「やわらかん’s cafe」の様子

7月28日にオープンした、スタッフもお客さんもぬいぐるみの「やわらかん’s cafe」。ぬいぐるみスタッフの店長・ヒラメのカレイちゃんらが、持ち主から届けられたぬいぐるみたちに、カフェメニューを提供したり、撮影したデータやおみやげをプレゼントする完全予約制のサービスです。

でも、一体なぜぬいぐるみによるぬいぐるみのためのカフェなのでしょうか。 オーナーの鈴木公子さんにその秘密を聞きました。

ぬいぐるみカフェは4年越しの夢

――ぬいぐるみカフェとは一体、なんでしょうか?

鈴木公子さん(以下、鈴木):ぬいぐるみが持ち主の手から離れて、カフェまでやって来て、ほかの仲間たちと遊んで帰っていただくサービスです。ぬいぐるみがランチを食べたり、みんなと遊んだりして、人間のように楽しんで帰って来るっていう、一連のストーリーを持ったエンターテインメイントになっています。今は、月に1〜2回開催を予定しています。

――なぜオープンしようと思ったんですか?

鈴木:今のカフェの店長・ヒラメのカレイちゃんが汚れてきて、洗ってあげたいと思って、仙台にあるぬいぐるみのクリーニング店にお願いしたことがあります。ここは、ぬいぐるみへの理解がすごくあって、到着すると専用の掲示板に到着の写真をアップしてくれて、今自分のぬいぐるみがどんな様子なのかが手に取るようにわかるんです。ぬいぐるみ好きな人たちは、大好きなぬいぐるみが自分の元から離れていると辛いんですが、このお店では、経過を見せてくれるので安心できるし、素敵だなって思ったんです。

さらに、クリーニングだけでなく、近所の公園に遊びに連れていってくれている写真もアップしてくれていて、いつも一緒のぬいぐるみが、自分から離れて、遠くの地で楽しんでいる姿をウェブごしに見るのがたまらなく嬉しかったんですよ。この嬉しかった経験から、自分と同じような“ヌイグルミスト”(大人になってもぬいぐるみが大好きな人)の方々になにかサービスができないかなって思って模索したんです。途中、旅に出るツアーもやりたいと思ったんですが、子供ができたこともあって、自宅でできるサービスを考えてカフェに至りました。

――カフェオープンまでのいきさつを教えてください。

鈴木:前に、おもちゃ会社でぬいぐるみの開発などをやっていたのですが、ぬいぐるみだけが旅に出るツアーも企画して、旅行会社さんにも提案したこともあったんです。でも、やっぱり人が動かないとダメってことで断られてしまって……。だから会社を辞めたらいつか自分でやろうって思ってました。そしてツアーの方向を模索して、ぬいぐるみを旅行に連れていくウナギトラベルさんにお話を聞きに行ったりもしました。

それから、武蔵小山創業支援センター主催の「ウーマンビジネスグランプリ」っていうビジネスコンテストがあるんですが、2013年に応募してファイナリストに残り、約200名の前で震えながらプレゼンして、立正大学経営学部賞、週刊ダイヤモンド賞、オーディエンス賞を頂きました。その時は、まだ子供もいなかったんでツアーの企画だったんですが、そのコンテストでとても好評だったんで、これはいけそうだなって思って。いざやるぞって時、お腹に赤ちゃんがいることがわかって、2年間ほどお休みをしてからオープンしました。なので、会社員時代の企画から数えると4年越しの夢ですね。

鈴木公子さん

大人になってもぬいぐるみを愛する人の味方でありたい

――ヌイグルミストとは、一体どんな方たちなんでしょうか?

鈴木:ぬいぐるみと生活を共にし、ぬいぐるみに話しかけたり、一緒に寝たりごはん食べたりしている大人の女性です。当初は、20〜30代の女性がメインかなと思っていたんですが、フェイスブックの広告を入れてみたら40代の方もかなり反応してくださり、年代は広く考えていこうと思います。

ぬいぐるみと一緒に寝たり、ごはんを食べさせたりという行動は、ぬいぐるみを好きではない方にとっては理解できないのが一般的だと思うんです。ヌイグルミストの方は、純粋にぬいぐるみが大好きなだけで、「理解を得られない」、「嫌われる」、「変だと思われるかも」などのコンプレックスを持っていて、「私だけかも」っていう孤独な思いをしています。私がカフェをやって理解者となることで、ヌイグルミストの不安や悩みを解消し、少しでも安心感を持ってもらいたいと思っています。「いくつになってもぬいぐるみを好きでいいんだよ」って言ってあげられるようになりたいです。

――ヌイグルミストにとってのぬいぐるみの存在とは?

鈴木:ひと言でいうと家族ですが、ブログでヒアリングした時には、子供やペット、友達みたいとか、なかには神という方もいて、少し分散している感じでした。

――お出かけやカフェでのおもてなしをすることによって、ヌイグルミストたちはどういった感情に?

鈴木:ぬいぐるみは、自分の手で支えて、動かすことによって、ようやく動いてみえるわけですが、このサービスを通してぬいぐるみをウェブごしに見たときに、この子はやっぱり生きているんだみたいな、生命体としてきちんと行動しているのを確認できます。この瞬間、ものすごく感動するんですよ。

あとは自分のぬいぐるみがかまってもらえるところ。ヌイグルミストたちは、「自分は変なのかもしれない」って悩んで生きています。けれど、自分のぬいぐるみが誰かに○○ちゃんって名前を呼んでもらえると、自分の分身が認めてもらえる=自分自身も認めてもらえたような気持ちになるんです。

ぬいぐるみが生命体として行動しているように見える、かまってもらえている、受け入れてもらえている、この3要素がポイントなんじゃないかと思います。

時給100円でもぬいぐるみたちをおもてなし

――手作りカフェメニューや、撮影データのプレゼントなど14個のコンテンツを、1泊3日で体験できるようにしたのは?

鈴木:ヌイグルミストの方にとって、ぬいぐるみと離れている時間は不安でたまらないものです。だから、できるだけ早く返してあげたいと思っていて、限られた時間の中でたくさんの楽しくて嬉しいことをできるように、事前の準備、段取りをしっかりして、3日でお返ししたいっていうのがこだわりです。

――今後、ぬいぐるみ専用のカフェをどのように展開していきますか?

鈴木:毎回同じじゃつまらないので、その回特有のイベントだったり、来てくださるぬいぐるみの性格にあったサービスを盛り込んでいきます。第1回目はグランドオープンなので、お客様にお花とはさみを持っていただき、テープカットをしました。口になんでもいれちゃうっていう可愛い特徴の子が来てくれまして、カットしたテープのお花を口に入れて食べちゃうシーンを撮影しました。ぬいぐるみの性格に合わせてプランを考えて、その体験を感動につなげていきたいです。

――セットプランが4968円(税込)だそうで。これを月に1〜2回開催、1回4組となると、ビジネス的には厳しいのでは?

鈴木:ドキッ(笑)。ビジネスとしての利益はほぼないですね。準備などを考えると、私の時給も100円くらいかと……(苦笑)。子供がいるのでできる範囲でというのと、ひとつひとつのサービスが丁寧にできるように、このくらいのペースから始めていこうと思っています。今後は、ディナー&バーの開催や価格も検討していきたいと思いますが、やはり私と同じ、ヌイグルミストの方々に幸せを届けることが一番大事なことだと思っています。

カフェを利用するともらえるポイントカード、コースター等

(船橋麻貴)