北朝鮮戦に比べて守備は安定。守護神の西川も身体を張って韓国の攻撃を防いでいた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 守りを固めて、少ないチャンスに賭ける。韓国戦を振り返れば、日本はいわゆる“弱者のサッカー”を展開したと言っていいだろう。

【マッチレポート】日本 1-1 韓国

 ただ、決してネガティブな選択肢ではなかった。ハリルホジッチ監督がボヤく「準備期間の短さ」、連戦や移動での疲労、新戦力を組み込むうえでの連係面の未熟さを考えれば、堅守速攻は現実的な戦い方だった。
 
 実際、守備陣は90分間に渡り集中を保ち、長身FWのキム・シンウクに仕事をさせなかった。アンカーに抜擢された藤田は、トップ下のジュ・セヨンをマンマークして決定的な仕事をさせなかった。結果的にPKで1失点したものの、ロングボールで逆転負けした北朝鮮戦の反省をきっちりと活かした形だ。
 
 問題だったのは、「縦に速いサッカー」を志向した攻撃面だろう。「就任して以来、最もチャンスが少ない試合だった」とハリルホジッチ監督が話したように、決定機はわずか。ゴールは山口のミドルによる1点のみだった。ロングボールをキープするなど最前線で孤軍奮闘していたCFの興梠も、周囲のフォローに恵まれずスローダウンするシーンがほとんどだった。
 
「相手の背後を効果的に狙えるほど、動きや技術のクオリティがなかった。そのために背後にボールが出せませんでしたし、カウンターでチャンスを作り出す可能性も低かったということです」
 
 ハリルホジッチ監督がそう言うとおり、確かに「クオリティ」に問題があった。何度か迎えたカウンターのシーンでは、イージーなパスミスが目立った。自分たちでチャンスを潰していたと言えなくもない。
 
 
 
 とはいえ、あの猛暑のなかで、あれだけ守備に走り回ったうえで攻撃に出て行けというのは、少々酷な気もする。自陣深くまで戻って相手SBをケアした両ウイングにとっては、ハードルの高い注文だったし、柴崎と山口の両インサイドハーフもスペースを埋める役割を任されていたため、どうしても前線に出て行く出足は鈍ってしまう。

 「なかなか近くでプレーできなかったし、みんな守備で疲れちゃったのでね」と興梠が言うように、攻撃が停滞したのはある意味当然。点を取りに行くのであれば、指揮官はなにか別の手を用意すべきだったのかもしれない。
 
 もっとも、ハリルホジッチ監督にとっても計算外だったと言えるのが、途中交代で入った選手たちの低調ぶりだ。韓国の運動量が落ちて来た70分に永井に代えて浅野、78分には興梠に代えて宇佐美とフレッシュな選手を入れたにもかかわらず、彼らはこれといって大きな仕事をできなかった。
 
 前半に「何人かの選手は疲労を抱えていたので、我々はある程度リアリストになる必要があった」(ハリルホジッチ監督)と割り切った戦い方を選んだのであれば、勝負の後半に出てくる切り札に求められるのは試合を決定付ける働きだ。槙野と森重のCBコンビ、アンカーの藤田を軸とした守備が安定し、尻上がりに日本ペースになっていった展開だっただけに、川又を含めた交代選手が機能しなかったのは悔やまれるばかりだ。
 
 韓国戦で噴出したのは、あらゆる意味での攻撃面の課題だろう。消耗を強いられる環境のなかで守備ブロックを下げれば、それだけゴールは遠くなり、前線の選手たちのプレー精度も落ちてしまう。もちろん、簡単なミスをした選手たちの落ち度は責められるべきだが、機能しなかった「縦に速いサッカー」にも大きな再考の余地が残されている。
 
取材・文●五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)