常症の治療の必要を否定しているのではない。一律に管理目標を課すのではなく、患者の心疾患発症リスクに準じた治療設計を推奨したのだ──極めてまっとうであろう。

 リスク決定には年齢と心疾患の既往、糖尿病の有無に加え、人種、性別、血圧値など9項目から今後10年間の心疾患発症リスクを推計するプログラムが取り入れられた。

 ちなみに、45〜70歳の基礎疾患がない人の場合、LDL-Cが70〜189mg/dL、今後10年の間に心疾患を発症する可能性が7.5%以上から薬物療法の対象となる。発症リスクが低くても、LDL-Cが190mg/dLを超えるなら、有無を言わさず治療対象だ。

 先日、報告されたGLの費用対効果を検証する調査結果によると、10年間の心疾患発症リスク7.5%以上で薬物療法開始という新基準を採用した場合、1QALY(高い生活の質を保ったまま過ごせる年数)増分の費用が3万7000ドル。著者は「費用の許容範囲を10万ドルまで上げられるならリスクが4%の人まで治療対象を広げられる」としている。

 現行のリスク推計プログラムは米国住民のデータから作成されたのでうのみにはできないが、参考にチェックしてみよう。URLはhttp://clincalc.com/Cardiology/ASCVD/PooledCohort.aspxだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)