中谷元ホームページより

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 広島に原爆が投下された8月6日を前に、安保法制のとんでもない正体が露わになった。参院特別委員会で、中谷元防衛相が"自衛隊による核兵器の輸送も法文上排除していない"と明言したのである。また、後方支援活動として核兵器を搭載した戦闘機や原子力潜水艦への給油活動ができることも認めた。

 安保法案では自衛隊による「弾薬」の輸送が可能となり、今、国会では何が弾薬に当たるかが議論になっているのだが、今回、中谷防衛相は「核兵器は核弾頭を持っており、分類は『弾薬』に当たる」、だから法律上は輸送できると答弁したのだ。

 言うまでもないが、核爆弾や核ミサイルは史上最悪の大量破壊兵器だ。爆発で発生する衝撃波や熱風による甚大な被害だけでなく、放射性物質をまき散らし、長年にわたって大地を汚染して、白血病などの原因になると指摘されている。

 安倍政権は、そんな非人道的兵器を"「弾薬」であって「武器」ではない"などと明言したわけである。じゃあ聞くが、安倍首相がしきりに危機感を煽っている北朝鮮のミサイルも、中国の核兵器も「武器」ではなく「弾薬」なのか? 「北朝鮮は弾薬を保持しています」とか「中国は我が国に弾薬を向けています」と言い換えてみればいい。彼らの主張のデタラメさがよくわかるはずだ。

 まさに、安倍政権と安保法制の恐ろしさに言葉が出ないが、もうひとつ愕然としたのがマスコミの報道姿勢だ。当然、この発言にメディアが一斉に批判の声をあげると思いきや、厳しく追及したのはテレビでは、『報道ステーション』(テレビ朝日系)と『NEWS 23』(TBS系)だけで、全国紙では毎日新聞くらい。

 NHKはなんと、ウェブニュースサイトで〈中谷大臣 核兵器運搬「ありえない」〉と真逆の見出しをつけたうえ、こう報じたのだ。

〈中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣は、外国軍隊への後方支援での武器や弾薬の輸送について、法案上は核兵器の運搬も排除されないという認識を示しましたが、「非核三原則があるので想定していないし、ありえない」と強調しました〉

 読売新聞も同様で、〈核兵器輸送「あり得ない」...中谷氏、明確に否定〉という見出しのもと、〈核兵器の輸送や核兵器を搭載した爆撃機への給油について、「法文上は排除していないが、想定していない。我が国には非核三原則があるのであり得ない」と明確に否定した〉と書いた。

 たしかに、中谷防衛相は「非核三原則があるのであり得ない」「要請されても拒否する」などとも発言していた。しかし、今回の問題の本質は、現時点で中谷防衛相がどう考えているかではなく、法制上、核兵器輸送も可能になるということだ。

 現行の周辺事態法やイラク特別措置法などでは「武器(弾薬を含む)の提供を行わない」として禁じられている。これが安保法案では"弾薬は消耗品であるから武器ではない"という解釈になり、自衛隊による「弾薬」の輸送が可能となる。

 そして、今国会の政府答弁からは"ありとあらゆるもの"が「弾薬」とみなされていることが判明している。手榴弾をはじめ、ミサイル、そして非人道兵器であるクラスター爆弾や劣化ウラン弾までもが「武器」ではなく「弾薬」扱いとなり、自衛隊による提供・輸送が可能だと答弁しているのだ。

 核兵器輸送発言はその延長線上で出てきたものであり、明らかに将来、「自衛隊が核兵器を運搬する」という可能性を残すものだ。だからこそ、中谷防衛相は「法文上、排除しない」と付け加えたのである。

 それを、「核運搬ありえない」などと報道するのは、明らかに安保法制で核兵器の輸送は不可能というように読者をミスリードしようとする意図があってのことだろう。

 NHKや読売が安倍政権べったりというのはわかっていたつもりだったが、まさか法案を通すために、ここまで露骨な印象操作を行うとは......。

 しかし、国民は安倍政権と御用メディアのこういう姑息なやり口に騙されてはいけない。繰り返すが、今回の問題の本質は、安保法制によってあらゆるものを弾薬扱いにして、それを自衛隊が運べるように法設計ができている点にある。中谷防衛相は国会で、安保法案で「武器」の提供を除外した理由を「アメリカからのニーズがなかったから」と答弁している。ようするに裏を返せば、アメリカ様の要請があれば、核ミサイルでもクラスター爆弾でもなんでも輸送・提供するということなのだ。

 アメリカから原爆を落とされた国が、アメリカの核兵器を運ぶ......まるで悪夢のような話だが、これが、安倍首相が執着する安保法案だ。

 原爆投下から70年になるが、いまだに原爆症で苦しめられている人たちがいる。安倍首相は、いったいどのツラを下げて平和式典の壇上に立つつもりなのだろうか。
(宮島みつや)