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原作から改変された設定やキャラクターをめぐり、様々な意見が噴出している映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』。同作の評価をライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんが語り合います。

酷評大喜利になってるけど、意外とよかったのでは?



藤田 実写版『進撃の巨人』は公開初週の興行成績、首位だったらしいですね。土日だけで46万人動員したとか。

飯田 世間では「酷評大喜利」みたいになっていて、ほめる側よりもけなす側に回ったほうがおいしい気もしますが……僕は楽しめました。前編のアラは後編で巻き返して回収してくれるはず、という淡い期待も込みでの評価ですが。あと僕は、ひとが無意味に殺されまくる映画が無条件に好きなので! ……そのへんはさっ引く必要があるかもしれません。
 樋口真嗣監督の新作映画と思えば全然ありでは? 原作ファンが怒るのもわかりますが、パニック映画としてよかった。

藤田 『進撃の巨人』は、映画評論家の前田有一さんが「40点」と酷評して、樋口監督がFacebookで「友達限定公開」で怒ったのが流出して、ちょっと炎上しましたね。ぼくの評価としては、「40点ではない。しかし満点でもない」という感じです。
 確かに、ドラマパートの演出は微妙だったし、最初の市場の描写とかも予算と人数がかかっているのにバタバタした演出で「大丈夫かな」と出だしは心配しました。ただ、巨人が出てきてからはパニック映画としてよくできていて、そんなのは全然気にならなかったです。日本のSF実写映画の惨憺たる歴史を知っている身からすると――期待しては泣かされ、という感じですが――本作が、水準以上の作品であることは間違いないです。
 巨人と戦う側の立体起動装置を使ったアクションも、立体的なカメラワークが出来ていて、気持ちよかった。ロケ地の軍艦島も、いい感じにマッチしていて。

『大日本人』? いやいや巨大ゾンビ映画でしょ!



飯田 巨人がまるで『大日本人』じゃないかとか言われてたけど、『大日本人』がこういう映画だったら僕は全然評価してたよw

藤田 エレンの家にゴミとか投げ込まれたり落書きされたりするんですかw 『進撃』はどちらかといえばホラー映画ですよね。あの巨人の気持ち悪さは独特で、いい味出していました。

飯田 もともと『進撃』に出てくる巨人は「でかいゾンビ」だと言われていたけど、ホラー映画だと思えば、だめな連中が次々と無残に死んでいくのも「そういうもの」かなと。

藤田 「ゾンビ」モノには、たしかに似ています。資源のない世界で、生き残るために、壁を作って、壁の向こうの他者と、壁のこちらの「われわれ」にわかれる。ぼくはこれを、21世紀初頭のエンターテイメントの基本形である〈ゾンビ・フォーマット〉と呼んでいます。『猿の惑星 新世紀』とか『パシフィック・リム』もその構図ですね。

飯田 壁がショッピングモールの内と外を分けてるものだと思えばゾンビ映画フォーマットだよね。

藤田 ですよね。

『進撃の巨人』も『マッドマックス』だ!



飯田 以前、園子温版『リアル鬼ごっこ』は『マッドマックス』だ! と言ったけど、実写版『進撃の巨人』も『マッドマックス』だったよね。どうも核戦争とかあって文明が衰退した未来を舞台にしているし、アルミンが不発弾の表面に描かれた海を見て水がたっぷりある未知の場所にあこがれるし。ということは、壁の外の世界は砂漠になっているはず。あの世界の巨人は一部、人間が乗って操縦してるわけだけど、超大型巨人はイモータン・ジョーなわけですよ。巨大な乗り物でブイブイ言わせて蹴散らすと、下っ端が山ほどウヒャー! ってやってくる。

藤田 もう、なんでも『マッドマックス』にこじつける芸風でいくんですか?w 確かに、壁から外に車で出たときの描写とか独自の情感があって。あそこに『マッドマックス』っぽさがあると言えばありますが、荒地を乗り物で走っているという繋がりですよね。

飯田 巨人が人間食うのは、口になんか塗りたくるためだと思うんですよ。ウォーボーイズと同じなの、あれは。

藤田 ぼくは『マッドマックス』説には乗りませんよw 『進撃の巨人』が『マッドマックス』と違うのは、物質の欠乏感ですね。人類の「最後の火薬」って言ってるけど、あの世界にある色々なものを組み合わせたら作れないわけないんじゃない? って気がしてしまう。そこが『マッドマックス』よりも感情移入しきれない部分。
 ツッコんじゃいけないお約束だと分かっていますが、火薬の原料もないぐらいに追いつめられているのに、女優の髪型が綺麗に整っているので、「その整髪料の原料でとかで火薬作れるよ!」って思っちゃう。

飯田 桜庭ななみ(サシャ)がかわいかったので、そこは目をつぶりました。サシャがイモ食ってるスプーンになりたいです。

藤田 ちょっと性癖がマニアックすぎて、何を言っているのかわかりません。

アクションができる俳優を犬死にさせる豪華キャスティング



藤田 ドラマパートで退屈させてうんざりさせるのは、むしろ「破壊するヤツ」に感情移入させる作戦なんじゃないかとも思ったんですよ。

飯田 戦いの悲惨さを伝えるという意味では、連中のダメっぷりは機能してますよw

藤田 だからこその「巨人キター!!」感はありますよね。「もうこいつらやっちゃってください、巨人の先生!」っていう。特に、いちゃいちゃしたやつから死ぬというホラー映画の文法を踏襲していると思った。

飯田 そうそう、エレンたちと同じく壁外に調査に行くメンバーであるフクシとリルは脳が湧いてるバカップルとして出てきて、死ぬ。だけどフクシは渡部秀で、リルは武田梨奈でしょ? なんでアクションできる俳優をキャスティングしといて見せ場ないまま殺しちゃうの?

藤田 いや、リア充は即座に惨殺されないと駄目ですw それがホラーの世界のルールですw

飯田 渡部さんは仮にも仮面ライダーオーズ/OOOですよ? 変身してガタキリバコンボで巨人のうなじを鋭利な爪で切り裂くとか期待するわけじゃないですか。渡部さんの前にいつアンクが出てきてオーメダルを投げてくれるのかと思ったらそんなこともなく半身ちょんぱして死んじゃう。絶対ちんこ勃起したまま死んだよね?

藤田 知らんですよw

飯田 おじいちゃんに「男はいつ死ぬかわからない。パンツだけはいいもんはいとけ」って言われて忠実に実行していたオーズが、パンツの見せ場もなく死んだ!!! 東宝は東映ヒーローに冷たすぎる……。死んで幽霊になったフクシには『仮面ライダーゴースト』に新垣隆さんとともに登場することを期待するしかないですね。

藤田 あそこで仮面ライダーの力に覚醒されても意味わかんないでしょw 作品の次元を超えて力を発揮されたら『アベンジャーズ』になっちゃいますよw

飯田 武田梨奈も空手家として有名なのに、最大の見せ場はクルマで特攻ですよ? 頭突きで瓦割れるすげえ女優なのに、頭突きの見せ場がクルマの運転席奪うために使うくらいでもったいない。せめて渡部さんの勃起ちんぽに頭突きしてほしかった。

藤田 いっそのこと、頭突きで巨人を倒せるキャラにまでしちゃえばいいのかもだけど、そうしたら完全にギャグですよw

飯田 『Gガンダム』の東方不敗みたいに素手で巨人倒すやつがいたっていいんだよ!

藤田 斧で足を切って倒したり、投げたりするやつがいたので、立体起動装置以外の殺し方のバリエーションを描く意志はあったと思いますけどね。

飯田 ググったら、dTVの番外編ドラマでフクシとリルのエピソードも描かれるみたいですね。そっちではちゃんとアクションしてくれているはず!!

ドラマパートは、なかったことに



藤田 キャラとドラマはどうでもいいんですよ。ハリウッド映画だってひどいもんですよ。 ぼくがこの作品を観て、思い出したのは、『スターウォーズ エピソード2』。CGやアクションがやたらすごいのに、ドラマパートの、後にダースベイダーになるアナキンと、お姫様の恋の描写が、ありえない。お花畑で二人でごろごろころがったりしてキャッキャウフフしてる。

飯田 あー……。

藤田 その「ドラマ」に「くせー」と思ったら、負けなんですよ。もう、「CGスゲー」「街スゲー」とかに意識を集中しないとw 『進撃の巨人』のドラマパートや、恋愛パート(最初の動機付けの部分)には、それを感じました。巨人が襲ってきたからの絵がすごいから、帳消しにしよう、脳内で編集してなかったことにしよう、と。

飯田 「なかったことにしよう」www

藤田 人間の心理を描くなら文学の方が緻密でダイレクトですからね。映画には、あまりそこは期待せず、映像を優先する態度でもいいかなって。

飯田 最近のハリウッド映画っぽいかと言われると微妙だけど、でもあのビッチキャラのヒアナとかはアメリカの低予算映画だと思えば納得。むかしのドライブインシアターとかで流れる映画に出てきそう。エレンに胸を突然揉ませるヒアナは、後先考えられないヤリマンかセックス依存症だからシングルマザーになっちゃったと解釈しました。きっとテストステロン(男性ホルモン)が異常に分泌されていて性欲が男子中学生くらいある。
 マジで考えたのは、それか兵士はみんな男女問わずホルモン注射されてるんじゃないかと。男性ホルモンがギンギンなので性欲マックスだし、巨人に立ち向かう攻撃欲求も生み出されていると。それでみんなサカってる。

藤田 いや、なんか、ぼくからすると、飯田さんがサカっているような気が……

『ローレライ』の、潜水艦で原爆撃墜するのに比べたら……



藤田 ところで、世界観が原作では中世風でしたが、映画版は日本の近代に寄せてきましたね。出撃のところは、どことなく第二次世界大戦の日本っぽい描写になっていた。人形を渡したり、兵士に志願する理由が貧しさだったり、農村の口減らしで送られたりとか。敢えて、日本の第二次世界大戦の頃を彷彿とさせる描写を入れてきていましたよね。

飯田 たしかに。戦争映画っぽい。それで軍艦島だからなあ。一部の韓国人がまたわーわー言いそうですね。あ、僕は嫌韓ではないですが。

藤田 建前かもしれないけど、反戦映画的な部分もあった。それは同じ樋口監督の『ローレライ』などに感じた「ガチ右傾化じゃね?」っていうハラハラする感じに比べて、安心した部分でした。『ローレライ』と比較するならば、樋口真嗣という監督が、日本の特撮実写SFの王道を担っていく実力を着実に付けたことがはっきりわかります。
 ぼく、『ローレライ』には劇場にお金払って見に行ったので、文句言う権利あると思うんだけど、『ローレライ』では、撃たれた第三の原爆を、潜水艦から撃墜するんですよw 潜水艦が下から浮かんできて、空に向けて魚雷みたいなの撃って、当てるw さすがにこりゃ無理でしょ〜〜〜???って、劇場で、唖然としてたw

飯田 『ローレライ』の話はいいよw

藤田 いや、『ローレライ』重要! 他にも、敵の艦隊がたくさんいて、それと一隻の潜水艦で戦うんだけど、どうするんだと思います? なんか先頭の一隻に攻撃当てて、それが斜めになって、次の船にぶつかって、ドミノ倒しみたいに全部やっつけるのw

飯田 www

藤田 「いくらなんでも、そりゃないよ、フィクションのリアリティとして、タガが外れちゃってるよ」っていうところが多くて。『進撃の巨人』は、それがかなり少なくて、安心して見られました。

シキシマさんがおもしろすぎる件



飯田 リアリティと言えば、ニセリヴァイのシキシマさんは中学生が考えたような中二病キャラで、おもしろかったですね。立体機動装置使って宙に浮いてるし、存在感的にも浮いてるし。あんなのにミカサを寝取られたら、エレンが発狂しちゃうのもわかる。中山美穂が辻仁成と結婚したときくらいびっくりですよ。歯が浮くようなクサいセリフになびく女が実在した! という衝撃。

藤田 わざとらしくカッコ良すぎるキャラですよねw そういえば、哲学の引用ゼリフも中二感がすごかったですね。

飯田 はいはいニーチェニーチェみたいな。押井守ほど振り切れていないのが痛いw

藤田 でも哲学のセリフを言ってるとモテるんだったら、ぼくもモテるようになるはずなので、その風潮は、応援します!w 「現存在はこの世界に被投され……」とか、いくらでも言えますよ!

 ところで、ミカサは寝取られたの決定なんですか? ぼくは別にそうだと確定的な描写があったとは確認していないんですけれど。
飯田 違うのかなあ? ヤってるかどうかはわかんないけど、あの世界観だと性的なゆるさはすすきのレベルでしょ?

藤田 知らんですよw しかもさりげなく北海道disるのやめてください。実際に描かれたものとして、あの世界の中で性的にゆるいのは、バカップルとシングルマザーだけでしょう?

飯田 だって、サシャがアルミンに餌付けされただけであんだけなびくんだよ? イモ一個でセックス一回くらいしてますよ、絶対。娯楽もないし、食糧もないし、セックスしか楽しいことないよ!!

巨人同士のバトルになる後編に期待!!!


藤田 このあと巨人同士でやりあうのかと思うと、後篇は楽しみですよ。街の破壊のパニック映画、ホラー映画が前篇だとしたら、後篇は待望の怪獣大決戦。巨人vs巨人。『パシフィック・リム』に対抗する日本映画の本気が、ようやく見れる。楽しみにしています。

飯田 巨人になったエレンはよかったよね。僕も後編の巨人バトルは楽しみにしています。

藤田 「巨人は人間が操縦している」という設定はよかった。「え? ロボットモノみたいな感じだったの?」って、ちょっと驚いてしまって。「エヴァ」とか「巨神兵東京に現わる」を想起してしまいましたよ。

 映画版の『進撃の巨人』を、原作とかキャラへの思い入れで批判するのは、気持ちはわかるけど、重要なところを楽しめなくて損していると思いますよ、冒頭の街が襲われるシーンとか、巨人の造型とか、闘いとか。冒頭で教会が血まみれになるシーンとか、ぼくはグっときましたよ。これは、怪獣映画とか特撮映画として、可能性を評価しなければならないんですよ。そうしたら、決して失敗している作品ではない。決して満点ではないけれど。

飯田 そうそう。ゾンビ映画で怪獣映画だと思えば。後編はいっそ人類絶滅エンドがいいなあ。

藤田 じゃあまた、後編公開時に続きをやりましょう。そのときに、この世界が淫乱かどうかも、ちゃんと決着つけましょうよw