あなたは躊躇せず使えるか? 逸葵/PIXTA(ピクスタ)

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 最近では、商業施設や学校、駅、空港などでごく普通に見かけるようになった「AED(自動体外式除細動器)」。病院外で突然の心停止が起きたときに、居合わせた人が除細動(電気ショックで心拍を正常なリズムに戻すこと)による救命措置を行える機器だ。

 2004年に一般市民の使用が解禁されてから、今年で12年目。現在、パブリックスペースに設置されているAEDは、全国に約47万台といわれている(厚生労働省の推計)。

 だが、誰かが使っているのを見たり、実際に使った経験があったりする人はほんの一握りだろう。多くの人は、AEDを使用する場面やその有効性について、ピンと来にくいのではないだろうか。

 今回、帝京大学救急医学講座の中原慎二氏らが、一般人による心臓マッサージやAEDによる救命処置が行われた割合や、治療結果を統計解析。その結果、「脳などへの後遺症を残すことなく生存した割合が3.3%から8.2%に増加した」ことが判明。『JAMA』誌(7月21日号)に報告した。

救急隊の到着前にAED を使うと快復率が倍以上に

 研究グループは、2005~2012年の8年間に、病院外で心停止した患者のうち、原因が心臓にあると推定され、倒れたときに居合わせた人がいた16万7912人を抽出。居合わせた人による心臓マッサージや公共AEDを用いて除細動をしたかどうかと、心停止した人の治療結果との関連を分析した。

 2005年と2012年を比較すると、心臓マッサージが行われたケースは38.5%から50.9%に増加。居合わせた人だけがAEDによる除細動を実施した率も、0.1%から2.3%に増加していた。さらに居合わせた人と救急隊員の両者が除細動をした割合は0.1%から1.4%に増加。救急隊員だけによる除細動は、26.6%から23.5%に減少していた。

 その結果、脳の血流が途切れたことなどによる神経的な後遺症を残さずに生存した例(以下、転帰良好例)は、3.3%から8.2%に増加した。全体からみるとまだ小さな割合ではあるものの、AED導入から8年で約2.5倍に伸びたのだ。

 実施された処置別に見ると、心臓マッサージが行われない場合の転帰良好例は4.1%だったのに対し、心臓マッサージが行われたときは8.4%に上がっていた。その場ですぐにAED を使用した場合の影響はもっと大きい。

救急隊だけが除細動を行った場合の転帰良好例が15.0%だったのに対し、居合わせた人だけが除細動を行った場合は40.7%にもなる。

心停止を目撃された人のAED使用は3.6%

 AEDが効果を発揮する心室細動は、もともと狭心症など心臓の異常がある人に多いが、まれに健康な人にも起こる。心臓から血液が送り出されなくなると、数分で脳が重大なダメージを受け、救命できたとしても重い後遺症が残る。

 一刻も早く救命処置をすることで生存率は大幅に上がり、最近の研究でも、救急隊到着前に心肺蘇生が行われた場合は、30日後の生存率が2倍以上だったという報告もある。

 確かに今回の結果は、公共AEDの実効性を証明するポジティブな側面だ。しかし、裏を返せば、本来もっと多くの命が救えるはずだ。

 消防庁がまとめた平成26年度の統計では、心停止が発見されてその場でAEDが使用された場合の救命率は50.2%。これは救命措置が行われなかった場合の4.5倍を超える。ところが、心停止時点を目撃された人のうち、実際にAEDを使用されたのはわずか3.6%に過ぎない。

 公共AEDの絶対数が足りないことや、設置基準に一貫性がないことも一因だが、居合わせた人に知識がなければ、たまたま近くにあっても活用されないだろう。AEDは特に訓練を受けていない人でも使いやすいように工夫されている。

 人命を救う場に巡りあわせた際、あなたは躊躇せずに使えるだろうか。今は、さまざまな機関が講習を行っている。ぜひ、一度参加してみてはどうだろうか。
(文=編集部)