過食、不食と極端にならないのが大切

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俳優の榎木孝明さん(59)が30日間、ほとんど水しか摂取しない「不食」生活を実践して話題となった。無事終了した榎木さんを見て、健康法として有効だとする声も出ている。しかし、「食べない」という行為が本当に健康促進につながるのだろうか。

不食と断食、絶食の違いは?

榎木さんの不食は、文字通り「食べない」生活だった。「断食」や「絶食」とどう違うのか。断食は「本人の意思で食べない」のに対し、絶食は手術や健康診断など、「理由があって食べられない」状態を指す。榎木さん自身は、どちらでもない独自の取り組みとして不食と表現しているが、榎木さんの意思で食べないのだから、実態は断食だ。

その内容は、病院の研究室に泊まり込み、医師の協力のもとで血液検査や検尿、心電図検査を毎日受け、基本的には水だけを摂取するもの。榎木さんが自身のフェイスブック上で公開している「不食ノート」によると、不食生活開始から10日目前後には低血糖でだるさを感じ、コーヒーに砂糖を入れて飲んだり、医師から塩分不足を指摘され塩飴をとっていたと明らかにしている。実践中は「一日の内に体が調子いいときとだるいときが波のように繰り返します」と、常に体調がよかったわけではないようだが、断食生活終了後の取材やテレビの会見では「集中力が増し、本を読むスピードが格段に速くなった。睡眠も深くなり、4時間眠ればすっきり。腰痛も消えた」とアピールした。

榎木さんは健康のために不食を実践したわけではなく、「飽食への疑問」や「自分の意識の改革をしてみたかった」のが動機だったと説明している。一方で、不食生活の結果さまざまな健康効果を感じた点が、大きく報じられたのも事実だ。だがアンチエイジング医師団の塩谷信幸医師は、その効果に疑問を感じるという。

「集中力や本を読むスピード、睡眠の深さなどは、あくまで榎木さんの主観的な感想です。これをもって健康になったかどうかを論じることはできません」

断食後の内臓や脳の状態、骨量、筋量、睡眠中の体温や血圧、ノンレム睡眠の有無を具体的に提示し、以前の状態や健康とされる数値と比較しなければ、本当に榎木さんが健康になったのか判断できないというわけだ。

何日も全く食べない無茶な断食は禁物

30日間にもおよぶ長期間の断食に健康効果を確認したエビデンス(科学的な証拠)は、今のところ存在しない。むしろ、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる、カロリー不足で寿命が縮むといったデメリットを指摘する研究結果が発表されている。

一方で短期間の断食であれば効果があると示唆する研究は複数ある。例えば米フロリダ大学は2015年3月に、断食と「ごちそう」を交互に実施する、具体的には1週間のうち2日だけ断食し、残りの日はカロリーを通常の1.6倍に程度にすると、老化防止が期待できるとする研究成果を発表している。「断食で体重が落ちないよう、断食日以外はカロリーを多めに摂取する」のがポイントだ。さらに完全に食べないのではなく、2〜3日間だけ摂取カロリー量を普段の4分の1にする制限するという「Intermittent Fasting(IF)」という方法も、血糖値や血中脂質の改善、血圧低下、心血管疾患や糖尿病予防効果が期待できるとして、2013年ごろから米国で盛んに研究されている。

ただし、ダイエット目的で一切食べないような無茶な断食は長期、短期にかかわらず禁物だ。血糖のコントロールや代謝機能が乱れ、通常の食事にもどしたとき、体重に大きな変化はなくても脂肪が増加している可能性がある。[監修/塩谷信幸 北里大学名誉教授、アンチエイジング医師団代表]

参考論文
Practicality of intermittent fasting in humans and its effect on oxidative stress and genes related to aging and metabolism.
DOI:10.1089/rej.2014.1624. PMID:25546413

(Aging Style)