今季メジャーの最終戦となる全米プロ選手権(8月13日〜16日)が、アメリカ・ウィスコンシン州のウィスリングストレーツで開催される。

 最大の注目は、アメリカの新鋭ジョーダン・スピース(22歳)だ。今季メジャーのマスターズ(4月9日〜12日/ジョージア州)、全米オープン(6月18日〜21日/ワシントン州)と連勝し、「ゴルフ発祥の地」と言われるセントアンドリュースで行なわれた全英オープン(7月16日〜20日※/スコットランド)でも最後まで優勝争いを演じて、メジャー3連勝という快挙にあと一歩まで迫った(最終的には首位と1打差の4位タイ)。
※悪天候により、最終ラウンドが27年ぶりに月曜日に持ち越された。

 その圧倒的な強さに、すでに日本では「タイガー・ウッズ二世」「タイガーに代わる次世代のスター」といった呼び声があがっている。翻(ひるがえ)って、地元米メディアはどう見ているのか。はたしてスピースは、「ポスト・タイガー」と称されるほどの評価を受けているのだろうか――。

「スピースは、このままいくと、ウッズを抜き去る」

 そう高く評価しているのは、マスターズを放映する米ネットワーク局のCBSスポーツである。根拠は、7月27日に22歳になったばかりのスピースが、記録的なスピードで勝ち星を積み重ねているからだ。

「スピースは、21歳10カ月でメジャー2勝。対して、ウッズがメジャー2勝目を挙げたのは、23歳8カ月。スピースのほうが断然早い。さらにスピースは、これまでに獲得した今季の賞金が、930万ドル以上(約11億円。※8月11日現在。以下同)。このあとも、プレーオフを含めて6試合あるので、ウッズが自己ベストをマークした2007年の年間獲得賞金1009万ドルを超えるのは、ほぼ間違いない。そうした数字を見ても、ウッズ超えは明らか」(CBSスポーツ)

 米ゴルフダイジェスト誌も、「ウッズのような派手さはないが、オールラウンドプレイヤーとして、ここまで勝利を重ねている」と、スピースへの評価は高い。そして、その強さは「精神力にある」と分析している。

 というのも、平均飛距離(292.5ヤード、米ツアー76位)、フェアウェーキープ率(63%、同85位)、パーオン率(68%、同55位)と、ショットに関しては平均的な数字にありながら、メンタル的な要素が大きく影響するパッティング(1ラウンドの平均パット数27.74、同1位)では、突出した数字を残しているからだ。

 そのうえで、米ゴルフダイジェスト誌は、スピースの精神力の「粘り強さ」を強調する。象徴的だったのは、全英オープンの最終ラウンドだという。スピースは8番パー3でダブルボギーを叩いて、一度は上位争いから退きながら、9番パー4、10番パー4と連続バーディーを奪って、すかさず優勝戦線に復帰したことだ。

「あれが、スピースの強さ。(勝負を最後まで)諦めない。その粘り強さは、これまでの"21歳"とは別次元にある」と、手放しで称えている。

 加えて、同誌は、スピースの"人となり"に最大級の評価を与えている。「礼儀正しい」「誠実」「温和」......そうした言葉を並べて、スピースを評する。

 実際、ファーストネームで呼び合うカジュアルなアメリカにあっても、スピースは「ミスター、ニクラウス」「ミスター、パーマー」と言って、年長者には常に敬意を表して、物事を語る。

 また、メジャー大会の直前は準備期間にあてる選手が多い中、スピースは全英オープンの前週に、「2年前にスポンサー招待で出場させてもらったから」と、律儀に米ツアーのジョンディア・クラシック(7月9日〜12日/イリノイ州)に強行出場。しかも、見事優勝を果たして、スポンサーへの恩をしっかりと返した。

 そうしたスピースの言動や行動を、米ゴルフダイジェスト誌は絶賛。ある紹介記事では、次のように綴って、締めくくっている。

「スピースには、障害を持つ妹、エリーがいる。スピースはそのエリーを、幼少の頃から『僕のアイドル』と言って、可愛がってきた。何事にも謙虚に取り組むのは、そうやって育ってきた家庭環境にあるのかもしれない」

 CBSスポーツや米ゴルフダイジェスト誌に限らず、アメリカ国内におけるスピースの評価はすこぶる高い。厳しい論評や非難するような記事は皆無と言ってもいいぐらいで、NYタイムズ紙では、次のように記されていた。

「数十年にひとりの逸材。ゴルフ界がスピースにかける期待は、ウッズと同等、あるいは上回る」

 続けてNYタイムズ紙は、ウッズに劣らぬ、スピースのスポンサー契約について紹介。スピースの"すごさ"を重ねてアピールしている。

「1996年、ウッズはプロに転向するや、ナイキ社と推定3000万ドルの契約を結んで注目を浴びた。一方、スピースもプロ転向直後の2013年1月、アンダーアーマー社とゴルフウエアの単独契約を結び、今年5月には2025年まで契約を延長。その金額は、ウッズに並ぶと言われている。つまり、アンダーアーマー社は、向こう10年以上の社運を、22歳のスピースに託したのだ」

 ちなみに、その記事では「アンダーアーマー社が、スピースの頭文字となる、JSを飾ったロゴをトレードマークとして登録。まもなく発表されるだろう」といったことも報じている。全米プロ選手権で、そのロゴが見られるかもしれない。

 何はともあれ、米メディアは総じて、スピースに対して好意的。ゴルファーとしての評価も高く、「ポスト・タイガー」、いや、それ以上と見ているのではないだろうか。

 全米プロ選手権では、じん帯損傷で戦列を離れていた世界ランキング1位のロリー・マキロイ(26歳/北アイルランド)が復帰。予選ラウンドでは、そのマキロイに、全英オープンの覇者ザック・ジョンソン(39歳/アメリカ)と、スピースが同組になることが発表された。

 今や、アメリカのみならず、世界中が注目するスピース。最高の組み合わせで迎える今季最後の大舞台で、「ポスト・タイガー」たる存在感を示し、米メディアが評するだけの活躍を見せるのか、注目である。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko