ウィニングパットを決める前から感情を抑えきれなかった(撮影:福田文平)

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<全米プロゴルフ選手権 最終日◇16日◇ウィスリング・ストレイツ(7,501ヤード・パー72)>
 ジェイソン・デイ(オーストラリア)はウィニングパットを決める前から泣いていた。メジャーで過去9度のトップ10入り。あと一歩のところで逃し続けてきたメジャータイトルに手が届くと確信した瞬間、あふれるものを抑えきれなかった。
優勝を決めてエリー夫人と抱き合うジェイソン・デイ
 ウィスコンシン州にあるウィスリングストレイツで開催された「全米プロゴルフ選手権」の最終日。単独首位から出たデイは最終日も5つスコアを伸ばし、メジャー最小スコアとなるトータル20アンダーで初のメジャー制覇を成し遂げた。
 世界ランキング1位の座を狙うジョーダン・スピース(米国)との最終組。これ以上ないシチュエーションでデイは躍動した。2番パー5でバーディを先行させると5番、6番でもバーディを奪取。7番パー3では約15メートルのバーディパットを放り込んで後続を突き放した。8番でボギーを叩くも11番、14番のバーディとメジャータイトルへの足は緩めない。スピースも17番でデイがロングパットを寄せるとサムアップでそのプレーを称えた。
 ホールアウト後は苦労も喜びもすべて共にしてきたキャディのコリン・スワットンと抱き合って号泣。長男のダッシュ君、エリー夫人もグリーン上の喜びの場に加わった。「泣くとは思わなかった。でも、今まで優勝まであと一歩の所で手が届かなかったことばかりだったので、感情が込み上げてきた」。
 思い返せばデイは約1か月前にも泣いていた。決めればプレーオフに進める「全英オープン」の最終ホール。しかし、ピン上からのバーディパットは力なくカップの手前で止まり、呆然と顔を覆った。それでもデイはあきらめず全英翌週の「カナディアンオープン」を制し勢いそのままに今大会に乗り込んできた。そしてたどり着いたビッグタイトル。聖地で流した悔し涙は、1か月後の18番グリーンで歓喜の涙にかわった。
 ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。12歳で父親を亡くしてからは荒れた生活に身を落とし、アルコール依存症にもなった。母とキャディのスワットンの支えでゴルフの道に戻ることができたが、プロになっても流した悔し涙は数え切れなかった。
 だがその涙は無駄ではなかった。「ここまで他のメジャー大会で優勝を逃したことで、この大会でどうやってプレーをするかを学べた。それがこの勝利につながった」。27歳はこれまでのゴルフ人生すべてをかけて分厚い壁を打ち破って見せた。

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