承認されれば、日本でもニーズはありそうだが

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米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は6月4日、「女性用バイアグラ」といわれる薬剤「フリバンセリン」について、FDAに対して承認を促した。初の「合法」女性向け性機能障害治療薬となるか。承認の是非をめぐり期待と不安の声が入り混じっている。

4割以上が効果実感の半面、副作用で入院するケースも

「女性用バイアグラ」または「ピンクバイアグラ」という別名から誤解されやすいが、バイアグラが男性機能不全の治療薬として用いられるのに対し、フリバンセリンは女性の性欲を刺激する薬だ。つまり、女性を「その気にさせる」薬ともいえる。

もともと独のベーリンガー・インゲルハイム社によって抗うつ薬として開発されたフリバンセリンは、ドーパミンとノルエピネフリンという性欲を刺激する神経伝達物質の分泌を促すと同時に、性欲を減退させるセロトニンの分泌を抑制する効果があることから、閉経前の女性の性的欲求低下障害(Hypoactive Sexual Desire Disorder、HSDD)治療薬としてFDAに申請された。しかし、めまいや吐き気、眠気、失神などの副作用に対し、薬の効果が不十分であるという理由で、過去に2回FDAに承認を却下された経緯がある。ある米国の女性団体はFDAに対し、「男性の性的機能障害に対する治療薬はあるのに、女性向けの治療薬がないのは性差別だ」と訴え、フリバンセリンの承認を強く希望している。

1回目の申請が却下された際にベーリンガー・インゲルハイム社から製造等の権利を引き継いだ米スプラウト・ファーマシューティカルズ社は臨床試験を続け、今回、1万1000人の女性を対象に24週間にわたって実施された試験において、フリバンセリンを服用した女性のうち43〜60%が効果を実感したと報告した。しかし、何人かの女性は副作用のために服用を中止し、入院に至ったケースもあったことから安全性を疑問視する意見もある。

ある種の避妊薬やアルコールと同時に服用することで副作用が強まることや、乳がんリスクが高まる可能性も指摘されているが、現在、女性のHSDDに対する治療薬が存在しないことから、FDAの諮問委員会は薬の危険性に対する警告をラベルに明記し、使用法について十分な説明がなされることを条件に、フリバンセリンを承認すべきと判断した。中 にはフリバンセリンがデートレイプに悪用される可能性を懸念する委員もいたが、スプラウト・ファーマシューティカルズ社は「フリバンセリンは遅効性で、眠気を感じることはあっても、正体を失うようなことはない」と説明している。

年齢を重ねてもセックスライフは重要

HSDDは性機能障害のひとつで、「恒常的、または反復的に性行為への関心や性的思考が失われ、それにより悩みや対人関係に問題が生じる状態」をさす。スプラウト・ファーマシューティカルズ社によると、米国女性のおよそ10人に1人がHSDDに悩んでいるという。パートナーに対する性的欲求が起こらず、結婚生活に危機が生じたり、恋人との関係にひびが入ったりと、本人にとっては深刻な問題だ。

アンチエイジング医師団の一人、AAC銀座クリニック院長の浜中聡子医師は、女性用バイアグラが求められている理由のひとつとして、「高齢化が進む中で、『いつまでも女性らしくありたい』と願う人が増えてきたこともあるのでは」と指摘する。「人生を楽しみ、充実した生活を送るためには、年齢を重ねてもセックスライフはとても重要です。女性の場合は閉経してしまうと女性でなくなったように感じ、性的欲求が減ってしまう方もいますし、更年期障害でも同じようなことが起こります」

個人輸入は危険? まずは医師に相談を

日本でも潜在ニーズはあるらしく、ウェブで「女性用バイアグラ」と検索すると、薬品を海外から個人輸入できる通販サイトが数多くヒットする。膣の分泌物を増やすという「ダイフルカン」や、「ウーメラ」「ラブグラ」等、男性のバイアグラと同じ成分が含まれ、不感症やオーガズム不全を改善するなどとうたったものも。これらの薬品の効果や副作用などについて、浜中医師に聞いた。

「ダイフルカンは女性器が濡れることを促進する効果があるので、性交の際に感じるけれど濡れなかったり、そもそも不感症だったり、そうした現状に困っている方が利用するものです。昔からカンジタや膣内酵母菌感染などの治療に使われていたものですので、もともとの効能を知っておく必要もあります。一方、ウーメラやラブグラには、血流を促進するシルデナフィルという成分が入っています。性器の血流を促進しますので、それによって感じやすくなり、絶頂に達しやすくなると報告されています。ただし、吐き気や腹痛、食欲不振、下痢などの副作用報告がありますので、個人輸入等で入手した薬を安易に服用せず、医師に相談することが大切です。また、妊娠希望の方にはおすすめできません」

浜中医師は「性生活に問題を抱えている人は、年齢を問わず、早めに医師に相談してほしい」と強調する。一人で悩みを抱え込んでしまいがちだが、積極的に相談することで問題解決の可能性は高くなる。「薬物療法だけに頼らず、パートナーのEDなどの問題も医師に相談してみるとよいでしょう。もちろん、女性の心身両面の余裕を作らなくては、性生活の改善は期待できません。心地よく健康的な食生活や睡眠、そしてストレスマネジメント。まずは自分の心身のバランスを見直すことが大切です」

フリバンセリンを承認するか否かについて、FDAは今夏の終わりまでには判断を下す見通しだ。[監修:浜中聡子 AACクリニック銀座院長]

(15年8月19日15時40分追記)米食品医薬品局(FDA)は8月18日、「女性用バイアグラ」といわれる薬剤「フリバンセリン」を承認したと発表した。

(Aging Style)