史上初の最下位に終わった今大会。ハリルホジッチ監督が「何日か余分に時間があれば違う結果になっていた」と嘆いたように、強行日程と連戦の疲労で、選手たちはベストパフォーマンスからは程遠い状態だった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 引き分け以下で最下位が決まる東アジアカップの最終戦は、中国を相手に1-1のドローに終わった。北朝鮮に敗れ、韓国と中国に引き分けて2分1敗で戦いを終えた日本は、“4か国中最弱”という不名誉な称号を頂いたわけだ。

【マッチレポート】日本 1-1 中国

 連覇を掲げながらのこの体たらくは、ハッキリ言っていただけない。たとえ、欧州組を呼べずに「8人の新しい選手を招集した」(ハリルホジッチ監督)ニューフェイスだらけのチームだったとしても、1勝もできずに中国を後にしたのは屈辱以外のなにものでもないだろう。
 
 敗因はいくつか挙げられる。新戦力が多く、連係がままならなかったこと。Jリーグとの連戦による疲労の蓄積。戦術練習の時間を取れないタイトなスケジュール。あらゆる面での「準備不足」(ハリルホジッチ監督)が足を引っ張ったのだ。
 
 顕著だったのが北朝鮮戦だろう。開始3分に武藤のゴールで先制したものの、15分もすると勢いを失い、次第に主導権を北朝鮮に譲り渡していく。明らかなガス欠で前線からのプレスに行けなくなった日本は、ロングボールを簡単に蹴られ、CBコンビも「CBふたりで相手のFWを見るべきでした」(森重)と集中力を切らして対応を誤っていた。
 
 ロングボールを蹴らせないように出どころを抑えるのか。それとも、ゴール前を固めて撥ね返すのか。その判断を定められなかったのは、なにも足が動かなかったからだけではない。J1リーグ戦の第2ステージ5節から中2日という疲労が、選手の判断力をも鈍らせていたのである。
 
 守備的に戦った韓国戦はともかく、中国との最終戦では前線からのアグレッシブなプレスや最終ラインの果敢な押し上げが見られた。つまり、コンディションさえ整っていれば、ある程度はアグレッシブな戦い方ができたのだ。
 
 つくづく、十分な準備期間を取れなかった強行スケジュールが悔やまれる。こうした状況を生んだ強化部は、今一度東アジアカップに挑むスタンスを見直す必要があるだろう。
 
 今大会を通したチームのパフォーマンスを振り返れば、尻上がりに良くなっていったと言える。足が止まって空中戦で2失点した北朝鮮戦をボトムラインに、続く韓国戦では守備面を修正し、さらに最後の中国戦では攻撃面も向上した。
 
「今日の相手はあんまり前から来なかったですから」と前置きしたうえで、武藤は中国戦の出来について続ける。
 
「それでも今日がチームとして一番内容は良かったと思います。みんながダイレクトでパスをつなぐことや、後ろでのパス回しも、縦に速い攻撃も今日が一番できていました」
 
 中国の3トップがあまり守備に力を注がなかったこともあり、最終ラインやボランチが楽にボールを持てた。また、中国に渡ってから初めての雨天のゲームで心配された暑さも和らいでした。スタミナの消費が軽減され、なおかつ日本の持ち味であるパスワークが活きる環境が与えられたおかげで、主導権を握れたのだ。
 
 それでも、勝利に結びつける2点目が取れなかったのは問題だろう。武藤は同点ゴールで足跡を残したものの、先発した川又や永井、また交代出場の興梠と浅野はおろか、今大会の攻撃の軸と期待された宇佐美もノーゴールに終わっている。
 
「点が取れない時にどう取るか。そういう話はけっこうしましたが、もっと突き詰めていかないといけない。ボールを持ってからなのか、持っていない時なのかは分からないけど、ああいう局面で点を取らないといけないし、そこにまだまだムラがあるというか、身に付けられていない」
 
 宇佐美は個人の出来についてそう振り返ったが、「もっと突き詰めていかないといけない」のはチーム全体としてのテーマでもある。初戦から中2日、中3日で3試合をこなす過密日程のなかで、トレーニングは主に疲労回復に充てられた。紅白戦の時間を取ることすらままならなかったチームに多くを求めるのは酷だが、最後まで明確な攻撃の形を示せなかったのは力不足だと言わざるを得ない。とりわけ、ハリルホジッチ体制下での全試合に出場する宇佐美には、個の力で流れを変えるくらいの強烈なインパクトがほしかった。
 チームとしての結果は出なかったものの、本来の目的である新戦力の台頭という面に目を向ければ、いくつかのポジティブな材料はあった。とりわけ、代表デビューの大会で2ゴールを挙げた武藤と、右SBとボランチをハイレベルにこなした遠藤は大きな発見だろう。
 
 前者は前述のとおり北朝鮮戦で代表初ゴールを挙げ、さらに中国戦でも1点を奪った。いずれもDFとの駆け引きを制してクロスをニアで合わせるパターンで、本人も「自分の良さが出た」と手応えを得ている。「しっかりしたトップ下(の経験)はない」ながらも、広範囲に動いて起点になるプレーは板についており、戦術的な柔軟性の高さを証明した形だ。
 
 後者は右SBとして出場した北朝鮮戦で武藤のゴールをアシストしただけでなく、ボランチを任された中国戦でも「守備に関しては90分通してしっかり行けていた」。持ち味とする1対1の対応はもちろん、ポジションを問わずに縦パスを打ち込む積極性も見事で、大きく株を上げたと言えるだろう。
 
 このふたりの活躍は間違いなく収穫で、今後も継続してチャンスを与えられる可能性が高そうだ。
 
 また、既存戦力で言えば、山口のパフォーマンスは特筆に値する。3試合すべてに先発したこのボランチは、MVPに輝いた前回大会以上の存在感を示したと言っても良い。
 
 韓国戦のミドルが最もインパクトがあったが、見逃せないのは中国戦でのプレーだ。チーム全体として前線からのプレッシングを志向したこの試合で、山口は鋭い出足で相手のインサイドハーフをケア。高い位置でのボール奪取から素早い攻撃へつなげる“前陣速攻”を力強く牽引した。また、3試合フル出場は彼と遠藤、CBコンビくらいで、多くの選手がパフォーマンスを落とした酷暑のなかで高いアベレージを保ったのは、指揮官への絶好のアピールになったはずだ。
 
 この山口と遠藤で構成する2ボランチは、将来性という意味でも面白い。今から世界を見据えた強化を進めるならば、守備力の高いふたりを主戦に据えて育てるのも選択肢のひとつだろう。
 
 一方で不安が残ったのは前線だ。今大会のメインテーマのひとつだった「点が取れる選手」は、少なくともCFにはいなかった。川又と興梠はいずれも不発。確実なボールキープで基点になった興梠はまだしも、北朝鮮戦と中国戦に先発した川又はポストプレーすらままならなかった。
 
 本来、川又の持ち味は、エリア内でピンポイントで合わせる得点感覚だ。今の彼はポストワークに意識を割きすぎるあまり、自分の特長を忘れてしまっているようにも映る。その迷いが解消できなければ、いずれ他の選手に追い抜かれかねない。ひいては、日本代表が抱える得点力不足という課題にも、答を見出せないだろう。
 世代交代が求められるボランチの人材が台頭し、不振の香川の尻を突く新戦力もアピールした。長期離脱が予想される内田の穴埋めとして、ある程度計算できるバックアップの見極めも進んでいる。“B代表”で挑んだ今大会で、こうした次につながる材料を得られたのは、ポジティブに捉えてもいいかもしれない。彼らが今後、欧州組を脅かすような存在になれば、選手間の競争力は上がり、チーム力の底上げにもつながるだろう。
 
 とはいえ、正直に言えば、この大会自体の位置付けに疑問も残る。そもそも、無理のある強行日程を組んでまで、東アジアカップに欧州組不在の“B代表”を派遣すべきなのだろうか。新戦力の発掘がテーマならば、いずれ何人かがA代表に食い込んでくるU-22代表でも良いはずだ。仮にU-22代表よりも上の年齢で見たい選手がいれば、彼らをオーバーエイジ的な扱いで組み込み、ハリルホジッチ監督が指揮を取ればいい。
 
 手倉森監督率いるU-22代表は、来年にリオ五輪の最終予選がある。にもかかわらず、7月のコスタリカ戦を最後に公式戦が組まれておらず、強化は足踏み状態だ。A代表における新戦力の発掘と世代別代表の強化という“一挙両得”を考えても、U-22代表を派遣するほうが後のリターンは大きい。リオ五輪世代の遠藤が最もアピールしたひとりだったのも、その想いを強くさせた理由のひとつだ。
 
「日本のフットボールは、この問題について疑問を持たなければならない」
 
 口を開くたびに日程に注文をつけていたハリルホジッチ監督の言葉は、単なるエクスキューズではない。必要以上に擁護しようとは思わないが、やはり我々も疑問を抱くべきなのではないだろうか。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)