『マツコの知らない世界』が好調。他のバラエティとココが違う
 毎週火曜日21時から放送中の『マツコの知らない世界』(TBS系)が絶好調です。様々なジャンルをマニアックに追求する素人を招き、マツコ・デラックス相手にレクチャーするだけなのですが、これが特別面白いわけでもないのに、ついつい観てしまう。

 腹を抱えて笑うシーンがあるわけでもなし、日常生活のお得な情報が満載といったわけでもなし。なのに、チャンネルを合わせたら「まあ、ここでいいかな」と納得させるような落ち着きがある。

 これまでにも番組については“脱ひな壇芸人”といったキーワードや、マツコ本人の細やかな仕切り力などの面から語られてきました。しかし、そういった業界的な興味以上に、人が持つ自然な感性に逆らわない作りが魅力なのではないでしょうか。

 そこで番組を観ていて気付いた点を挙げつつ、『マツコの知らない世界』が地上波のバラエティ番組の中で、どのような存在となっているのか考えてみたいと思います。

◆(1)ムダなエフェクトやBGMがない

 いま地上波で放送されているバラエティ番組の9割以上は、うるさいのです。さらにこの喧噪がニュースや情報番組までをも侵し始めているのですから、救いがたい。調性やテンポ、サウンドの異なる音楽が、秒単位でひっきりなしにガチャガチャと入れ替われば、知らず知らずのうちに人心は悲鳴をあげてしまうもの。

 その点『マツコの知らない世界』の音楽には統一感があります。番組のオープニングとDVDのチャプターを模した各コーナーのジングルは緩やかに一体を成している。さらにエフェクトを使うシーンも、マツコが食べ物を口に入れる瞬間などに限られています。観ていて血圧の上がる心配のない番組なのです。

◆(2)面白くもないのに無理に笑わない

 これは“脱ひな壇芸人”とつながるかもしれませんが、とにかく大笑いしていれば盛り上がっていると勘違いしている番組が多すぎます。とは言え、何の工夫もなく、ただ淡々と流れていくだけでは番組は成立しません。そこは、登場する素人のタイプによって接し方を変えるマツコの観察力がものを言います。

 たとえば、相手が押しの強いキャラクターならば、斜に構えて、常に肩すかしのタイミングをうかがう。逆に緊張して自分のカラーを出せていない素人には、とにかく色々なスポットを突っついてみる。くすぐったがるところを探るように、短く親しげなスキンシップを、言葉で行うのですね。こういうワザは、ひな壇芸人が50人いてもできるものではありません。

◆(3)MCが道化にならない

 昨今のバラエティ番組では、実はここが一番の難所のように思います。MCが常識を放棄して、ちゃぶ台返しをする。いわば、安易な笑いのタガが外れているのではないか。

 その点、マツコはいち視聴者の立場からあまり離れません。自分が何か突飛なことを言うよりも、マジョリティの感性に寄り添うことで、マニアックな人達の面白味を引き立てることに専念している。

 そして、あまりにも極端な趣味が理解できなければ、きちんと「分からない」と言う。そんなマツコを観て視聴者は、無理をして分かったつもりになる必要がないと安心できるのですね。ここが、ただのカルト趣味に陥らずにゴールデンタイムでも安定した視聴率を叩きだしている所以なのではないでしょうか。

 というわけで色々と考えてみましたが、裏を返せば視聴者に負担を強いるような番組が多いだけなのではないかという気もしてくるのです。テレビとの接し方も、それが団らんの中心であるというよりも、気付いたら何か映っていたぐらいの感覚になっているのかもしれません。『マツコの知らない世界』は、そんな時代の気分にうまくフィットしているのではないでしょうか。

<TEXT/沢渡風太>