イメージ画像は『朝日新聞』2014年8月5日朝刊より

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 またもや、朝日新聞がネトウヨから総攻撃をくらって炎上中である。パリ在住の朝日特別編集委員・冨永格氏が、8月2日、個人のツイッターで、"東京での日本のナショナリストによるデモ。彼らは安倍首相とその保守的な政権を支持している"という文章を投稿した件だ。同時に投稿された写真には、ナチスのハーケンクロイツや旭日旗を掲げた極右デモの模様が写し取られていた。

 冨永格氏はすぐさまネトウヨから血祭りにあげられた。同日、東京・銀座では「安保法案を支持する国民大行進 in 銀座」なる安保法制推進デモが行われたのだが、「(ツイートした写真は)関係ないだろ」「レッテル貼りだ」「朝日は国賊」という批判が殺到したのだ。

 日経新聞の報道によれば、朝日新聞社が冨永氏に厳重注意し、お詫びを記すように指示したという。菅義偉官房長官は、4日の記者会見で「日本の主要メディアの責任ある人が、事実と異なる内容を英語によって発信することは、海外において日本に対するあらぬ誤解をまねきかねない。事実に基づいて発信することが大事だ」と述べている。

 ようするに官邸は、「朝日新聞編集委員のツイートはデマだ」と言っているのである。コメントの狙いは明らかだろう。戦争法案関係で支持率が急落するなか、安保法案に批判的な朝日新聞のいち編集委員による個人的なツイートを吊るし上げることで、潮目を変えようという目論見だ。

 産経新聞によれば、自民党は4日、朝日新聞東京本社に対して強く抗議するとともに、冨永氏のツイッターでの訂正と謝罪、朝日新聞ホームページでの英語と仏語による訂正と謝罪を掲載するよう申し入れたという。安倍御用メディアである産経は、この騒動を嬉々として取り上げて「左派による政権へのデマ攻撃」と位置付けようとしているというわけだ。

 しかし、今回の騒動で、冨永氏も朝日も謝罪する必要など一切なかった。なぜならば、冨永氏のツイートは、本当のことを述べたにすぎないからだ。

 ナチスの旗を振りかざし、外国人へのヘイトスピーチを繰り出すような極右ヘイト団体の関係者たちが、安保法制に賛成し、安倍首相を熱烈に応援していることは、デマどころか、疑う余地すらない事実だ。印象として言っているわけではない。現実として、8月2日の銀座・安保法制推進デモの主催は、件の写真にあるネオナチ団体と完全に同根だったからである。

 3日のTBS『NEWS 23』が、この安保法制推進デモの模様を放送した。デモ参加者らは、日の丸や日章旗、星条旗を振りながら約250名で行進。『NEWS 23』のカメラははっきりと、「朝鮮人半島に帰れ!」と叫ぶ参加者の姿や、「安保法制大賛成! ブタ左翼皆殺し」と書かれた紙を掲げる姿を映していた。

 そう、彼らの正体は、ヘイトスピーチを繰り返し、外国人や在日コリアンへの虐殺までも煽動する、いわゆる「行動する保守」と呼ばれる人々だ。彼らが運動の告知などに使用するウェブサイト「行動する保守カレンダー」によれば、デモの現場責任者は、あの元在特会会長・桜井誠氏。実際、桜井氏が安保法制推進デモの中心にいたことは、動画などで誰でも容易に確認できる。

 そして、件の朝日編集委員がツイートに用いた"鉤十字を掲げる極右デモ"も、在特会と深く関係を持っていることが判明している。本サイトによせられた複数の情報を検証し、また独自に取材したところ、写真のネオナチデモの主催は「外国人犯罪追放運動」なるNPO団体であり、昨年3月に東京・西葛西で行われた在留中国人追放を目的としたデモであったことがわかった。

 このNPO「外国人犯罪追放運動」の代表者は、有門大輔氏という極右活動家である。"日本のネオナチ"を自認し、長年運動を牽引してきた人物、瀬戸弘幸氏の弟子筋にあたる。今回の銀座・安保法制推進デモではハーケンクロイツこそはためいていなかったが、前出の桜井氏に加え、この有門氏と瀬戸氏が参加し、堂々とデモ行進を行っていたことを確認。この瀬戸氏、有門氏らネオナチ活動家と、桜井氏の在特会は、かねてから共闘関係にあることで知られている。つまり、今回の安保法制推進デモにたまたま参加したわけではなく、むしろ中心的役割を担ったとみるのが妥当だ。「行動する保守」の活動を取材したことのある者ならば自明のことだが、その構図は、東京・新大久保など在日コリアンや外国人らの虐殺を扇動するヘイトデモの構成とまったく同じである。

 ようするに、8月2日の銀座・安保法制推進デモの正体は、こうした「行動する保守」界隈が集結した、極右ヘイト運動であったのだ。

 いまさら言うまでもないが、在特会に象徴される「行動する保守」は、海外メディアから"国家主義的保守政権"と称される安倍政権、あるいはその政策を熱烈に支持してきた。いや、むしろ自民党下野時から安倍晋三首相再登板の間、自民党は彼ら「行動する保守」やネトウヨを積極的に政治活動に動員してきたのだ。安倍政権の屋台骨だといっても過言ではない。

 実際、安倍首相が寵愛する高市早苗総務相と稲田朋美政調会長は昨年、ネオナチ団体代表とのツーショット写真の存在が発覚。山谷えり子国家公安委員長も、過去に在特会の幹部であった男性と密な交流があった。そして安倍首相自身もまた、在特会元幹部と仲良くツーショット写真を撮っていたことなどが判明している。安倍政権がネトウヨ政権と言われるひとつの所以だ。

 よって、今回の朝日新聞編集員による「行動する保守」デモ参加者が安倍政権支持者であるとのツイートは、ただ事実を述べただけであり、なんら撤回・謝罪する類のものではない。むしろ、彼ら極右排外主義者らが「朝鮮人半島に帰れ!」「ブタ左翼皆殺し」などと触れ回りながら、首相肝いりの安保法案を支持していることにこそ、われわれは注目すべきなのである。

 本サイトでもお伝えしたとおり、安倍首相は先日、国会前で行われた極右市民団体「頑張れ日本!」主催の安保法制推進デモを見て、「こういうのは初めてだ」と感激の言葉を吐いた。これだけ「行動する保守」との関係を問題視されても、安倍政権の性根は変わっていないらしい。

 つまり今回、安保法制の必要性を謳う市民デモが、実のところ、外国人を排斥し殺意まで表明する連中により行われていた事実がはっきりしたことで、安倍政権の中身が、ネオナチ団体と変わらない、グロテスクな極右排外主義に染まっていることが、より鮮明になったわけである。にもかかわらず安倍政権は、この事実を素知らぬ顔でデマ認定し、安保法案に批判的な朝日への攻撃に利用する。

 安保法制が国民の支持を得られないからといって、批判的なマスコミに抗議して屈服させる。しかも、事実とは真反対のデマ攻撃を用いて──。これは民主主義国家の為政者のやることとは到底思えない。

 最後に、もう一つ事実を述べておこう。前述のとおり、8月2日の銀座・安保法制推進デモの参加者人数は約250名であった。一方、同日渋谷で行われた高校生による戦争法案反対デモの参加人数は、約5000人だ。"レベル"が違うのは数だけではない。推進デモのヘイターたちが叫ぶ「朝鮮人は半島に帰れ」と、反対デモの高校生らが訴える「戦争反対!」、どちらが人間としてまともか言うまでもないだろう。

"戦争のできる国"を目指す安倍政権、その広報メディアである右派新聞、そして極右ヘイト勢力とネトウヨ......彼らが根っこのところでつながっていて、今、一体となって戦争法案を推し進めようとしている事実を、私たちはきちんと認識すべきである。
(梶田陽介)