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※当記事はネタバレを含みます。映画未鑑賞の方は、ご注意ください

【画像】記憶は消えない? 心理学者が語る『インサイド・ヘッド』の気になる点

公開中のディズニー/ピクサー映画『インサイド・ヘッド』。

11歳の少女の頭の中を描いた物語でしたが、映画を見て「頭の中って本当にこうなの?」「これってどこまで本当なの?」と疑問に思うことはありませんでしたか?

今回は『インサイド・ヘッド』をすでにご覧になったみなさんのために、感情心理学者の樋口匡貴先生に心理学の深〜い話をお聞きしました。

専門家の語る『インサイド・ヘッド』の学術的にちょっと気になるシーン、そしてよかったシーンを、ネタバレたっぷりの解説と共にお楽しみください!

専門家が語る「ここが気になる!」

1. 大人の感情はもっと複雑

『インサイド・ヘッド』では、ライリーだけでなく、パパとママや学校の先生など、すべての登場人物の頭の中にヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカが存在していました。

けれど心理学の研究によれば、特に成人した大人の場合、もっと複雑な感情が生じるようになるそうです。

5人のキャラのような基本的な感情はベースにはなりますが、それらが複合した感情や、もっと複雑な感情も生じるとのこと。

確かに、大人になるにつれて「うれしいけど悲しい」気持ちになったり、「恥ずかしさ」や「罪悪感」を覚えたり、5つの感情では語りきれない思いに駆られることもありますよね。

大人の感情はもっと複雑なようです。

2. 人間はもっと論理的に考えることもある

『インサイド・ヘッド』では、5つの「感情」が中心となって、人間の思考や行動をコントロールしていました。

でも心理学的に見ると、人間は感情だけで動くのではなく、もっと論理的に考える力もあるそうです。

学術的にはこれを「二重過程モデル」と呼んでいて、人間は物事を考えるとき、感情の影響を強く受ける「直感的・無意識的な」部分と、もっと頭を使って考える「論理的な」部分の両方を使っているのだとか。

例えば、洋服を買うとき。

直感的に「これ素敵!」と衝動買いすることがある一方、「このズボンには合うけど、あのスカートとは合わないかも…でも値段はお手頃だし…」と複数の情報を論理的に考えることもありますよね。

『インサイド・ヘッド』の主人公は感情なので、「感情」による意思決定や行動がメインに描かれていましたが、実際はもっと「精密で論理的」な行動を取る場合もあるそうです。

3. 記憶が消滅することはない

『インサイド・ヘッド』では、ライリーの頭の中から忘れられた記憶は「思い出のゴミ捨て場」に送られ、次第に消滅してしまいます。

でも、実際の心理学の視点から言えば、記憶が消滅するわけではないとのこと。

忘れられた記憶というのは、単に検索して思い出せなくなっているだけだと言われているようです。

ライリーの空想の友達だったビンボンが消えていくシーンは切ないですが、心理学では消滅していないとわかれば少し安心ですね。

専門家が語る「ここはよかった!」

「気になる点」とは反対に、感情の専門家の視点から「ここはよかった!」と思うシーンも聞いてみました。

1. 他者の脳内が覗けるエンドロール

『インサイド・ヘッド』のエンドロールでは、小学校の先生や、おしゃれなクラスメイト、犬や猫に至るまでいろんな人の頭の中が覗けました。

実はこの発想、心理学的に見てもすばらしい描き方だそう。

心理学では「心の理論」といって、「自分以外の他者が持っている心」に意識を向ける視点があるそうです。

映画の大部分はライリー視点で描かれているため、見ている方もライリーに感情移入します。

だけど実際は、ライリー以外の人々も悩んだり、感じたりしています。

「エンドロールで視点の転換ができるおかげで、登場人物それぞれのドラマに気づかされるよさがありますね」と先生は話してくれました。

2. 感情表出の重要性にフォーカスしている

「喜びと悲しみには、その気持ちを表現することで人と人とをつなぐ力がある。"気持ちには引力がある"のが伝わる点もよかった」と先生は語ります。

映画に登場する5つの感情のうち、イカリ、ビビリ、ムカムカは個人で感じ、個人を守るための感情です。

でも、映画でメインに描かれている「ヨロコビ」と「カナシミ」は自己完結的な感情ではなく、気持ちを表に出すことで、他者と共有する力を持っています。

ライリーの「ヨロコビ」と「カナシミ」にまつわる特別な思い出にも、一緒に喜び、励まし合う家族や仲間がいました。

心理学の世界でも、感情表出の重要性は注目されていて「感情を表に出せば、より相手から信頼される」という実験結果もあるそう。

表出の重要性がある「ヨロコビ」と「カナシミ」をメインに描くことで、人と人とがつながっていく映画になっているわけですね。

いかがでしたか?

ちょっと専門的だけど、どれも身近で興味深いお話だったのではないでしょうか。

『インサイド・ヘッド』とこの解説で、ぜひ改めて、あなた自身の心とも向き合ってみてくださいね。

解説:樋口匡貴(感情心理学者、上智大学総合人間科学部心理学科准教授)