誰もが知る“肉の名店”と呼ばれる店が世の中にはある。とはいえ、実際には行ったことがないという人も意外と多いのではないだろうか?

そこで今回は、いつかは行ってみたい名店の真の実力を検証してご紹介!



銘柄にこだわらず、その時々の最高の牛肉を焼くのが河村スタイル。取材日は宮崎牛。これで300g。側面は焼かずに上下の面のみを焼くのも旨さの秘訣
ステーキの殿堂
『かわむら』

銀座


従来の、所謂“ビフテキ”のイメージを一変させたのが河村太郎シェフの焼くステーキだ。銀座に店を構えたのが2004年。名うての食通らの舌を唸らせてきたその味わいは、シルクの如くしっとりときめ細かな舌触りと共に広がるヒレの脂特有の繊細にして豊潤な香りが素晴らしい。

赤子の頬のごとくフルフルと柔らかな感触の肉片が、喉元を過ぎていく食感は、シェフの言う「水のように澄みきったイメージ」そのままだ。

食べ口はあくまで軽く、しかし、後に残る余韻は深奥にして滋味豊か。それも、肉にストレスを与えぬよう火加減を調整しつつ、約40分かけ、余熱の力で焼き上げる河村流の焼き方の賜物だろう。

雑味が出るからと塩もコショウも一切使わず、煙による燻香さえもつかぬようにと細心の注意を払う。さらには網が肉に食いこむことさえ良しとせず、グリル板まで特注するほどの思い入れの深さだ。

「和牛は日本の誇るべき食文化の一つ」。熱く語る河村シェフの、揺るぎない信念が生んだ、まさに唯一無二のステーキである。


まるでステーキのような焼肉!



特上ハラミと上タン塩など。まるでステーキのような分厚さの特上ハラミは柔らかさの中に感じる独特の弾力と歯応えが魅力
焼肉の殿堂
『スタミナ苑』

志茂


数々の都市伝説を持つ焼肉界のサンクチュアリ、鹿浜『スタミナ苑』。最寄り駅とてない不便な立地にもかかわらず、行列の絶えない人気の理由は、ひとえに豊島久博・雅信さん兄弟の牛肉に対する熱意と愛情、そしてたゆまぬ研究心があってこそ。

創業以来、店から歩いて数分のところにある食肉加工業者との長きにわたる強い信頼関係に加えて、ふたりの確かな目利きと熟練の技、下拵えの緻密さが、名店としての品格を生み出している。単に“安くて旨い”だけではない志の高さを感じさせるのだ。

精肉はもとより。白眉は新鮮極まりないホルモンの数々。人の親指ほどもある極太の子袋、羊羹の如くねっとりとしてエッジの立ったレバーetc.種類の豊富さと質の高さは都内随一と言っても過言ではない。

一頭から2〜3kgしか取れず、その良し悪しで店の実力が分かるとまで言われるハラミにしてもご覧の迫力。特上ロースのように美しく脂肪の入った肉厚の一片は、しっとりと柔らかな食感と溢れ出る肉汁が醍醐味だ。


創業以来変わらぬ味のすき焼き



焼くように炊くのが人形町今半流すき焼の極意。創業以来変わらぬ、やや甘めの割下が脂ののった肉と卵のまろやかさを繋ぐ仲介役。特上8,100円(税込)
すき焼の殿堂
『人形町今半 人形町本店』

人形町


潤いを帯びた光沢を放つ見事な霜降り肉を一枚。少量の割下を入れただけの浅鍋に、広げるように投入するや、じゅわっという快音とともに黒毛和牛ならではの芳しい香りが立ち上る。

肉の色がサッと変わったところで、溶き卵にくぐらせ頬張れば、豊潤な脂肪の甘みに卵のまろやかなとろみが絡みあい、渾然一体となって口中でとろける。

だが、後口は思いの外、軽やか。霜降り肉にありがちな嫌な脂っこさは皆無だ。ここ『人形町今半』のすき焼きの真の凄さはそこにある。


最後は、赤坂にあるしゃぶしゃぶの名店!



鍋の透明なスープは、牛肉や野菜でとったもの
しゃぶしゃぶの殿堂
『ざくろTBS店』

赤坂


モンゴルで生まれた、“涮羊肉(シュワンヤンロウ)”が、いわばしゃぶしゃぶのルーツ。これが中国より日本に伝わったのは太平洋戦争後。元祖は祇園『十二段家』だが、昭和30年、いち早く東京に広めたのが、ここ『ざくろ』だ。

落ち着いた店内で頂くしゃぶしゃぶは、手頃な国産牛からA5の特撰黒毛和牛まで3種類。なかでも、同店ならではの味を堪能するなら、やはり特撰黒毛和牛を味わいたい。

さらに忘れてならないのは特製の秘伝の胡麻ダレ。門外不出のその味は、本場のタレを彷彿とさせるやや個性的な味わいながら、芝麻醤を思わせるゴマのコクと微かに香る腐乳の風味がミソ。

しなやかにとろける肉の旨みと風味豊かなタレの一体感が素晴らしい。古くて新しい味をぜひ。