残り2試合で即席チームに求められる“守・破・離”の“破”

写真拡大

文=青山知雄

「監督の求めるサッカー、自分たちがやりたいサッカーだけじゃ勝てない。この大会の厳しさが昨日の試合で分かった」

 衝撃の敗戦から一夜明け、中盤のダイナモとして試合終了まで走り回って奮闘した山口蛍(セレッソ大阪)が、率直な気持ちをこう漏らした。

 監督が目指すサッカーをしているだけでは勝てない――。山口がポツリとつぶやいたこの一言には、思った以上の重みがあるように感じる。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がタイトル獲得と新戦力発掘を目標に設定したEAFF東アジアカップ2015。日本代表は対戦相手の中で最も力が劣ると見られる朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表との初戦で1−2と逆転負けを喫した。

 指揮官は7月23日のメンバー発表会見時から過密日程やトレーニング環境の悪さに言及。「一週間ほど時間があれば。候補選手50人のうち11人がけがをしてしまった。現地でトレーニングができない、グラウンドが悪いという言い訳はしたくない。試合前に言い訳はしますが、試合後には言いません」としていたものの、初戦で敗れると恨み節のように「3日前に到着して、1回しかトレーニングができなかった。今回はフィジカル的な問題と、その(日程的な)問題が決定的な違いを生んでしまったと思う。責任のある方々は今日の試合で何が起こったのかを見てほしい。疑問を投げかけたい。真実を見なければならない。これが日本のフットボールの現状だ」と繰り返した。

 もちろん日程面やコンディション調整、準備不足だった部分は否めない。そういった部分に改善すべき点があるのも承知の上だ。しかし、それは事前に分かっていたこと。諸事情を踏まえた上で、指揮官として何をすべきか、そして選手やチームに何を求めていくかを見たい大会でもある。

 6月16日に行われたロシア・ワールドカップ アジア2次予選のシンガポール戦後、「ハリルホジッチが陥った二つの“罠”…チーム作りの段階はまだ“守・破・離”の“守”」というコラムを書いた。指揮官の求めるものに応えようとするあまり、選手たちがピッチ内で臨機応変に対応できていないこと。そしてハリルホジッチ監督自身がアジアで戦う難しさを知らなかったことをシンガポール戦で苦戦した理由に挙げた原稿だ。

 霜田正浩技術委員長は北朝鮮に敗れた翌日の練習後、「これまでアジアとの戦いで日本がずっと経験してきたものなので、同じ過ちを繰り返さないようにすることが重要だと思います。ただ、口で言うのは簡単ですけど、それでもやられてしまった。監督が早い段階でそういう経験をしてくれたのはプラス。理由はいろいろありますけど、それはちゃんと分かっています」と話している。だが、結論から言うと、北朝鮮代表との初戦も全くと言っていいほどシンガポール戦と似通った状況に陥り、ハリルホジッチ監督も初めての黒星を喫してしまったわけだ。

 海外組を含めたフルメンバーで戦ったシンガポール戦は圧倒的に攻めながら引いて守る相手を崩せずに決定力を欠いてのドロー、国内組で臨んだ北朝鮮戦はフィジカルを生かしたパワープレーに押し込まれての敗戦と、試合展開もメンバーも違うが、ピッチ内で起こっていたことには共通点があった。

 今回の北朝鮮戦は指揮官が話すとおり準備期間が短く、代表経験の少ない選手が中心だったため、戦術理解に時間が足りないのは必然のこと。ミーティングや試合前日のトレーニングで「縦へ速く」という従来のコンセプトを伝え、選手たちにはフィジカルとメンタルで負けないことを強調したのは理解できる。実際、キックオフからの数分間は積極的に前からプレスを仕掛け、わずか開始3分で武藤雄樹(浦和レッズ)が先制する幸先の良い展開となった。だが、その後のチャンスを生かせずにいると、縦へ攻め疲れたことで体力が落ちたところを北朝鮮にパワープレーで押し込まれ、残り15分を切ったところから立て続けに2ゴールを許してしまった。