新顔が多い今回のチームに、「わずか1回の練習」(ハリルホジッチ監督)で結果を求めるのは、あまりに酷だろう。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 率直に言えば、「またか」という負けだった。これまでアジアの戦いで何度となく見てきた”負けパターン”が繰り返されたからだ。

【マッチレポート】日本 1-2 北朝鮮

 
 立ち上がりは試合を優勢に進められるが、ガソリンが切れると途端にプレスを掛けられなくなり、単純にロングボールを放り込まれて失点してしまう。これは、アジアの戦いで何度となく露呈してきた日本の弱点だ。
 
 エクスキューズは、いくつかあった。「3日前に中国に着いて、1回のトレーニングしかしていない」(ハリルホジッチ監督)という準備不足。新戦力の多さからくるコンビネーション不足。Jリーグの戦いを含む連戦による疲労の蓄積――。とりわけ、最初に挙げた準備不足は、日本に致命的なダメージを与えていた。
 
 日本代表が中国に渡ったのが、7月30日。翌31日はリカバリーのみで、本格的に身体を動かしたのは、8月1日のトレーニングだけだった。しかも、戦術を確認する紅白戦は、たったの20分である。これで戦う態勢を整えろというのは土台無理な話だ。
 
 案の定、コンビネーションがままならないチームは、ボールの奪いどころが定まらなかった。さらに運動量が落ちて徐々に主導権を譲り渡すと、最後は単調なロングボールに対応できずに逆転を許したのだ。
 
 東アジアカップの連覇を本気で狙うなら、Jリーグから中3日で初戦を迎える強行日程を組むべきではなかったのではないだろうか。ハリルホジッチ監督も「少し準備期間が欲しかった。日本のフットボールが疑問を抱かなければいけないと思う」と漏らしたように、北朝鮮戦の敗因の一旦は、協会強化部にあると言っていいだろう。
 とはいえ、ピッチ上のパフォーマンスにも課題は山積みだ。CBコンビは北朝鮮の長身FWに簡単に競り負け、攻撃陣は前半にいくつかの決定機を迎えながら、立ち上がりの武藤の1点のみ。中盤は2ボランチがセカンドボールを拾えずに、特に後半に波状攻撃を受けた。
 
 とりわけ、気になったのが、ボランチのポジショニングだ。精力的にプレスをかけ、時折前線にも顔を出していた山口はまだしも、相方を務めた谷口のプレーはまるで精彩を欠いていた。アンカー然としたポジションを取りながら、バイタルエリアに進入してくる相手を捕まえていたわけでもなく、多くの場面で最終ラインに吸収されて中盤での数的不利を招いていたのだ。
 
 谷口がもう少し高めにポジショニングして前線のプレスに連動できれば、あれほど簡単にパスをつながれることはなかっただろう。高さを買われてロングボール対策で起用されていたとしても、状況を見て判断するのはピッチ上の選手の仕事だ。谷口を前に押し出せなかった最終ラインも含めて、あまりに判断力に欠けたと言わざるを得ない。
 
 チームの守備について言えば、運動量が落ちた後半の対応に大いに不満が残った。「後半ももっと行ける自信はあったけど、周りとの兼ね合いもあったし、なかなかひとりで全部行くわけにはいかないんで、難しいところはありました」と語る山口のようにギアを上げられる選手もいれば、「何人かの選手は動けない状態だった」(ハリルホジッチ監督)と運動量が激減する選手もいる。暑さやJリーグの連戦で選手のコンディションがまばらななかでは、いつも以上に意思統一が重要だが、北朝鮮戦の後半はまったくといっていいほど守備組織が形を成していなかった。
 
 ロングボールを蹴らせるならば、CBコンビのチャレンジ&カバーの関係をハッキリさせる必要がある。一方で蹴らせないほうへ舵を切るなら、パスの出所を抑える前線からのプレスは不可欠だ。いずれにせよ、どちらの方法を定めなければ、続く韓国戦や中国戦でも同じ過ちを繰り返すだろう。
 攻撃陣に目を向ければ、3分の武藤のゴールで勢いに乗った前半は、チームとして機能していた。トップ下の武藤が広範囲に動いてウイングをサポートし、タメを作ってボランチやSBの攻撃参加を促す。

 23分には山口からの縦パスに永井と武藤が絡み、最後は川又がフィニッシュ。43分にも左サイドでの武藤のキープから宇佐美につなぎ、永井の決定機につなげている。いずれも決定的なチャンスで、この2点が決まっていれば「試合はその時点で終わらせられた」(西川)かもしれない。要は形を作りながら、「決めるべきところで決められなかった」(山口)のだ。
 
 スタミナが切れた後半の内容は論外だが、少なくとも体力がある前半にいわゆる“サブ組”でも決定機を作れたのは、数少ない好材料かもしれない。なかでも、不慣れなトップ下を任されながら、1ゴールと結果を出した武藤はアピールに成功したと言えそうだ。
 
 この浦和のアタッカーは、左ウイングに移った後半にも、縦へのドリブル突破からクロスを供給するなど打開力を見せている。こうしたプレーの幅を考えれば、いまひとつ力を発揮できなかった永井を序列で上回ったとの見方もできるだろう。
 
 アピールで言えば、右SBでフル出場した遠藤にも触れなければならない。今回のチーム最年少DFは、A代表デビューという緊張の舞台にも動じなかった。
 
 武藤の先制点をアシストしたクロスだけでなく、本職の守備面でも局面での1対1に粘り強く対応し、ミスと言えるミスは皆無。本人も「最低限、1対1で負けないところだったり、クロスを上げさせないところは意識していたので、そういうところはできたと思います」と手応えを得たようだ。また、「攻撃参加はまだ物足りないかな」と次のテーマも見据えており、代表定着へ向けた好スタートを切った印象だ。
 
 ハリルホジッチ体制の初陣から名を連ねる川又や永井、森重といった面々のパフォーマンスは軒並み及第点に届かなかったが、一方で初招集の武藤や遠藤が戦力として台頭したのは明るい材料だ。欧州組不在で挑んだ今大会の本質である“サバイバル”を活性化する意味で、今は彼らの活躍をポジティブに受け止めたい。
 
取材・文:五十嵐創(サッカーダイジェスト編集部)