暑さによって汗が出るのは生理現象だが、その量があまりに多い場合は病気の可能性がある。汗が真っ先に噴き出るのは顔で、“顔汗”という。これは特別なことではないが、何もしていないのに常に汗が滲み出たり、緊張した際に異常なほど汗が滴り落ちる場合は、何らかの病気が潜んでいるとも言われるのだ。
 総合医療クリニックを営む医学博士・久富茂樹院長が説明する。
 「発汗には、暑い日などに上がり過ぎた体温を下げるために起こる『温熱性発汗』と、緊張・興奮した時に起きる『精神性発汗』、刺激の強いものを食べた時に起きる『味覚性発汗』があります。こういった生理現象の範囲を超えて大量に汗が出てしまう病気を『多汗症』と呼び、中でも顔だけに症状が現れるものを『顔面多汗症』と言います。この病気の原因はまだはっきりしていませんが、発汗を促す交感神経が過敏になっていることが関係していると考えられ、遺伝的な体質によっても起こるケースがあるとも言われます」

 製薬会社『ユースキン』の調査によると、夏の汗による肌トラブルを抱えている人は4割で、男性は首回りや背中、お腹周りなどにトラブルを抱えている人が多かったという。
 ワンピースやノースリーブ、生足にサンダルといった風を通す服装をしやすい女性に対し、男性は夏でもネクタイを締め、スーツを着用しなければならない人が多い。そのため汗をかきやすく、トラブルにも見舞われやすい。
 「汗による痒みを訴える患者さんの多くは、『あせも』と自己判断していますが、実際に診察してみると、汗による肌荒れ、いわゆる『汗荒れ』を起こしていることが多いですね。適切な対策を取らず、痒みの患部を掻き過ぎ、ひどい状態になってから来院される方が少なくありません」(同)

 『あせも』は、急激な発汗で汗管が閉塞し、汗が詰まって水泡ができた状態を言う。急な発汗を避けることが対策とされるが、掻かずにおけば数日で自然治癒する。一方で、『汗荒れ』は肌の乾燥や間違ったスキンケアが原因とされ、その原因を取り除かなければ、何度も症状を繰り返して重症化する。
 「正常な皮膚はバリアー機能があるので、汗をかいても、その成分は皮膚の表面上に留まり、時間が経つと蒸発します。ところが、乾燥や間違ったケアで角質細胞が傷み隙間が出来ると、汗に含まれるアンモニアや塩分などの成分が体内に入り込んでしまう。それが刺激の元となり、肌荒れ、チクチクした痛み、ピリピリする痒みが生じるのです」(皮膚科医)

 当然、専門医は「いくら痒くても掻きむしるのは絶対にNG」と警鐘を鳴らす。理由は、「イッチ・スクラッチサイクル」と呼ばれ、掻くことで皮膚の表皮細胞が傷つき、痒みの元凶を生み出すことにある。引っ掻くことで表皮細胞が傷つき、それを修復させるための『サイトカイン』が放出されるため、皮膚炎がさらに悪化し、痒みが増す。
 さらにその『サイトカイン』によって、痒みを増幅する仕組みである軸策反射も起きてしまい、痒みのスパイラルが生じてしまう。
 覚えておきたいのは、汗が引き起こす『汗荒れ』は、意外な病気にもつながっているということだ。