ぎっくり腰になった柳沢慎吾さん(所属事務所の公式プロフィールより)

写真拡大

 俳優でタレントの柳沢慎吾さんが 今年のゴールデンウィーク中にぎっくり腰になったことを、イベントで明かして話題になった。すぐに治ったものの、ゴールデンウィーク明けに床に落ちた衣装の装飾品を拾おうとした時に、ぎっくり腰が再発したという。

 柳沢さんのように再発することが多いぎっくり腰。慢性のぎっくり腰に悩む読者も少なくないだろう。

ぎっくり腰の主な原因と症状は?

 ぎっくり腰の主な原因と症状を、スポーツ医学専門クリニック「みどりクリニック」の瀬戸口芳正先生は、次のように語る。

 「腰痛の有病期間の分類としては、発症から4週間未満のものを急性腰痛とされています。そもそも、腰痛症の定義は『腰部に存在する痛み』というだけであって、その痛みの原因は様々であるため、その症状も原因によって違ってきます。腰痛の原因を大別すると、脊椎由来、神経由来、筋肉由来、内蔵・血管由来、心因性の5つに分かれ、急性に発症する腰痛はどの原因でも起こる可能性があります」

 「ぎっくり腰」という言葉から連想される腰痛は、物を持ち上げた瞬間に急激な痛みが走って動けなくなる、または前かがみになった途端に激しい痛みで腰が伸ばせなくなったなど、動作の拍子に突然起こる腰部の痛みだ。この症状を、決して侮ってはいけない。

 「体を動かすと腰から臀部の辺りに鋭く強い痛みを感じ、症状がひどい場合は、日常の動作ばかりか寝返りすらも痛いため身動きとれないこともあります」

 この場合のぎっくり腰は脊椎由来のことが多く、動くと痛いため背骨の動きに関係するところに原因があるという。

 「背骨一つ一つを椎体と呼び、椎体の間の関節を椎間関節といいます。椎間板とは椎体と椎体の間のクッションのような物を指します。動作の拍子に、この椎間関節や椎間板、腰の筋肉などに負荷がかかることで急性の痛みを発症しますが、ほとんどのぎっくり腰は、安静にしていれば2週間程度で徐々に軽快していきます」

原因が明らかではないぎっくり腰とは?

 原因が明らかでない腰痛の総称を非特異的腰痛と呼び、原因が明らかな腰痛と区別している。

 「原因が明らかでなくても、ぎっくり腰のように動作で痛みがある場合は、椎間関節や椎間板、筋肉などに何らかの負荷がかかり痛みを発生させていると考えられます。脊椎由来の原因が明らかな腰痛としては、腫瘍、感染症、骨折などの外傷、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊椎すべり症などがあり、これらはその原因疾患の治療を行う必要があります。またここで言うぎっくり腰とは少し違いますが、急性腰痛の原因には内臓や心臓血管系に由来する病気もあり、生命に危険が及ぶこともありますので注意が必要です」

 骨折や腫瘍、感染症、神経障害(脚の麻痺や排尿排便の障害など)などがあれば、入院が必要となる可能性がある。そのほかの原因であっても、日常生活が送れないほどの強い痛みがあれば入院、さらに場合によっては、手術の必要もあるから、要注意だ。

 「治療は原因疾患によって異なりますが、安静と薬による治療が中心となり、場合によっては手術が必要なこともあります。痛みが落ち着いてきたら、日常生活に戻るためのリハビリを始めます。安静によって低下した体力や筋力・柔軟性を取り戻すことや、腰部を安定して支えることができるように訓練します」

ぎっくり腰を始めとするよ痛のリハビリのポイントは?

 リハビリテーションの要は、運動を取りいれた方法だ。

 「痛みが強い場合には、コルセットをして腰を支え安静にし、痛みを軽減する薬を処方します。リハビリは物理療法と運動療法に大別され、物理療法とは電気や温熱刺激を加えることで痛みの軽減を図る方法で、運動療法とは硬くなった筋肉を伸ばしたり、弱った筋肉を強化するなど、腰をうまく支えることができるように、運動を取り入れた方法です。また、最近は心因的側面が注目され、認知行動療法といった心理学的治療も行われています」

 気になるのは、柳沢慎吾さんのように、治ったかと思ったら、再発してしまうなど、何度もぎっくり腰を繰り返すことだ。防止の方法を瀬戸口先生が次のようにアドバイスする。

 「ぎっくり腰を繰り返すのは、腰椎が不安定であったり、過剰に動いてしまっているのが原因です。例えば、体を捻る動作(体幹の回旋)は、構造的に腰椎よりも胸椎部でたくさん回旋する仕組みになっていますが、胸椎が硬くなるとその分腰椎の回旋が増えることになります。45°体幹を回旋するためには、通常ではおよそ腰椎部が10°、胸椎部が35°程度回旋をすることになりますが、胸椎部が硬くなり20°しか回旋できないとすると、腰椎部で25°回旋しなくてはならなくなり、腰椎の動きが過剰になります。前屈や中腰の姿勢でも同じように、股関節の動きが硬ければその分腰椎部が過剰に曲がることになります。これに加え、腰椎を支える腹筋や背筋が弱っていたり、筋力のバランスが崩れていると、腰椎をうまく支えることができず不安定になります」

再発しないよう心がけることは?

 リハビリは初回でも、慢性の(繰り返す)ぎっくり腰でも、大きな違いはないという。

 「動作をサボっている箇所(硬いところ)は柔らかく動くようにし、動きが過剰になっている不安定な腰椎部は筋肉で補強するということになります。ただ、何度もぎっくり腰を繰り返して何十年も腰痛に悩まされているような場合は、より集中的なリハビリが必要かもしれません」

 まずは日常生活でぎっくり腰にならない予防を心がけることが大事だ。それにはストレッチと筋力強化が不可欠と、瀬戸口先生が強調する。

 「ストレッチと筋力強化の他に、重要なのは、腰に過剰な負担をかけないような姿勢や動作を学ぶことです。ストレッチは、腰部に隣接している上下の部分、つまり股関節と大腿部(太もも)や上半身をストレッチすると良いでしょう。ポイントとしては、腰は捻らずできるだけ真っ直ぐにした状態で、弾みをつけずにじっくりとストレッチし、腰に負担をかけずに行うことです。腹筋を鍛える場合は、股関節を90°ぐらいに曲げて、足を椅子などの上に乗せて行う『クランチ』と呼ばれる方法をお勧めします。仰向けに真っ直ぐ寝た状態から起き上がるような方法や、伸ばした脚を持ち上げるような腹筋トレーニングは腰椎が不安定な場合には逆に腰を痛めることもあるからです。背筋を鍛える場合も、腰の反りが過剰にならないように、少し腰を起こす程度に留めたほうが良いでしょう」

 柳沢慎吾さんのぎっくり腰の原因(床から物を持ち上げる動作)から、予防を考察すると、次のようになる。

 「股関節や膝をあまり曲げずに腰をたくさん曲げて床の物を取ったとすると、曲げた腰を伸ばすことで物を持ち上げることになります。一方、股関節と膝をしっかり曲げて腰を落とすと、腰椎部は真っ直ぐなままとなり、股関節と膝を伸ばすことで物を持ち上げることができます。つまり、腰の屈伸で持ち上げると過剰な負担が腰にかかり、脚の屈伸で持ち上げれば腰の負担は減ることになります」

 ぎっくり腰になってしまったら、慢性にならないようにリハビリをしっかり行うことが必要だ。「ならないようにする」ためには、日常生活で、なるべく腰の負担を減らすように心がけたいものである。
(取材・文=夏目かをる)