またも米ツアー初優勝に届かなかった石川 次こそは(Photo by Patrick SmithGetty Images)

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 石川遼が初日からホールインワンを達成したり、6連続バーディーを奪ったりで首位へ躍り出たクイッケンローンズ・ナショナル。日本のファンや関係者の間では「今度こそ」という期待が膨らんでいた。

 しかし、「今度こそ」という想いは誰の胸の中にもあるわけで、3日目も最終日もスコアを伸ばせなかった石川と入れ替わり、首位に立った米国人のトロイ・メリットも、そんな想いを抱き続けてきた選手の一人だ。そして彼は、キャリア96試合目にして、ついにその想いを遂げ、初優勝を挙げた。
 29歳のメリットは来週のブリヂストン招待にも再来週の全米プロにも、来年のマスターズにもさまざまなビッグ大会にも、すべて出られることになった。勝った途端、すぐ翌週からのスケジュールが一変し、数時間前までの現在と数時間後の未来が大きく変わるわけだから、勝つか負けるかは天と地ほどの差をもたらす。その大きな変化は、どんな苦境に陥ったときも諦めずに挑み続けてきた人だけがつかみ取ることができるボーナスだ。
 アイオワ出身、2008年プロ転向。2009年に下部ツアーで1勝を挙げ、その秋、Qスクール最終ステージで5日間、首位を守り通した上でトップ通過し、米ツアー出場権を得た。
 ルーキーイヤーの2010年はぎりぎり125位でシード権を死守したが、2011年はシード落ちし、その後2年間は下部ツアーで腕を磨き直した。そして2013年はウェブドットコムツアー74位というぎりぎりの位置(75位までが出場資格)からファイナル4戦に挑み、再び米ツアーへ戻ってきたターミネーターのような男だ。
 2014年は101位でシードを守ったが、今季は6月から5連続予選落ちを喫した挙句に今大会へ挑み、フェデックスカップランキング123位でシード権が危うい位置だった。だが、この優勝で一気に38位へジャンプアップ。向こう2年間のシード権も安泰。文字通り、ぎりぎりの瀬戸際で自身の未来を開いた。
 メリットのそんな「ぎりぎり感」は、現在の石川と似たものだったはず。だが、メリットは初優勝を遂げ、石川は10位どまり。2人の決定的な違いは、どこで爆発力を発揮できたかであろう。
 石川は初日に「63」と爆発し、予選2日間は好調だったが、決勝2日間はスコアが軒並み伸びる状況下でイーブンパーに留まり、それは「先細り」に近い状況だった。逆にメリットは予選2日間をそこそこで回って35位につけ、3日目に「61」の大爆発で首位へ浮上。最終日も4つスコアを伸ばし、予選から決勝へと「末広がり」に成績を上げて勝利をつかんだ。
 もちろん、それは結果論ではある。だが、ゴルフは「サンデー・バック9が勝負」「上がり3ホールが勝負」と言われるように、「末広がり」は作り出すもの。結果は「出る」ものではなく「出す」ものだ。そして、最後の最後にチャンスをモノにできるかどうか。その心意気を自分のゴルフに反映させることができるかどうか。それが、強い選手になれるかどうかの分かれ目だ。
 最終日のメリットの上がり3ホールは圧巻だった。リッキー・ファウラーの猛追の気配を感じつつ迎えた16番パー3。ピン80センチに付けてバーディを奪ったプレーは見事だった。グリーンカラーからウェッジで20センチへ寄せた17番の第3打は素晴らしかった。そして72ホール目。10メートルのバーディパットをカップの真ん中から沈め、ガッツポーズ。「今週こそは、ウイークエンドにスイングからパットまで、すべてが噛み合い、結果を出せた」。
 そうやって一度実現した見事な「勝ち方」は、心身の奥底まで染み込んでいく。だからこそ、勝利を挙げた選手は、その直後から一層強くなっていく。
 残念ながら石川は今回もそうはならなかった。だが、上位から最下位近くまで転落していた今季数試合のパターンとは異なり、今週はスコアを伸ばせずとも崩れず、トップ10に留まった。それは大きな前進だ。フェデックスカップランキングは140位から125位へ大きく上昇。この数字の上での前進には言うまでもなく大きな意義がある。
 願わくば「今度こそ」石川の番が訪れてほしい。いや、自分の番をつかんでほしい。今季、そのチャンスは残りわずかだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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