今季最後のメジャー大会、全米プロ選手権(8月13日〜16日)がウィスコンシン州のウィスリングストレーツ(パー72)で開催された。

 頂点に立ったのは、悲願のメジャー制覇を遂げたジェイソン・デイ(27歳/オーストラリア)。マスターズと全米オープンを制し、全英オープンでもトップと1打差の4位タイと、今季のメジャー大会で圧倒的な強さを見せてきたジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)を抑えての見事な勝利だった。

 3日目に通算15アンダーとして首位に立ったJ・デイは、最終日も「67」と5つスコアを伸ばして、メジャー史上最多アンダーとなる通算20アンダーでフィニッシュ。2打差でスタートし、懸命に追いすがるJ・スピースにも、最後は3打差をつけて快勝した。

「本当に長い道のりだった。これまで何度も勝てそうで勝てなかった。勝利を確信したとき、いろいろな思いがあふれてきた。まさか、こんなに涙が出るなんて、想像もしていなかった。ようやくメジャーに勝てた。本当にタフな戦いだった」(J・デイ)

 翻(ひるがえ)って、日本人初のメジャー制覇が期待された松山英樹(23歳)は、通算3アンダー、37位タイに終わった。

 4日間とも、爆発しそうで爆発し切れなかった。初日は、10番スタートの前半でバーディーを4つ奪うなどして、一時は首位に立ったものの、終盤にボギーを3つ叩いて失速。トータル「70」の2アンダー、15位タイに終わった。

「(後半6番でのボギーは)グリーンを外しても、そんなに難しいところに行っていなかったんですけど、(3打目のアプローチを)寄せ切れなかったのは残念......。(コース全体としては)フェアウェーをとらえさえすれば、そんなに難しくはない。その分、ショットが本当に大事になるコースだと思います。その中で、もう少しスコアがよければよかったんですけど、もう終わってしまったこと。それより、明日に向けてしっかりと修正していきたい」

 2日目、3日目も、5つのバーディーを決めて、一気に浮上するチャンスは再三あった。しかし、2日目は初日同様、3つのボギーを叩いて、順位は15位タイ(4アンダー)にとどまった。3日目も、前半にスコアを伸ばして優勝争いを射程圏内にとらえるところまで迫ったが、15番(パー4)で痛恨のトリプルボギー。通算5アンダーと、スコアはひとつ伸ばしたが、順位は24位タイに後退した。

「(3日目、15番のトリプルボギーは)3打目のバンカーショットで、『寄せたい』という気持ちが強過ぎましたね。ボールのライは悪くなかったんですが......(グリーンを大きくオーバー)。あの時点で、トップとは5打差くらいだったので、ボギーにすると厳しいという思いがあった。ここをしのいで、16番(パー5)、17番(パー3)でバーディーが取れれば、スコアがふた桁に乗るし、そうすれば(最終日に)チャンスがあるかな、と考えていた。まあ、伸ばせる人は伸ばせるコースで、上に行くにはビッグスコアが必要。でも、今の自分の状態では、なかなか(ビッグスコアは)出せない」

 巻き返しが期待された4日目は、立ち上がりからつまずいた。2番から4番まで3連続ボギーを喫した。その後も、8番(パー4)でダブルボギーを叩くなどして、4日間で初めて「74」とオーバーパーを記録。結局、37位タイまで順位を下げて、今季のメジャーでは最も悪い成績に終わった。

「(最終日は)すべてがよくない方向から入ってしまった。やっぱり(不調な)ショットが原因なのかな、と思う。それに今日は、昨日(3日目)のトリプルボギーを引きずっている感じがずっとありました。それが、プレイに出てしまったのかも......。

 今年のメジャー? 4つとも予選を通れたことはよかったけれども、自分が目指しているのは、そこじゃない。でも今季は、上位に行く選手と差があるところからスタートして、優勝争いに加わっていけなかった。(米ツアーで)もっともっと優勝争いに絡んでいって、メジャーでも戦えるように、しっかりと経験を積んでいきたい」

 今季最初のメジャーであるマスターズで、5位という好成績を収めた松山。おかげで、その後のメジャーでは常に勝利を期待されてきた。しかし、全米オープン(18位タイ)、全英オープン(18位タイ)、そして全米プロと、随所に見せ場は作りながらも、栄冠を手にするまでには至らなかった。そこには、「"メジャーの壁"がある」と、ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は言う。

「松山はこれまで、いろいろなことにトライして、自らの足りない部分を埋めてきた。それで、技術的には何ら申し分のないところまできている。でも、なぜか勝てない。それが、"メジャーの壁"。それは、何かをきっかけにして打ち破ることができるんだけど、そう簡単には破れない。今回優勝したJ・デイだって、そう。ずっと優勝争いに加わってきて、やっとメジャータイトルを手にした。要は、それだけの経験が必要。それを考えれば、松山は米ツアーに参戦してまだ2年。これから経験を重ねていけば、いくらでもチャンスは訪れる。我々は長い目で見て、そのときが来るのをじっくりと待っていればいい。

 一方で、今の世界のゴルフ界は、技術面における差がほとんどない。その中で、結果を出す後押しとして、メンタル面が重要視されている。あまり根を詰め過ぎてもいけないし、単純なリラックスだけでもいけない。つまりそれは、一般的に言われるメンタル面の問題ではなく、自らをゾーン(究極の集中力)に導いていく手立て、という意味でのメンタル面のこと。いわゆる"フローゴルフ"と言われるもので、うまく自分をゾーンに入れていく術が必要とされている。今や、そうした技術だけじゃない部分も大事になっていて、それができないもどかしさが、松山にあるのは確か」

 今季のメジャー4戦は終わった。しかし、今年で日本人のメジャー制覇の夢が消えたわけではない。松山自身、そこを明確な目標としてとらえ始めた今、その瞬間は必ず訪れるはずである。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko
text by Sportiva