韓国戦は山口のゴールでドローとした日本だが、どこか攻守に噛み合わない展開が続いた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 8月9日に閉幕した東アジアカップ。ウリ・シュティーリケ監督率いる韓国代表が7年ぶりに優勝に輝いたこともあって、韓国メディアの論調も祝賀ムード一色だ。
 
 各メディアの大会総括もシュティーリケ・コリアの成果と課題で多くが占められているが、「“日本のおかげ”で韓国サッカーが7年ぶりに東アジアカップ優勝」(『MBN』)との見出しもあったほどだ。
 
 韓国の大手ポータルサイト『NAVER』で連載を持つサッカージーナリストのソ・ホジョン記者も言う。
「結果的に大会は韓国の優勝で終わりましたが、勝因のひとつには日本の不振も挙げられるでしょう。ハリルホジッチ監督が就任して日が浅く、準備期間が少なかったこともありますが、記者席で見ていて“日本はどうしてしまったんだ!?”という感じがしました」
 
 中国・武漢でハリルジャパンのサッカーを取材できることを楽しみにしていたというソ・ホジョン記者からすると、東アジアカップでの日本代表は“期待外れ”だったという。
 
「ハリルホジッチ監督になって、日本が“うまさ”から“強さと激しさ”を求めるサッカーへの転換を図っていると伝え聞いていたので、どれだけ変貌したのか楽しみにしていましたが、失望気味の結果でした。北朝鮮戦の立ち上がりや韓国戦の前半など、要所要所では悪くなかったと思います。なかでも中国戦は最も動きが良かった。
 
 ただ、縦に速く直線的な攻撃を仕掛ける意図はあってもどこか噛み合わなかったり、中国戦では肉弾戦まがいの捨て身のブロックで守るシーンがあったり、かつての日本からは想像もできない姿に当惑もしました。監督が求めるフィジカルとスピードに選手たちが追いつけず、選手たちも監督の意図を無理矢理“お仕着せ”られているという印象も受けた。
 
 チームがスタイルを変える時、監督と選手は互いに目指すべき姿を共有すべきだと思いますが、今大会の日本は監督と選手たちの間に意識ギャップがあるように感じました」
 そうした状況が生まれた背景には、ハリルホジッチ監督のアプローチにも原因があったのでいないかと、前出のソ・ホジョン記者は見ている。
 
「以前、韓国代表のフィジカルコーチを務めた池田誠剛さんに取材した時、こんなことをおっしゃっていました。
『その国のサッカースタイルには、その国の歴史、文化、性質などが反映されている。韓国には強さや激しさやスピードという韓国らしさがある。無理に日本の繊細なパスサッカーをしようとすることはない』
 
 つまり、日本には日本の良さもあるわけですが、ハリルホジッチ監督はその日本の良さを置き去りにして、あまりにも劇的に変化させようとしているように映りました。
 
 刺激が強すぎるから副作用もあり、それでいて結果も出ないから不満も出てくる。記者席で不満げな表情を浮かべる日本人記者もたくさん見ましたが、ハリルホジッチ監督も強化日程などの不満を露骨に口にした。そういう状況では好転するはずもない。今回の東アジアカップは日本にとってストレスだけが募る大会のように映りました」
 
 象徴的だったのは、ノーゴールで終わった宇佐美貴史だという。
 
「Jリーグ・ハイライトをよく見ていますが、宇佐美はJリーグでの姿とまったく違った。代表ではフィジカルや運動量を求められているせいか、彼本来の良さが活かされていない印象を受けましたし、彼もイライラしているように映りました」(ソ・ホジョン記者)
 
 もっとも、ハリルホジッチ監督にとっては、新たな発見もあったのではないかとも見ている。
「武藤雄樹ですね。彼はハリルホジッチ監督が好むスタイルの選手でしょう。2得点と結果も残しましたし。今後欧州組が招集されても、“呼びたい選手”になるのではないかと思う。山口蛍や柴崎岳もそうでしょう。Jリーグ勢から計算できる選手が出てきたことが日本の唯一の収穫だったのでは?」
 大会を通じて、Jリーグ勢への物足りなさを指摘する声は多い。韓国のサッカー専門メディア『FOOTBALLIST』も、「同病相憐れむ東アジアカップ4か国、確実なゴールゲッターがいなかった」という記事のなかでこう報じている。
 
「武藤雄樹は2ゴールで得点王。それだけ今大会では目立ったストライカーがいなかった。4か国すべてが選び抜かれた最精鋭の戦力ではなかった。日本の場合、岡崎慎司、本田圭佑、香川真司をはじめとする欧州組が合流すれば破壊力は違っていただろう。
 
(中略)優れた選手は海外に出てしまい、自国リーグでも外国人選手たちがポジションを占めている。アジアサッカーはストライカー資源を確保する過程で難しさを感じている。今大会で東アジア4か国は完璧な9番がいないという同じ問題を共有することになった」
 
 日本だけてはなく、韓国や中国、北朝鮮にも同じような課題を残した今回の東アジアカップ。9月に再開するワールドカップ・アジア予選に向けて、“得点力不足”という課題をいち早く解決することが、日韓の共通テーマであることだけは間違いなさそうだ。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)