最終日首位スタートも3位フィニッシュ…それでもフューリックは前を向いた(撮影:福田文平)

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 今、世界のゴルフファンの記憶に鮮明に残っている「惜敗」と言えば、7月の全英オープンで1打差でプレーオフ進出を逃し、メジャー3連勝の記録を逃したジョーダン・スピースの惜敗だろう。6月の全米オープンで72ホール目に3パットを喫し、目前だった勝利をスピースに譲る形になったダスティン・ジョンソンの惜敗も記憶に新しい。いやいや、ジョンソンの惜敗と言えば、来週に全米プロを控えている今だからこそ、5年前の彼の惜敗も思い出される。
今年の全英オープンで最後のバーディパットを外し、俯いたデイ
 そう、今年も5年前も、全米プロの舞台は米ウイスコンシン州のウイスリングストレイツ。人工的にクリエイトされたあの英国風リンクスコースには1000個以上のバンカーが点在しており、2010年大会の72ホール目にジョンソンがボールを目の前にしていて立っていたのは、そのうちの1つだった。
 だが、ギャラリーに踏み固められ、ペットボトルや紙クズまで散乱していたその場所は、バンカーには見えず、ジョンソンもそこがバンカー内であることをまったく認識せずに4番アイアンを2度もソールしてからショットした。そのせいで2打罰を食らい、プレーオフ進出を逃したジョンソン。ルール委員から説明を聞かされ、黙って頷いたジョンソンの蒼白の表情は、今でも脳裏に焼き付いている。
 しかし、そんなふうに詳細に記録され、人々の記憶にも残っている惜敗は、まだ報われているのかもしれない。というのも、過去のブリヂストン招待でトップ10に9回も入っていながら、ただの1度も勝利をつかめなかったジム・フューリックの惜敗は、人々から意識さえされることはなかった。
 そして今年もフューリックは最終日を首位で迎えながら、ぐんぐんスコアを伸ばしていったバッバ・ワトソンやシェーン・ローリーに追い抜かれ、またしても勝利を逃して3位に終わった。
 もしもフューリックが飛ばし屋のワトソンだけに追い抜かれ、逆転優勝されたのなら、飛距離の出ないフューリックがパワーゲームに負けたという具合に敗因は明確になる。だが、最終的に逆転優勝を飾ったのは、飛ばし屋というよりも正確性とパットが武器で、どちらかといえば地味なタイプ。ある意味。フューリックと似たタイプのローリーゆえ、余計にフューリックが勝てない理由が謎になる。
 45歳のフューリックは世界ランク・トップ10の中で唯一の40歳代。「何年か前までは若者たちに近づくために僕も飛距離を伸ばそうと試行錯誤したけど、やればやるほど飛距離以外のことが悪くなると気付いた。だから僕は、今の僕のまま、今の僕のゴルフのままで勝負していこうと決めた」。
 そうやって地道な努力とベテランなりの熟考を重ねてきたフューリック。それなのに、ついに10度目のチャンスを逃し、またしても惜敗。
 一方、アイルランド出身で28歳のローリーは欧州2勝で世界ランクは48位。今年は米ツアーの正式メンバーになることを目標に掲げ、ノンメンバーリストの121位で今大会を迎えた。「あと一歩で来季の米ツアー出場権が手に入る」。そう思ってファイアストンに挑んだローリーは、72ホールを終えたとき、初優勝と米ツアーの向こう2年間のシード権、メジャー大会、数々のビッグ大会の出場資格も獲得していた。
 似たようなプレースタイルでありながら、ましてや格段にキャリアも浅く、米国の芝にもまるで慣れていないというのに、ローリーはさっさと勝利を飾り、フューリックは惜敗ばかり。その現実をフューリックがどう受け止めるのかが気になった。
 「我慢だよ、我慢。この土日は優勝するに足るゴルフができなかったというだけのこと。なぜ、できなかったのか。なぜ、勝てなかったのか。自分のプレーを振り返り、その答えを見い出すだけのこと。フラストレーション?そんなものは感じていない。『なぜ』の答えを見つける。ただ、それだけのことさ」
 ただ、それだけのこと――フューリックがそう強調すればするほど、10度もチャンスを逃し続けた彼の悔しさが伝わってきた。
 けれど、それが勝負の世界。誰よりも少ないスコアで72ホールを終えること。勝利と惜敗の差は「ただ、それだけのこと」なのだろう。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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