平成27年1月2日の一般参賀にお出ましになられた天皇皇后両陛下(写真=宮内庁HPより)

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 8月9日午後、東京大学付属病院で冠動脈のCT検査を受けられた皇后・美智子さま。今年の6月末頃から胸の痛みの症状があり、心電図検査の結果、「心筋虚血」と呼ばれる冠動脈の血液の流れが滞る疾患の疑いがあることが分かっていた。今回の検査は、それを受けてのことだ。

 検査の結果、冠動脈の3本のうち2本の一部に動脈硬化が原因と見られる軽度の狭さくが見られた。ストレスなどで血管が一時的に収縮して、狭さくが生じている可能性が考えられるという。宮内庁は「これまで通りの日常生活を送りつつ、激しい運動はもちろん、強いストレスを避けるよう過ごされる」と発表した。

 冠動脈は心臓を取り囲むように存在する3本の動脈で、心筋に酸素や栄養を送る重要な働きをしている。この冠動脈の血流が悪くなると、心臓に酸素を供給できなくなる。このような「心筋虚血」は、動脈硬化が進んで動脈が狭くなることや、完全に詰まることが原因で起きる疾患だ。狭心症や心筋梗塞にもつながる。

症状のない「心筋虚血」もある

 心筋虚血には症状のないタイプもある。心筋梗塞が発症した後や狭心症がある場合にも、この"無症状"の心筋虚血が起き得るという。そして怖いのは、これまで狭心症や心筋梗塞とは無縁だった人にも起きるということだ。

 無症状ゆえに、どれくらいの人が患っているのか統計は取りづらいが、秋田大学医学部第2内科の三浦傳教授の監修によるテキストによれば「狭心症の自覚がない日本人の2〜3%に、無症状の心筋虚血が見られる」という。つまり、胸の痛みなどの症状がなくとも、心筋虚血が起きている可能性もあるというわけだ。

 特に糖尿病を患っている場合、動脈硬化が進みやすいため心筋虚血のリスクが3〜4倍高まるという。糖尿病は神経障害の合併症もあるため、痛みに気づきにくいという点も恐ろしい。

突然死のリスク......無症状では回避しようがない!?

 通常、心臓からくる突然死の場合、心筋梗塞や狭心症など、そもそも何らかの心疾患をきたしていたというイメージがある。ところが、そうとも限らない。元気で生活していたのに、急に心筋梗塞を起こしたり、突然死に至ることもある。

 三浦教授の監修テキストによれば、検査を受ける目安としては「生活習慣病リスクが高い」「高血圧や高脂血症「糖尿病」「肥満」「喫煙」などに2つ以上該当した時点。心当たりのある人は、睡眠不足や不規則な生活リズム、喫煙や過度な飲酒、強いストレスをためこむ、急激な運動や温度変化などには十分注意したい。

 特に自覚のない人でも、危険因子を持っている可能性はある。やはり、普段の生活から動脈硬化の予防に努めたい。血液をサラサラにする「ナットウキナーゼ」を含む納豆、レモンや梅干し、酢などに多いクエン酸、青魚に含まれる「DHA」などを意識的に摂取しよう。また、適度な運動にも心がけ、無用なリスクは自ら遠ざけよう。

 美智子さまのように、強い精神的ストレスによっても動脈硬化のリスクは上がる。ストレスが加わると、交感神経が活発になり、脈が速くなったり、血圧が上がったりと心臓に大きな負担がかかるためだ。こうなると、心臓には多くの酸素が必要になるが、血液の供給が追い付かないと酸素不足になってしまう。美智子さまのように、冠動脈が一部狭くなっている状態はリスクが高い。

 日本でも死因の上位となっている心臓病、その8割近くは虚血性心疾患。一見健康そうにみえる人も襲う恐ろしい病気だ。危険因子がなくても心臓病の早期発見のために、40歳を過ぎたら年1回、定期的な検診を受けることを勧めたい。 
(文=編集部)