『「灘→東大理3」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(KADOKAWA/角川書店/佐藤亮子著)

写真拡大

 子育てや子供の教育について悩む親も多い中、2014年12月に出版された『「灘→東大理3【編註:正式名称はギリシャ文字、以下同】」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』(KADOKAWA/角川書店)が話題を呼んでいる。

 著者の佐藤亮子氏は、専業主婦でありながら3人の兄弟を超難関とされる灘中学校・高等学校から東京大学理科3類に進学させ、そのメソッドに注目が集まっている。

 今回は、その佐藤氏に

・独自の勉強法
・親の立ち位置や支援法
・教育費の使い方

などについて聞いた。

●90%ではダメ、何事も100%にこだわる

--灘中学校・高校や東京大学などの超難関校は、1人でも合格させるのは難しいと思いますが、やはり苦労は多かったのでしょうか?

佐藤亮子氏(以下、佐藤) 上の子供2人はすんなりと合格したのですが、三男が大変でした。小学校6年生の8月に学習塾の浜学園が主催する「灘中オープン」という大事な模擬試験の算数で、100点満点中9点を取ってしまったのです。家に帰ってからもう一度問題を解かせると、スラスラと解答していきます。そこで初めて、三男がプレッシャーに押しつぶされそうになっていることに気づきました。当時は、2人の兄がすでに灘中に通っていて、周りの友達も「あの子は灘中に行く」と思っていましたから、プレッシャーを感じて当然でしょう。

 そこで私は、精神面を鍛えるために過去19年分の灘中の過去問題を4回繰り返させて、実際の入試問題に慣れさせました。三日三晩考えても、これ以外の方法が思いつかなかったのです(笑)。そこから、入試本番までの4カ月はお互い覚悟を決めて、ひたすら過去問をやり続けました。そのかいがあり、なんとか合格することができて、今は「あの時は大変だったけど、よかったね」と話しています。

--まさに、親子二人三脚だったわけですね。3人のお子さんは体育系クラブに所属するなど青春を謳歌し、いわゆるガリ勉タイプではなかったそうですが、本書に書かれている「佐藤式勉強法」の中で最も大事なことはなんでしょうか?

佐藤 子供には普通に部活もやらせていて、年中「受験、受験」と言っていたわけではありません。こだわっていたのは、何事も100%を目指すということでしょうか。意外と、みなさん90%ぐらいで納得してしまうもので、例えば、漢字の「とめ」「はね」「はらい」をきちんと教えないこともあるようです。私は100%を目指すと決めていたので、子供が小学校で習う漢字1006字をすべて見て、少しでも書き方が間違っていたら習字で練習させました。そういう部分で、妥協を許さないことが大事だと思います。

 100%を目指さないとサボり癖がついてしまい、いざという時に間違ってしまいます。そうならないために、字の書き方にせよ、なんにせよ、とにかく完璧にするのが佐藤式です。また、勉強部屋を与えないのも大きな特徴だと思います。

--勉強部屋があったほうが子供は勉強に集中できそうですが、与えないことでどういった効果があるのでしょうか?

佐藤 勉強部屋が2階にあったとして、家族が1階で楽しくしているのに1人だけ2階に上がって勉強する、というのは無理だと考えたのです。今は、小学1年生になったらすぐに勉強部屋を与える親も多いですが、佐藤式勉強法では勉強部屋を与えません! これは大事です。「勉強は孤独じゃないとできない」という人もいますが、本当に孤独な環境では勉強などできないと考えています。

●未熟な子どもを律するのは、親の役目

--子供を難関校に合格させる上では、教育費の使い方なども大きなポイントになってくると思います。「この費用だけは、惜しまずに使ってほしい」というものはありますか?

佐藤 とにかく、本はたくさん買ってあげてください。小さい時にしか読まない絵本などは、図書館で借りればいいと思うかもしれませんが、手元にあるのとないのとでは愛着が違います。また、受験をするなら参考書代は年間2万円分ぐらいは出してあげてください。効率を重視するなら、やはり参考書は必須です。それも、毎年の最新版を買うことです。参考書は年々進化して、わかりやすくなっています。それらの費用は、浪人することを考えたら安いものなので、出すべき時にしっかり出してあげてほしいと思います。

--本書の中で「テレビやおやつは非日常」と書かれていました。しかし、今は子供が小さい頃からスマートフォンやゲームを与えてしまう親も少なくなく、子供にとってはそれが日常的になっているケースも多いです。

佐藤 大学に入るまでの時間は18年間しかないわけですから、その貴重な時間をスマホやゲームに充ててしまうのは非常にもったいないと思います。実は3人の子供を大学に入れた後、少し暇になったので、周りが夢中になっていたスマホゲーム『キャンディークラッシュ』(キング・デジタル・エンターテインメント)をやってみたのですが、なんと10カ月くらいやり続けるほど、ハマってしまいました(笑)。今までほとんどゲームをやったことがない私でさえハマるのですから、子供たちは、ますますのめり込んでしまうでしょう。そのため、受験を控えた子供に対しては、親がそのあたりを律してあげないといけません。心を鬼にして遊び道具を取り上げることも、また愛情です。

●18歳までは、できる限り子供に関わる

--今は共働きの家庭も多く、子供と接する時間があまりつくれないという人も少なくないと思います。少ない時間の中でも「最低限、これだけはしてあげてほしい」ということはなんでしょうか?

佐藤 まだ子供が小さいのであれば、お父さんとお母さんで交代しながら毎日1冊でも絵本を読んであげることです。大事なのは毎日というところで、毎日読んであげることで習慣になるので、子供は自然と覚えられ、その習慣が1日の楽しみにもなります。小学校低学年の場合は、毎日20分だけでもいいので勉強を見てあげてください。子供は、親と一緒に勉強したところはきちんと覚えるものです。

 塾に行き始めたら、塾の宿題や課題の正解・不正解をチェックする“丸つけ”は親がやったほうがいいでしょう。自分でやらせると、得てして悪魔が忍び寄ってしまうものです。例えば、正解は「6」なのに「0」と解答してしまっていた場合、本当は間違っているのに、書き足して「6」にしてしまったり……。間違いをきちんと正すためにも、丸つけは親がやってあげるべきです。

 中高生になったら、お弁当をつくってあげるのがいいと思います。むしろ、中高生になると、それくらいしかできることはありません。毎朝の弁当づくりは大変だと思いますが、そこは子供のためと思って、早起きしてつくってあげてほしいです。

--最後に、受験を控えた子供を持つ親に向けて伝えたいことがあれば、お願いします。

佐藤 中学受験をする子供がいる場合は、できる限りお手伝いをしてあげてほしいと思います。「もしかして、過保護なのではないか」なんて、考える必要はありません。過保護の「過」は、家族以外の誰かが勝手に決めつけるものにすぎないし、各家庭で感覚は違います。周りに惑わされず、目の前の子供の学力だけを見て、「どうすれば、よりよくなるのか」を考えてあげてください。

 子供が大学受験を控えていたら、受ける大学を具体的に決めて、一緒に受験までのビジョンを立ててあげてください。大学に入ったら親の元から離れてしまうケースも多いですから、お互いが納得のいくまで膝を突き合わせて語り合ってほしいと思います。
(構成=日下部貴士、昌谷大介/A4studio)