8月3日発売 『りぼん』9月号

>>【前編はこちら】少女漫画家は「自分の日記を他人に見せる仕事」 創刊60年の『りぼん』が世代を超えて愛される理由

創刊から長きにわたり、小中学生を夢中にさせてきた少女漫画雑誌『りぼん』。今年は60周年目にあたる記念すべき年ということで、『りぼん』が200万部以上発行されていた1980年代後半から1990年代半ば頃の、いわゆる全盛期を支えたアラサー世代にむけた企画も目白押しです。懐かしい“あの漫画”の誌面復活をはじめ、現在発売中の雑誌『BAILA』8月号には、『りぼん』作品のキャラクター付録がつけられるなど、かつての愛読者だった人たちにとっては見逃せない企画が展開されています。

後編では前編に続き、時代による小中学生の変化について、冨重実也編集長に伺いました。

ネットが身近になり、漫画家の質が変化

――8月号を拝読しましたが、ネイルの付録に一番驚きました。マニキュアやネイルシールなどは、すごく今っぽいなと。

『りぼん』8月号の付録

冨重実也編集長(以下、冨重):かつては、付録というとレターセットやシール等の紙製品が主流でしたが、2001年から雑誌協会のルールが変わって、紙やビニール以外の付録がつけられるようになったんです。今の『りぼん』では、大体年に1回ネイルの付録をつけています。

――それは時代的な背景が関係しているのでしょうか?

冨重:そうだと思います。ネイルが定番の付録になってから4年目なのですが、いまは小学生でも夏休みになるとネイルをするんですよね。さすがに学校にはしていけませんが、ネイルの人気が定着しているようです。たとえば、地方のスーパー銭湯とかに行くとネイルコーナーがあったりするんですけど、お母さんと一緒にネイルを試したりします。ちょっと前までだと、「マニキュアを塗っている=不良っぽい」みたいなイメージがあったと思いますが、最近はおしゃれのひとつとして、小学生でも当たり前のようにネイルをする時代なのだなと感じています。もちろん、『りぼん』は小学生向けの雑誌なので、水で落とせるネイルにするなど工夫をしています。

――漫画そのものについてもスマホやネットの登場によって、変化しているということはあるのでしょうか?

冨重:変化してますね。それはスマホ登場以前からいえることなのですが、ネットが小学生世代にも行きわたり、ブログも気軽にできるようになってから、あきらかに漫画家の質も変わってきました。たとえば、何かを書きたいと思ってブログに載せたら、すぐ反響があるじゃないですか。いまや、リアルタイムの感情もツイッターですぐに発信できる。自分の“何か”を発信したい、“誰か”に読んでもらいたい、伝えたいというエネルギーが、わりと簡単に発散される時代になってきていますよね。そうなると、漫画雑誌というメディアで何かを表現したいという子たちも、20年前に比べると少なくなってきているのかもしれません。

小学校高学年では、周りの男の子が幼稚に感じる女の子も

――最近の小学生は、精神的にかなり成熟しているという印象を持っている人も多いと思います。冨重さんは『りぼん』に携わられて17年とのことですが、その点はどのように感じられますか?

冨重:僕は、あまり変わってないと思いますけどね。変わってないというか、正確にいうと、時代を問わず小学生の女の子たちは精神的に大人だと思っています。その点、男の子は子どもですよね(笑)。いま妖怪ウォッチが流行っていますけど、女の子にどう思うか聞くと「あんなの幼稚園だよ」と言われたりします。女の子は同じ時期に恋愛漫画を読んで胸をトキめかせていることを考えると、小学校4年生から6年生あたりには、ほとんど大人の感覚に近くなっていると言ってもいいのではないでしょうか。恋愛に興味を持ち始める時期は、周りの男の子が幼稚過ぎることもあり、現実世界で感じている物足りなさを少女漫画で満たしているんだと思います。

新鮮さを保つために年に1回デザインを一新

――今後『りぼん』を作っていくうえで、どんなことを大切にしていきたいですか?

冨重:僕は、雑誌作りというのは、読者とのキャッチボールだと思っています。「読者が欲しいと思うもの」「こっちが投げたいと思うもの」、このふたつをこれからも上手く合わせていきたいですね。

それから、『りぼん』というのは「購読期間が平均3年」という方が多く、ある意味では特殊な雑誌です。そのため、今のやり方が古くなるまでのサイクルも早い。ですから、結構細かいことなんですけど、目次とか、漫画の最後にある「おわり」のデザインも、年に1回、1月号で全部変えて新しくしているんです。このような、ちょっとしたこだわりも続けていきたいと思っています。

(末吉陽子)