サッカーは主観のスポーツだ。

 バルセロナのサッカーにスペクタクルを感じる人がいれば、メッシに寄りかかった試合運びに魅力を感じない人もいる(と、思う)。僕自身は後者だが、どちらも否定はしない。サッカーは娯楽なのだから、どんな見かたも許容されるべきだ。

 対戦相手に嫌がられるストライカーとは、どんな選手だろう。これもまた主観だが、ディフェンダーだった自分の体験に照らしてみる。

 マッチアップする選手にシュートを打たれるのは、守備者として嫌だった。明らかに無謀な距離からのシュートでも、見過ごすわけにはいかない。何本もシュートを打っていくうちに、精度が上がっていく選手もいる。ちょっと的外れの一撃でも、コースが変わって入ることもある。
 
 大きくワクを外れたシュートでも、ゴールキックから再開となれば守備側から速攻の機会を奪うことになる。消耗の激しいゲームなら、味方選手にささやかな休養を与えることにもある。
 
 シュートを打つことのデメリットは、そう考えるとほとんどないと言っていい。強引に放ったシュートが守備側の確信的なブロックに遭い、そこから攻守が入れ替わったりすれば、シュートを打った判断はミスと見なされるが。
 
 J1リーグの得点ランキングを見る。ここまで16ゴールをあげている宇佐美貴史は、23試合に出場して77本のシュートを放っている。1試合平均3・34本だ。
 
 宇佐美の次にシュートが多いのは、柏レイソルのクリスティアーノである。22試合出場で70本は、1試合平均3・18本だ。7ゴールは得点ランキング11位タイだが、僕の主観に当てはめると「嫌な」ストライカーだ。
 
 3位の選手はDF泣かせだ。大久保嘉人である。21試合出場で66本は、1試合平均のシュート数でクリスティアーノに近い。中長距離からのシュートにためらいがなく、ペナルティエリア内に猛然と飛び込んでくるこの33歳は、DFからするとどうにも厄介である。
 
 シュート数の4位以下には、外国人選手の名前が並ぶ。パトリック(ガンバ大阪)、ディエゴ(山形)、レナト(前川崎F)、アデミウソン(横浜FM)、ドウグラス(広島)オビナ(松本山雅FC)、ピーター・ウタカ(清水)らだ。
  
 ならば、相手にとって嫌なストライカーを定義するうえで、シュート数の多さは絶対条件になるのか。

 そうでは、ない。

 得点ランキング5位タイの佐藤寿人は、22試合出場で総シュート数が25本である。フル出場したゲームが1試合もないことも関係しているが、彼はワンタッチゴールのスペシャリストだ。一度の決定機を生かすために、相手GKと、DFと、主審と、副審と駆け引きをしている。シュートを何本も打たれなくても、守備側からすれば目を離すことができない。要注意人物だ。
 
 得点ランキング2位タイの豊田陽平も、1試合平均のシュート数は2・25本である。PKを除く11ゴールに費やしたシュート数の1試合平均は、もう少し減って2・1本だ。
 
 それでも、ゴール前での存在感は強烈だ。佐藤と同じように彼も、ワンチャンスにすべてを注ぐ。第1ステージ12節の名古屋戦で90+4分、同17節の広島戦で90+6分にネットを揺らしたように、終盤の得点やチームを敗戦から救う一発も少なくない。これもまた、ストライカーに求められる要素だ。いわゆる「勝負強さ」である。

 2年前の東アジアカップで、柿谷曜一朗がセンセーショナルなデビューを飾った。ザックの評価を決定的にしたのは、韓国戦の決勝弾だったに違いない。1対1で迎えた90+1分のゴールは、この男の勝負強さを強烈に印象づけた。シュート数だけでは割り切れないストライカーの価値を見せつけた。
 
 来る東アジアカップで、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「点を取れる選手を見つけたい」と話している。

 気持ちは分かる。

 彼が再建を託されたチームに、人材不足のポジションはない。どのポジションにも、ひとまず2人以上の候補者がいる。そのなかでも、FWのカードは多いほうがいい。国内組だけでチームが編成された大会で、国際舞台で通用するFWを探したい気持ちは良く分かる。

 気になるのは評価基準だ。

 東アジアカップ後のターゲットは、W杯アジア予選に絞られる。守備的な相手をいかに崩すのかが、全試合共通のテーマだ。

 攻撃のパターンを自分たちで狭めないためにも、タイプの異なるストライカーを揃えておきたい。日本人的なサッカー観、つまり我々の主観に問わられることなく、相対的な視点から選手を見極めていくべきだと思うのだ。