景気が良くなって株が上がると思いがちだが、実はそうでないこともある。経済学者で投資家の小幡績氏が、株が上がる背景について解説する。

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 株価とは企業の価値なので、企業が儲かれば株価が上がります。たとえば企業が海外投資に成功すれば、その企業の株価は上がりますが、日本国内の景気には関係ありません。また、国内で失業者が増え、皆が職を求めて「賃金が安くても一生懸命働く」と考えている場合、景気は悪いですが、企業は輸出などで儲けられるので株価は上がります。

 国内の景気が良く、国内の売り上げが伸びて儲かる場合、景気と株価は連動します。しかし、単に海外への投資が儲かった場合などには、景気と関係なく株価は上がります。

 興味深い例を紹介しましょう。実は最近の米国では、「景気が悪くなった方が株価が上がる」という現象があります。米国ではFED(※)という中央銀行が、金利を引き上げるかどうかの議論をしています。一般的に、金利を下げるのは景気が悪い時の刺激策で、企業がお金を借りやすくなります。米国では「景気は回復したので、金利を上げよう」という議論があるわけです。

【※FED/連邦準備制度の略。連邦準備制度理事会(FRB)が全米主要都市にある連邦準備銀行を統括する制度】

 ところが、金利が低い方が、銀行預金や国債などの金融商品よりも株のほうが資産として有利になり、株価が上がるのです。

 景気が悪ければ中央銀行は金利を上げられない。そのため、景気が悪いという経済指標が発表されると株価は上がるのです。単に投資家の都合で株価が動いているので、景気と関係なく、むしろ景気が悪くなると株が上がるという逆転現象まで起きてしまいます。「株価が上がっているから景気がいい」という“常識”も「株価が上がったからアベノミクスは成功している」という主張も、必ずしも正しいとはいえないのです。

●小幡績(おばた・せき)1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。

※週刊ポスト2015年8月7日号