見応えに欠けたこともあり、韓国メディアの見出しにも手厳しい言葉が並んだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 8月5日に行なわれた東アジアカップの日韓戦は、1-1のドローで終わった。韓国メディアの第一報は、次のようなものだ。
「韓日戦、残念な1-1のドロー」(『朝鮮日報』)
「シュティーリケ監督も打ち破れなかった韓日戦無勝利ジンクス」(『スポータルコリア』)
 このように、概ね引き分けに終わった結果を惜しむようなものが多かった。
 
「もどかしかった90分、韓国、日本に1-1の引き分け」と題した『エクスポーツ』などは、「チャン・ヒョンスのPKのあと、期待したゴールは生まれず、1-1のまま多少退屈なまま試合は終わった」と、締め括ったほどだ。
 
 今回の日本戦で韓国は初戦の中国戦から先発を8名入れ替えたが、「もどかしかった2列目、8人交代は毒だった」(『スポーツ朝鮮』)とし、『OSEN』に至っては「キム・ミヌ、イ・ヨンジェのJリーグの翼、残念な“失敗”」と手厳しく報道。内容も、「(2選手とも)期待したほどの活躍はなかった。イ・ヨンジェは問題が多く、キム・ミヌは一生懸命に走ったが、それだけだった。日本でプレーしながら相手のことをよく知っている」と辛辣だ。
 
 韓国のシュティーリケ監督は多くの選手をテストすると公言していただけに、ある程度メンバーの入れ替えは予想できたが、『エクスポーツ』は「実験のために選ばれた選手たちが役割を果たせなかった」と論じ、「韓日戦で過度な実験は無理だった」と結論づけたほどである。
 
 もっとも、先発の大幅入れ替えは韓国だけではなく、ハリルジャパンも同じこと。『エクススポーツ』は、「緩すぎたライバル戦、韓日両方ともに息が合っていなかった」と指摘。シュティーリケ監督を非難する声はないが、「宿題を残したキム・シンウク活用法」(『聯合ニュース』)「方向・目的を失ったクロス、高さを活かせなかった」(『GOAL.COM』韓国版)と、勝ち切れなかったチームの課題を指摘する記事も目立っている。
 そんななかで目を引いたのが、意外なハリルジャパン評である。韓国から見ると極めて守備的だったハリルジャパンの戦いぶりについて、シュティーリケ監督は「日本は怖がってラインを下げていた」と語り、選手たちは驚きともやや拍子抜けとも取れる感想を漏らしている。
「日本が後ろに引くとは考えてもいなかった」(チャン・ヒョンス)
「守備的に来るとは予想していなかった」(チョン・ウヨン)
「今日の日本はいつもよりも我々を恐れているようだった」(イ・ジェヨン)
 
 選手たちはこう語っているが、韓国メディアも日本の戦いぶりに驚きを隠せないようでもある。
 
 例えば『エクスポーツ』だ。「日本はなぜボール支配率を捨てた“アンチフットボール”をしたのか」と題した記事の中でこう分析している。
「日本は韓国との試合でボールポゼッション率だけはいつも圧倒的だった。しかし、今回は違う。自らそれを捨て、全員が守備に重点を置く“アンチフットボール”をした。そこにはハリルホジッチ監督と日本のさまざまな事情があるのだろうが、結果よりも自ら引いたという事実が日本にはもっと痛恨だろう。負けたとしても果敢に挑戦する勇気が不足していた。シュティーリケ監督が“日本は怖がっていた”という評価はそれを指摘している」
 
 ただ、同じ韓国メディアでもサッカー専門メディア『FOOTBALLIST』の見解は異なる。「実利を選んだ日本、だからこそもっと怖い」と題した記事で、同メディアはこう評価しているのだ。
「こんな日本は初めてだ。以前だったら想像もできない“労働者型”のサッカーをした。ただ、これまでが正常ではなかったのかもしれない。勝敗の命題よりもスタイルと哲学に執着し、結果に対する勝負欲よりも自分たちのプレーに集中することがまず先だった。それは美しかった半面、勝てるチームではなかった」
 
「現時点での代表チームの戦力を評価するなら、韓国のほうが日本を上回っている。だが、ハリルホジッチ監督は就任してまだ半年も経っていない。それを加味すると、北朝鮮戦と韓国戦で選手たちが見せた戦術遂行能力は驚くべき水準だ。これからもっと時間を費やしたあと、どう変化するかは分からない。韓日戦で明らかなったのは、彼らが勝利のために手段と方法を選ばないチームに変化しようとしている事実だ」
 
 3試合連続で勝てず日本ではなにかと厳しい視線にさらされているハリルジャパンだが、韓国のほうが意外と評価が高いのかもしれない。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)
 
 
慎 武宏
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。