Doctors Me(ドクターズミー)- 【医療現場のウソとホント】第1回: メディアに登場する「エンタメなお医者さん」を観察してみよう!

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はじめまして、医師・医薬コンサルタントの宮本研と申します。

普段は千葉県の病院で、ご高齢の透析患者さんを中心に診療しています。また、医師の知見をいかして、製薬・ヘルスケア・IT企業で、人材研修や講演をおこなっています。二足のわらじを履くアラフォー医師として、医療とビジネスの時間を往き来しながら、いろいろなことを考えています。

この連載コラムでは、知っているようで知らない医療の現実を、わかりやすく解説したいと思います。それは、なんとなく見過ごしていることが、本当はとても大切だったり、みなさんの将来に直接関わっていることが多いからです。医師はその重い事実を、多くの方々の生きざまや闘病を通じて、いつも目撃している職業です。

みなさんも、傍観者ではなく当事者としての視点も持てば、もっと健康的で幸せな生き方をめざすことができます。よく学び、よく知り、自ら考えてみる。当コラムをお読みいただき、充実した毎日を送るためのヒントにしていただければ幸いです。

メディアに登場する医師たち

テレビやインターネット、雑誌で見かけるお医者さんたち。みなさんも医師が発信する専門的な情報に触れながら、いろいろな興味をもっていらっしゃるでしょう。私も15年目の同業者として、メディアに登場する医師が語っている内容を、少し心配しながら眺めています。

芸能活動としてテレビ番組のレギュラーを務めていたり、異性とのプライベートを赤裸々に語って注目を集める医師もいます。マルチな才能を発揮し、話がおもしろくて頭がよい医師たちは、さまざまなメディアに取り上げられやすいのです。

確かに、「お医者さん、お医者様、先生」と呼ばれている私たち医師は、日本に30万人ちょっとしかいない特殊な職業です。社会的な地位も高いうえに、本当は何をしているのかが分かりにくい“神秘性”も影響して、ドラマや映画、小説の題材になりやすいのもわかります。

つまり、真相を知ってみたいけれど、外から容易にのぞき込めないのが、私たち医師の世界なのです。

医師は善良な心を求められる職業

また、みなさんが病院やクリニックで見ている医師の姿と、メディアに登場する姿は必ずしも一致しません。「あの先生のこと知っている! でも、あんなに大声で話す人だっけ?」というように、診察室とメディアでは同じ医師でも大きなギャップを感じることでしょう。

私も大手テレビ局の取材を受けたことがあるのですが、強い照明を浴びながらテレビカメラの前で話すのは、患者さんにお話するのとはまったく異なります。いつも患者さん1人ずつに向かい合って対応しているのが、こちらから見えない何十万人、何百万人の視線をいっせいに受けている不思議な感覚でした。

テレビに出ている医師が舞い上がっているように見えてしまうのは、普段は地味な仕事だと自覚しつつも、メディアの主役に抜擢された興奮が抑えられないからでしょう。サービス精神が行き過ぎて、普通の話題を大きくアピールしてしまうこともあるようです。

とはいえ、医療の専門家としてメディアで意見を求められている医師は、知識や経験を正しく伝えようと意識するものです。日頃から“善良な心”を保つことが、医師という職業の基本。メディアでも同じプロ意識を忘れない医師は、公私にわたって幅広い尊敬を集めます。

仕事の評価は他人が決める

本来、医療はエンターテインメントとは真逆の世界にあります。結果的に誰かを喜ばせ、満足させる要素がゼロではないものの、目の前にいる他人の不幸を科学的に解決する世界です。

高度に進歩した医療でも、がんや免疫疾患のように、まだ完全に治せない病気もたくさんあります。患者さんの苦労を目撃しながら、最前線の医師たちは診療でも研究分野でも、難しい課題を解決しようと日夜格闘しています。そして医師としての生涯が社会にどのような結果をもたらしたかは、いつも他人があとで決める宿命にあります。

「明るいエンタメ医師」に見えていても、じつは陰で大変に厳しい努力をつづけているかもしれない。いや、目立ちがり屋なだけで、ありきたりな医学知識を偉そうに披露しているだけかもしれない…

このように、にぎやかなメディアに登場する先生たちを眺めるときは、その向こう側で抱えている葛藤や努力をのぞくつもりでいると、もっと多くの事実が分かってきます。さらには、医師の発言や記事について、積極的に調べてみるといいでしょう。気になった医師の意見をただ鵜呑みにせず、みずからも批評することは、医療への理解を深め、将来の病気予防や治療に必ず役立ちます。

ワンポイントアドバイス

本当に素晴らしい医師かどうかを決めるのは、みなさん自身が社会全体から求められている大切な役割です。医療の主役は、いまや消費者側にいるみなさんですから、受け身な姿勢だけではいけないのです。

出演者と視聴者、医師と患者という二項対立で見るのでなく、どこに本質があるのか、どんな役割を演じているのか、見極める習慣をつけるように心がけてはいかがでしょうか。

〜医師・医薬コンサルタント:宮本 研〜